勝田里奈が切り開くアイドルのセカンドキャリア「チームで創る喜びは、昔も今も私の原動力」

勝田里奈
アーティスト

「アンジュルム」の元メンバーで、現在はファッションブランド「PoFF(読み:ポーフ)」のディレクターとして活躍する勝田里奈さん。アイドル時代に培ったチームワークと情熱を活かし、独自の視点で“強さを纏う”ブランドを展開しています。4月29日(火・祝)から5月5日(月・祝)までジェイアール京都伊勢丹 3階 ザ・ステージ#3で開催されるPOP UP STOREを前に、彼女のブランド立ち上げの背景やファッションへの思い、アイドルのセカンドキャリアとしての挑戦、そして未来のビジョンについて伺いました。「PoFF」の世界観と、勝田さんの輝く軌跡に迫るインタビューをお届けします。

立ち上げのきっかけ

──ファッションブランド「PoFF」を立ち上げたきっかけを教えてください。

勝田
元々アイドルグループ「アンジュルム」のメンバーとして活動していましたが、大学受験を機に立ち止まり、「自分は何が好きなのか」を見つめ直しました。それまで当たり前すぎて気づかなかったのですが、服へのこだわりやファッションへの情熱が強いことに気づいたんです。そこで、ファッションを仕事にするか趣味にとどめるかを試すため、文化学園大学へ進学を決めました。母も文化学園大学の出身で、幼い頃からさまざまな服を着せてもらい、ファッションに触れる機会が多かったですし、その影響を自然と受け継いだのだと思います。在学中、ファッション業界には多様な職種があることを学びましたが、洋服を中心にさまざまな視点が融合し、一つのブランドとして完成するプロセスに魅力を感じました。その思いが「PoFF」を生み出し、今に至っています。

──アイドル活動と大学生活を両立する上で、大切にしていたことや大変だったことは?

勝田
両立は簡単ではありませんでしたが、入学前に先輩たちが両立する姿を見て、ある程度の心構えはできていました。それでも、どちらも中途半端にしたくないという思いが強く、計画的に時間管理は徹底しました。例えば、コンサートの準備では歌やダンスの練習時間を確保し、残りを勉強や課題に充てるスケジュールを組みました。元々計画を立てて行うタイプなので、「この時間はパフォーマンス、この時間は学業」と明確に区切ることで乗り越えました。睡眠時間を削ることもありましたが、どちらも全力で取り組めたと自負しています。

「PoFF」が掲げる“強さ”の意味

── 「PoFF」は“強さを纏う”というコンセプトですが、勝田さんにとっての「強さ」とは?

勝田
私にとって“強さ”とは、優しさも含まれるものだと思います。人に対して優しくできる人は、ブレない信念や心に余裕があるからこそ。そのような女性像が私の憧れであり、「PoFF」を通じて、強く優しい女性を表現したいです。

──アンジュルム時代からシンプルでモードな私服が印象的で、「PoFF」のルックとも通じます。

勝田
シンプルで洗練されたものが好きで、趣味や価値観は昔も今も変わりません。19歳のとき、フランス公演で購入したバレンシアガのレザーバッグは、今振り返っても「当時の自分がこれを選んだなんて!」と、驚くほど、27歳になった今もその感覚は変わらず、「好きなものは一貫している」と感じています。自分の「好き」を追求してきた結果が「PoFF」の世界観につながっているのだと思います。

──最近、ジュエリーラインもスタートされました。洋服とは異なる発見や難しさは?

勝田
ジュエリーは洋服とは全く異なる領域で、最初は周囲に相談しながら学びました。特に、天然石を使ったデザインなど、意味や背景が込められたアイテムはお守りのように感じられ、身につける楽しさが好きです。ジュエリー作りでは、「自分が作りたいもの」をチームと共有し、現実的な制約を超えてアイデアを実現するプロセスを楽しんでいます。洋服とは異なる視点が新鮮で、作り手としての視野が広がりました。

── 「PoFF」の洋服やジュエリーをどんな場面で着てほしいですか?

勝田
日常の中で、自分自身を大切にするきっかけになってほしいです。忙しい日々の中でも、「PoFF」を身につけることで喜びや幸せを感じ、気分を高めたりケアする時間を持てるような存在になれたら嬉しいです。

PoFF

ブランドディレクターとしての姿勢

──ブランドディレクターとして、関係者と意見が分かれたときはどう対応しますか?

