【インタビュー】荻野目洋子、40周年を経てたどり着いた”音楽の自由と責任“

アーティスト

1984年のデビュー以来、「ダンシング・ヒーロー」や「六本木純情派」など数々のヒット曲で時代を彩ってきた荻野目洋子さん。2024年にデビュー40周年を迎え、2025年からはフリーランスとしての歩みを始めるなど、その勢いは増すばかりです。
2026年3月6日(金)大阪・なんばHatchで開催されるライブは、これまでのダンスステージとは一味違う、ギターやウクレレの弾き語りを交えたアコースティックな編成も予定されています。進化し続ける彼女に、楽曲への思いや現在のライフスタイル、そして表現者としての決意を伺いました。

「ダンシング・ヒーロー」は、人生を共に歩む大切な一冊の本

――昨年11月に「ダンシング・ヒーロー」がリリース40周年を迎えました。今や世代を超え、盆踊りやダンスシーンでも愛されるこの曲は、荻野目さんにとってどのような存在ですか?

荻野目
私の人生において、本当に大きなターニングポイントになった曲です。もともと私はアイドルを目指したというより、ただ歌うことが大好きな子どもで「歌手になりたい」とこの世界に入りました。10代の頃はアイドル全盛期で、「アイドルってどういうことだろう?」と自問自答しながら過ごしていたんです。
そんな中で出会ったこの曲が、娘世代の方々や、盆踊りを楽しむ全国の皆さんにまで広がっている。本当に不思議な縁を感じますし、こうしたチャンスをいただけることは「もっと頑張りなさい」と背中を押されている気がしています。
10代で歌っていた頃の作品を今の年齢で歌う感覚は、例えるなら「本棚にずっと置いてある大切な一冊の本」に近いかもしれません。何年も前に読んだ本だけど、今もう一度手に取ってみてもやっぱり素敵だなと思える。そんな大切なものと一緒に、人生を歩んできたという感覚ですね。

――精力的にライブ活動を続けておられますが、ステージに立つ原動力は何でしょうか。

荻野目
今の私にとって、ライブが一番のやりがいです。ライブは「生物(なまもの)」ですから。完成された音源とは違う、その瞬間の情熱やお客さんの反応を肌で感じられる唯一の場所。一つひとつのステージを終えるたびに、遠方から駆けつけてくださるファンの方も増えていて、本当に嬉しい限りです。

――3月の大阪公演では、どのようなステージを予定されていますか?

荻野目
 春の開催ですので、春らしいセクションを考えています。定番の歌って踊るコーナーはもちろん、その場でダンスをレクチャーして会場の皆さんと一緒に踊るシーンも作りたいですね。
また、ギターやウクレレの弾き語りも必ず披露します。実は、まだセットリストを全部は決めていないんです(笑)。SNSでのファンの方とのやり取りから「これ歌ってみようかな」と閃くこともあるので。ギリギリまでその時の心持ちを大切にして、選曲したいと思っています。

挫折を経て手にした楽器。バンドで感じる音楽の輪

――近年、楽器演奏を積極的に取り入れておられますが、その魅力はどこにありますか?

荻野目
私の音楽の原体験はビートルズなんです。初めて見たライブもビリー・ジョエルでした。ミュージシャン同士の掛け合いや音の遊び方に強烈に憧れていました。
実はギターは20代の頃に一度挫折しているんです。その後、子育ての合間に手軽なウクレレを始めたことで、音楽との向き合い方が変わりました。今は楽器のソロパートをどう作るか、ミュージシャンとどうコミュニケーションを取るか、全部自分で手がけています。
今はソロ歌手としてだけでなく、サザンオールスターズの関口和彦さんとウクレレバンドを組んだりもしていますが、それがもう楽しくて! まるで「大人の部活動」のようです(笑)。以前は自分の歌の出来に一喜一憂して落ち込むこともありましたが、今は仲間と作り上げる一体感や、ハプニングさえも楽しめる余裕が持てるようになりました。

――昨年、フリーランスとして独立されました。大きな決断だったと思いますが、変化はありましたか?

荻野目
 事務所とは業務提携という形でお世話になりつつ、全ての権限と責任を自分で持つようになりました。やることは膨大に増えましたよ。タイトルの決定から写真選び、企画まで。でも、不思議と大変だとは思わないんです。
ダイビングに例えるなら、潜る前は何が泳いでいるか分からなくて不安ですが、いざ潜ってみると、そこには見たこともない綺麗な魚や素晴らしい世界が広がっていた……そんな楽しさの中にいます。今は自分の責任において自由でいたい。お金が全てではなく、気概を持って面白い仕事にも取り組んでいきたいですね。

大人のダンスミュージックを追求し、自分らしく歩む

――私生活では、一番下のお子さんが今年20歳に。一つの区切りを迎えられますね。

荻野目
我が家では選挙権を持つ18歳を一つの区切りとして育ててきました。今は夫婦二人の時間も増えましたが、家族を大事にする比重は変わりません。ただ、家族との時間で感じた優しさや、リフレッシュした経験が、より音楽の材料として蓄積されるようになりました。SNSでの発信も含め、「自分らしい言葉とは何か」をより追求する力が強くなったと感じます。

――最後に、今後の展望とファンの皆様へメッセージをお願いします。

荻野目
年齢を重ねた今だからこそできる「大人のダンスミュージック」を追求していきたいです。カントリーやロックの要素を織り交ぜながら、新しい形を模索し続けたいですね。
健康維持については、特別なことはしていませんが、体が欲する野菜たっぷりの料理を自分で作って食べる。そんなシンプルな生活が、パワフルなステージを支えてくれている気がします。

今回のライブ会場であるなんばHatchは、私にとって初めての場所。ライブは一期一会です。今の「荻野目洋子の精一杯」を詰め込んでお届けしますので、ぜひ会いに来てください!

取材・文・撮影:ごとうまき