【村上春樹のベストセラーを舞台化した衝撃作が大阪初上演!】主演の渡辺大知、コンテンポラリーダンスを1年かけて習得!

インタビュー
 村上春樹の傑作長編『ねじまき島クロニクル』をイスラエルの奇才インバル・ピントとアミール・クリガーが演出し、藤田貴大が脚本を、大友良英が音楽を担当する舞台『ねじまき島クロニクル』が梅田芸術劇場にて12月1日(金)〜12月3日(日)まで上演される。
本作は2020年2月に世界で初めて舞台化されたが、公演期間が短縮され、大阪公演は中止となった伝説の舞台。芝居、コンテンポラリーダンス、音楽が融合したジャンルの垣根を超えた新たな芸術作品となっている。
 初演から引き続き、主人公の岡田トオルを成河と二人で演じる渡辺大知が取材会に出席。今週からお稽古が始まったというが、どのような舞台が期待されるのだろうか。作品に対する思いを沢山語ってもらいました。

言葉にできない感情をダンスで表現

── 改めて本作の魅力を教えてください。
渡辺
ダンス、歌、芝居がミックスされた舞台で、大友良英さんの生演奏に合わせてストーリーが展開されます。演出のインバル・ピントさんは普段ダンスの振り付けを沢山されているため、舞台とはいえ、半分はダンス公演のような形。今回も8人のコンテンポラリーダンサーが魅せてくれるのですが、僕もダンサーさんと絡む形でダンスを披露します。僕はダンスが未経験だったため、初演が始まる1年前からコンテンポラリーダンスを習いました。そもそもなぜ踊りが存在しているのか、なぜ人は踊るのか、ということを、いろんな方から教えてもらいながら、0→1の作業を皆で創り上げました。 
──コンテンポラリーダンスを1年間練習されたとのことですが、それよって得られたことは?
 
渡辺
まず、踊ることの意義について考えましたし、ダンスの表現の奥深さを知りました。辿りついた答えは、“言語では補えない表現ができる”ということ。例えば、嫌いという気持ちも身体だと距離を取ったりして表現できるし、言葉無くしても伝えることができる。今作でも妻との心の距離や、言葉の裏にある気持ちなどをダンスによって表現しています。 

原作の持つ力を大切に。

──村上春樹さんの作品についてどんな印象がありますか?
渡辺
初演が決まるまでは一作しか読んだことがなかったのですが、この舞台をしてから村上春樹さんの世界にどっぷりとハマってしまい、最新作以外の全ての作品を網羅したほど大好きです。その中でも『ねじまき島クロニクル』は格別ですね。 
──世界的にも人気を博す原作が舞台化とのことで、どんな部分を大切にされていますか?
渡辺
村上さんの小説は、一本の太い糸があって、解くと無数の糸が複雑に絡まって作られているように思います。なので、軸を大事にしていけばとっ散らかることはないと思っていて。今回の舞台もこの作品のどこに主軸があるかを皆で話し合い、大事なシーン、台詞を取捨選択しながら作っています。一見大したことのない台詞も敢えて残したりしています。 
渡辺
また、舞台では主人公・岡田トオルが二人います。Wキャストではなく、一人の人間を二人の役者が演じるという斬新さ、インバル・ピントさんはアイディアマンだなと感嘆しました。僕は岡田トオルの外面を演じ、成河さんはトオルの内面を演じます。原作ファンの方もこれならできるんじゃないか、と思ってもらえるのではないでしょうか。 

一人の人間を二人で演じるという斬新な手法にも注目!

──トオルはどんな人だと思いますか?
渡辺
トオルの外面を担当する自分は、空虚さを大切にしています。彼なりに考えて熱い思いは持っているものの、大事な芯の部分が空っぽ。その部分を埋めたいけれど、何を埋めたらいいのか分からない。その中でいろんな人との出会いによって、空洞を埋めようと、もがいています。演出家の方に言われた印象的な言葉は、”岡田トオルは良い聞き手″、つまりいろんな人が彼に話したくなるんです。ただその一方で、良い話し手ではない。アウトプットがうまく出来ないから、もがいているんだと思います。 
── そんなトオルを渡辺さんは身近に感じますか?あるいはチャレンジングな役どころですか?
 
渡辺
僕の理想としては、バランスを取れる人間でありたいのですが……そう上手くいきませんよね。ニュースを見ていても、自分の声は発信するけれど、相手の声を聞くのが苦手な人も多いのではないかと感じています。もしかして自分もその一人かもしれません。 

まるで動く絵画!?衝撃的な舞台に期待!

── 大阪では初めての上演。神戸ご出身の渡辺さんにとって、関西の公演に対してどんな思いがありますか?
渡辺
村上春樹さんも兵庫県ご出身で、個人的に縁を感じています。昨年地元に帰った時に、村上春樹さんの母校を訪れました。デビュー作『風の歌を聴け』に登場する芦屋市の「猿の檻のある公園」が撤去されるというニュースを見て、その周辺を歩いたり。その時に、また『ねじまき島クロニクル』が関西でもやれたらな……と思っていました。そして再演が決まり、大阪でも公演ができると知った時、この作品との縁を改めて感じました。 
── 大友さんの音楽についても教えてください。
渡辺
自分が出演する作品の音楽を大友さんが担当されることが多く、ライブもご一緒したこともあり、大友さんともとても縁を感じています。大友さんの音楽の魅力は、カオスと優しさが同居していること。言葉にするのは難しいのですが……、まさに理解しようともがいている感じでこの作品にぴったりですね。 
── 大阪公演を楽しみにされている方へメッセージをお願いします。
渡辺
美術がとにかく美しくて、仮に話の内容が入ってこなかったとしても、舞台装置とダンサーのパフォーマンスによって最高に楽しめる作品となっています。きっと観ているだけで脳ミソを解放してくれるのではないでしょうか。今、いろんな配信サービスやネットのコンテンツをはじめとする面白いものが沢山生まれています。そして舞台の世界でも、観たことのない新しいものがどんどん創られています。かつてない刺激的な舞台をお見せできると思いますので、楽しみにしていてください!劇場でお待ちしています。 
取材・文・撮影:ごとうまき