城定秀夫と今泉力哉が互いに提供された脚本でR15+指定のラブストーリー映画を監督するコラボ企画「L/R15」の第2弾。
本作の『猫は逃げた』は脚本を城定秀夫が、監督を今泉力哉が手がけている。『猫は逃げた』は3月25日から全国劇場で公開中、第一弾作の先に公開された『愛なのに』と同劇場で公開されていることが多く、両方見て楽しめるようにできている。本作でも『愛なのに』に出演している俳優がちょこっと出演、男女4人が繰り広げる会話劇にクスッと笑ってちょっぴり萌えるラブコメディ。
あらすじ
週刊誌記者の夫の町田広重(毎熊克哉)と漫画家の亜子(山本奈衣瑠)は離婚直前。広重は同僚の真実子(手島実優)と、亜子は編集者の松山(井之脇海)と絶賛不倫中。二人の離婚話しがなかなか進まない理由には飼い猫カンタの存在があった。そんな矢先、カンタが家から脱走。飼い猫カンタを中心に描かれる男女四人の“好き”が交錯する。
(C)2021「猫は逃げた」フィルムパートナーズ
描き方によっては昼ドラのようなどろどろな展開になりそうなプロットを今泉力哉監督らしい温かい作品に仕上げている。猫のカンタが本作の主役。まさに猫も呆れる人間の愚かな男女4人の色恋沙汰“あるある”が描かれ最後は意外な展開へと進んでいく。
猫のカンタを演じた猫の名演にもあっぱれです!
(C)2021「猫は逃げた」フィルムパートナーズ
レビュー
週刊誌の記者とカメラマン、漫画家と編集者との不倫ってちょっと生々しくてリアルじゃないですか?(笑)それぞれ4人の役者が自然な演技で引き込ませてくれた。特に真実子の広重に対する目線や表情(女性がとる好きな人に対するあざとい態度)とそれ以外の態度(どうでもいい男や素の状態)の二面性がリアルすぎて、女の生々しさが巧く表現されていた。対して亜子は常に自然体!
(C)2021「猫は逃げた」フィルムパートナーズ
(C)2021「猫は逃げた」フィルムパートナーズ
それにしても町田夫婦が結婚する前のシーンや、猫がいなくなる回想を絶妙なタイミングで入れてくるところが心憎い。
最後の四人が並んで話し合う長回しシーンには爆笑でした。だけどこのシーンは、大人でないと理解できないだろうなぁ(結婚、もっと言えば浮気、不倫経験ある人ならより楽しめる会話劇かと)。流れ的には普通ならドロドロかつ、めちゃくちゃな展開になるはずなのに…。なぜか笑えて爽快な作品にしてしまうところに“今泉イズム”を感じずにいられない。
R15指定なので、ベッドシーンもありますが、実はそんなにエロくない。どちらかと言えばこういった大人の事情(不倫や遊びや本気や結婚とか)を理解できるかどうかといった意味も込められています。そう、大人の“好き”や“愛”は複雑なのです。オズワルドの伊藤 俊介演じるノーパン監督が話すアガペー、フィリア、エロースにも深く関係するのかなと。哲学的で大人が楽しめる作品です。『愛なのに』と併せて見て楽しんでいただきたい。
(C)2021「猫は逃げた」フィルムパートナーズ
(C)2021「猫は逃げた」フィルムパートナーズ
猫は逃げた
監督:今泉力哉
脚本:城定秀夫 今泉力哉
キャスト:山本奈衣瑠、毎熊克哉、手島実優、井之脇海、伊藤俊介、中村久美、芹澤興人
製作:2021年製作/109分/R15+/日本
配給:SPOTTED PRODUCTIONS