【森山良子、ジャズシンガーになりたかった】目から鱗のジャズレッスン「音楽も時代とともに変化する」

アーティスト

1967年のデビュー以来、澄んだ歌声で人々を魅了し続ける森山良子さん。フォークソングから演歌歌謡、JーPOPなど、ジャンルの垣根を超え様々な楽曲を歌ってきた。12月18日には念願のオリジナルJAZZアルバム『Life Is Beautiful』が発売され、森山さんにとっても一つのチャレンジになるとのこと。インタビューでは、JAZZアルバムの制作秘話や、10月27日(日)にフェスティバルホールで開催される「森山良子コンサートツアー2024 ~My Story~」への意気込み、プライベートについてなど……沢山語っていただきました。

いつかは── 。遂に掴んだジャズシンガーの夢

── 大江千里さんプロデュースによる『Life Is Beautiful』は、森山さんにとって念願のジャズアルバムとのことですね。

森山
私は元々ジャズシンガーになりたくて歌を始めました。私の中学、高校時代はちょうどアメリカンフォークが流行っていました。中学2年生の時に、当時学校中のアイドルだったクロパン(黒澤久雄)が「おい、森山、ジョーン・バエズの『ドンナ・ドンナ』を覚えるように。覚えたら電話しろ。」とだけ言って立ち去っていって……。それから必死で覚えて、学校でアメリカンフォークを沢山カバーして歌っていました。2年くらい経って、レコード会社の方が学校にいらして「フォークシンガーとしてデビューしませんか?」と、お声をかけていただいたのですが、一度断りました。ですが、フォークシンガーとしての自分が一人歩きしてしまっていて……。結果、私の意思を尊重してもらいながら、フォークソングから洋楽と、様々な歌を歌わせていただきました。

森山
それでも、最初に志した「ジャズシンガー」という夢は消えることはありませんでした。いつかは、いつかは……と思っていた頃に、大江千里さんがキャリアを捨ててジャズを学ぶために渡米。それを聞いた時、ものすごい衝撃と感銘を受けたし、羨ましかった。大江さんが帰国された際は度々会っていましたし、私の娘も大江さんの大ファンで、家族ぐるみの付き合いなんです。少しずつ交流を深め、お互い夢を語り合っているうちに、一緒にアルバムが作れたらいいな……という話になって。2年前に千里さんからジャズアルバム制作のお話をいただき、二つ返事でお受けしました。嬉しかったです。

── そして数回に分けてN.Y.にジャズ留学をして、今年8月にレコーディング。Instagramでも、N.Y.での楽しそうな様子が伝わってきました。

森山
ラジオのレギュラーがあるので録り溜めしたり、コンサートの合間を縫って、2週間単位で数回に分けて行き、お稽古しました。そして千里さんが日本に演奏旅行に来られた際には、スタジオや我が家で練習して……。そんなことを何度か繰り返しながら今年8月、N.Y.に 2週間滞在してレコーディングを行いました。もう、大江千里トリオの演奏が素晴らしくて!全て一回でOKが出ました。

── ジャズを学ぶことも、森山さんにとって新たな挑戦となりましたね。

森山
レッスンでは発声や発音などの基礎を学びました。私が歌っていたジャズはオールドタイプのジャズ。自分の歌い方が古いんだってことに気付かされた時は、とても驚きましたし、ショックでした。古典だと思っていたジャズも時代とともに変化するんだと──。全てが目から鱗でしたね。とても貴重な体験をしました。

森山
これまでの楽曲では、目一杯声を張り上げて歌っていましたが、今回はその半分ぐらいしか声を出していません。なので、とてもクールで洗練されたアルバムに仕上がっていると思います。レコーディング中もフェイクしたりアドリブをしたかったけど、そういったものは最小限。その代わりライブでは遊びますよ。

──『Life Is Beautiful』の楽曲の中には『涙そうそう』や大江千里さんのカバー曲『gloria』なども収録されていますが、どのようにアレンジされているか楽しみです。

森山
私もアイディアを出しながら楽しく、制作とレコーディングをしました。一曲、一曲に工夫が凝らされています。ただ、歌ったことのないメロディーラインが沢山あったので、難しいところが何箇所もありました。とくに『涙そうそう』は、一番苦戦しました。ラテンのリズムを歌ったことがこれまで無かったので……。だからこその面白さも沢山ありましたよ。

昔の温かみが受け継がれるフェスティバルホール

── 10月27日(日) に開催されるフェスティバルホールでの「森山良子コンサートツアー2024 ~My Story~」への思いや見どころを教えてください。

森山
最新ベストアルバム『森山良子の10曲』に収録されている曲は外せない曲なのでそこからは何曲か……。ほか、先行 デジタルシングルで発売されている『Life Is Beautiful』なども歌います。毎年フェスティバルホールで出来ることが本当に嬉しくて……。学生時代にフォークの集会があった時も、フェスティバルホールで開催した記憶があって、私は昔からこのホールが大好きなんです。愛情と愛着のある方達がつくったからこそ、新しくなっても温かみが宿っている。リニューアルしても変わらない、唯一無二のフェスティバルホールが大好きです。

── プライベートではグルメや旅行なども楽しまれ、とてもエネルギッシュな森山さん。普段生活する上で心掛けておられることはありますか?

森山
歩くことは意識しています。そしてなるべく階段を使うようにして。ちょっと早足で、登り降りしています。ストレッチも毎朝晩欠かさずおこなっていますね。以前、大腿骨にヒビが入って、人工骨に入れ替えた経験があるのですが、術後の翌朝からリハビリに専念し、5日間で退院しました。そこの病院では5日間で退院する人は初めてだったみたいで、先生に驚かれましたが(笑)。歩くことって何でもないことかもしれませんが、やっぱり人は足が大事だと痛感しています。

── 最後に、コンサートを楽しみにしておられる皆さんにメッセージをお願いします。

森山
今年もフェスティバルホールで開催できること、大変嬉しく思っています。皆さまから「森山の歌で元気をもらった」と、お声をいただきますが、皆さまの声援や拍手が私のエネルギーの源です。コンサートでもお互いにエネルギー交換をしながら、楽しいひと時を、そしていい思い出を作りたいです。是非皆さま、いらしてくださいね。

インタビュー・文・撮影:ごとうまき