【第94回アカデミー賞4部門にノミネート】ショービズ界の光と闇を描く大人向け寓話『ナイトメア・アリー』

(C)2021 20th Century Studios. All rights reserved.
映画

過去にも映画化され1946年に出版された名作小説「ナイトメア・アリー 悪夢小路」を原作として、今作もノワールたっぷりにショービジネスの闇と人間の本質を描く。野心にあふれ、ショービジネス界で成功した男が、数多くの誘惑にひっかかり思いがけぬトラブルによって転落するストーリー。「シェイプ・オブ・ウォーター」でアカデミー賞の作品賞ほか4部門を受賞したギレルモ・デル・トロ監督がメガフォンをとり、「アリー スター誕生」「アメリカン・スナイパー」などで4度のアカデミー賞ノミネートを勝ち取ったブラッドリー・クーパーが主人公スタンを、2度のアカデミー賞受賞歴のケイト・ブランシェットやトニ・コレット、ウィレム・デフォー、ルーニー・マーラらが顔を揃える。

あらすじ

野心高い青年スタンはある怪しげなカーニバルの出し物の一つ、ギーク(獣)に興味惹かれてカーニバルの一座へ仲間入り、そこで読心術の技を身に着ける。天性の才能とカリスマ性を武器にしたスタンは恋人のモリ―とともにトップの興行師へとのし上がっていく。上流階級に取り入って更なる上を目指すスタン。しかし、彼の並々ならぬ野心が仇となり失墜していく。

(C)2021 20th Century Studios. All rights reserved.

レビュー

1940年代のアメリカを舞台に、金と酒で身を滅ぼした一人の男が描かれる。本作は名匠エドマンド・グールディングの「悪魔の往く町」(1947)のリメイクとなり、当時はプロダクション・コードによってタブー視され、映像化できなかったカーニバル一座の内部を、事細かく、そしてダークに怪しさ満開で描いている。初っ端から映し出されるのは鶏の首を食いちぎるギーク(獣)と呼ばれる人間のような野獣のような怪しげな男。さらに母親を嚙み殺したという奇怪な胎児、ホルマリン漬けとなった無数の胎児が陳列された奇妙な小部屋…。まるで何かのおとぎばなしを思わせるような摩訶不思議な世界観に吸い込まれるだろう。

(C)2021 20th Century Studios. All rights reserved.

本作のジャンルはサスペンススリラーとなっているが、スリラーというほど怖くもない。しかし「シェイプ・オブ・ウォーター」のような(奇形の男と恋におちるファンタジー)ファンタジー要素もほとんどない。結始薄気味悪く鬱々としていて、良くも悪くも好き嫌いが分かれる作品ではある。
さらに多くの人が途中からラストの展開が大体読めてしまう。「やっぱりね、こう来たか〜」って。本作は大人向けの寓話だから。臭いものに蓋をしない描き方には好感が持てる。

(C)2021 20th Century Studios. All rights reserved.

人間の業がフルに詰まったどろどろダークな物語である一方、ショービズ界の裏を知れるという思いがけぬギフトがある。また、タロット占いとか、読心術とかそういった類のものが好きな人は引き込まれるはず。なんと言っても注目すべきはケイト・ブランシェット。彼女の妖艶さに加えた怪演っぷりには息を呑む。そして、ウィリアム・デフォーの圧倒的な存在感よ。「ライトハウス」や「スパイダーマン」などでも発揮された癖のある悪役が最高に似合う。彼の凄まじさを改めて実感した。

ナイトメア・アリ―は3月25日から全国劇場で公開中!

(C)2021 20th Century Studios. All rights reserved.

(C)2021 20th Century Studios. All rights reserved.

ナイトメア・アリー

監督:ギレルモ・デル・トロ
製作:ギレルモ・デル・トロ J・マイルズ・デイル ブラッドリー・クーパー
原作:ウィリアム・リンゼイ・グレシャム
脚本:ギレルモ・デル・トロ キム・モーガン
キャスト:ブラッドリー・クーパー、ケイト・ブランシェット、トニ・コレット、ウィレム・デフォー、リチャード・ジェンキンス、ルーニー・マーラ
原題:Nightmare Alley
製作:2021年製作/150分/G/アメリカ
配給:ディズニー

文/ごとうまき