勝田
私が最も大切にしているのはチームワークです。もちろん私の意見が基盤にはなりますが、一人で進めるだけでは成長が限られるため、積極的に周囲のアイデアを取り入れながらチームの多様な意見が混ざり合った「PoFF」らしいアイテムが生まれています。これからもチームの力を活かし、成長を続けたいです。

──アンジュルムでの活動と「PoFF」のディレクターとしての役割の違いは?

勝田
アンジュルムでは、メンバー全員が対等に意見を出し合う雰囲気でした。一方、「PoFF」では、デザイナーや生産者など役割が明確で、コミュニケーションの形も異なります。ただ、チームで一つの目標に向かう喜びは共通していますね。アンジュルム時代も今も、自然体でいられるのは、「チームで創る」という本質がブレないからかもしれません。

── 運営する上で最もこだわっていることは?

勝田
ものづくりには人の温かさが必ず伝わると信じています。だから、チームの人間関係や創作環境を大切にし、自由に表現できる場を守りたいです。自分が心から作りたいものを追求しつつ、チームで楽しみながら作ったものがお客様に届くプロセスを重視しています。

──目指している人や、今後のビジネスの展開について教えてください。

勝田
特定のロールモデルはいませんが、身近な友人や仕事仲間、好きなアーティストからインスピレーションを受けています。ビジネスの展開については、自分がやりたいことを責任を持って追求することが重要だと考えています。それが新しい価値を生み、アパレル業界に独自の風を吹き込むと信じています。今後も挑戦しながら楽しんで続けたいです。

 

アイドル時代の経験が今の活動の糧に

──アイドル活動の経験は今の仕事にどう活かされていますか?

勝田
中学生の時からチームで活動してきた経験が大きく今に生かされています。アイドル活動を経て、人と協力する楽しさや、コミュニケーションを通じて成長できることを学びました。それに自分の意見を持ちつつ、周囲の声をバランスよく取り入れる姿勢も自然と身についたように思います。今も良いチームで仕事ができているのは、アンジュルムでの経験が基盤にあるから。チームで創る喜びは、昔も今も私の原動力です。

──アイドル時代に葛藤はありましたか?

勝田
当時は葛藤もあったと思うのですが、いま思い浮かばないんですよね。ネガティブなことはあまり引きずらない性格なので、昔から何があっても「悔しさをバネに未来で結果を出せばいい」と前向きに考えるよう心がけていました。そのマインドが、今につながっていると感じます。

好きという気持ちを大切に

──アイドルのセカンドキャリアについて思うことは?

勝田
セカンドキャリアは簡単ではないですが、難しく考えすぎる必要はないと思います。まず、自分が何をしたいか、何が好きかを明確にすることが大切。アイドル時代は忙しくて自分と向き合う時間が少ないこともありますが、好きなことを言葉にして周りに伝えるだけで道が開けます。私も最初、「服が好きだと言ってもいいのか」と躊躇しましたが、勇気を出して発信したことでチャンスをつかめました。恥ずかしがらずに「これが好き」と伝えることが、大きな一歩になると思います。

──現役アイドルや勝田さんに憧れる後輩たちに伝えたいことは?

勝田
とにかく「今」を楽しんでほしいです。アイドル活動は忙しくて大変なこともありますが、その瞬間を全力で味わい、未来の自分につなげてください。どんな経験も必ずどこかで活きてきます。

──アンジュルムの新人メンバー、下井谷幸穂さんと後藤花さんのスタイリングを考えるなら?

勝田
一緒に活動したことはありませんが、コンサートやバックステージで印象に残っています。花ちゃんは可愛らしい雰囲気なので、大人ガーリーなスタイルが似合うと思います。甘すぎず、愛らしい要素を残した服で彼女の魅力を引き出したいです。幸穂ちゃんは大人っぽく、どんどん美しくなる印象なので、黒のクールな大人スタイルを提案。対照的な二人の個性を活かしたスタイリングが楽しそうです。

── 4月29日から5月5日にかけてジェイアール京都伊勢丹で開催されるポップアップストアに合わせた楽しみは?

勝田
京都は大好きで、修学旅行やアンジュルムツアー、プライベート旅行で何度も訪れ、思い出が詰まった場所です。独特の雰囲気や街並みが癒しを与えてくれます。ポップアップストアをジェイアール京都伊勢丹で開催できることが本当に楽しみで、街を巡りながらその魅力を存分に味わいたいです。是非皆さんにもお越しいただき「PoFF」の世界を感じていただければ幸いです。

インタビュー・文:ごとうまき