【おかゆ インタビュー】『渋谷のマリア』で更に進化!「渋谷で過ごした青春の日々が、今の私を作っている。」

アーティスト

シンガーソングライター・おかゆ。一度聞くと忘れることのないその名は、中学時代に本名の「ゆか」をもじってつけられたあだ名。メジャーデビュー前は“平成のおんな流し”としてギター片手に、全国にある夜のスナックを果敢に回って歌を披露してきた。そんな彼女の5枚目のシングル『渋谷のマリア』が5月31日にリリース。「GM盤」「黄昏盤」「雪舞桜盤」の3タイプが同時発売中だが、6月12日付オリコンウィークリー演歌・歌謡曲シングルランキングでは初登場、第1位を獲得し、好調な売れ行きだ。今回はそれぞれの楽曲への思いや、制作秘話を中心に聞き、さらにおかゆのキャラクターや野望についても深掘りしていく。多才で、底知れぬパワーと繊細さを持ち合わせた彼女の唯一無二の魅力を感じてもらいたい。

渋谷のギャルから歌手の道へ、自身の原点“渋谷”へのオマージュ曲

──『渋谷のマリア』はロックテイストな楽曲ですね。渋谷はおかゆさんにとってどんな場所ですか?

おかゆ
私にとっての渋谷は原点であり、憧れの場所でした。北海道から上京したきっかけも歌手になるという目的ではなく、“渋谷のギャルになりたい”という憧れから東京に出てきました。過去にはギャル雑誌『egg』の読者モデルもしてたんですよ。ギャルの友達と切磋琢磨しあいながら過ごした青春の思い出が沢山詰まった場所です。

──今のおかゆさんは渋谷で生まれたと言っても過言ではないと。

おかゆ
17歳の時に母が急逝し、母の夢を受け継いで歌手になろうと決意するも、21歳くらいまで空回り。当時“歌手になりたい”、“演歌歌謡の道へ行きたい”といった思いはあったものの、そういった知り合いもいないし、スマホもないから情報もなく、どの扉を叩いたらいいのかわかりませんでした。情報弱者ゆえに騙されたこともあったり。だけど、もしあの時、誰かの弟子になったり、カラオケ大会に出ていたら、今とは違う人生だったかもしれません。いろいろ遠回りした結果、21歳でスナックをまわる「流し」という活動をして、これを機に私のことを知ってもらえましたし、今の自分がいる。ギャル時代にもがいて、夢を追いかけていたあの頃の私が、今の自分を作ってくれています。

──歌詞にも刻一刻と移り変わる渋谷の情景やランドマーク、時代背景が散りばめられています。

おかゆ
デビュー前には道玄坂で流しをしていましたし、インディーズ時代はYouTubeの番組を道玄坂の「バックタンカフェ」で撮っていました。今も道玄坂で弾き語りライブをしていて、『渋谷のマリア』のMVも「クロスロード」で撮影しています。道玄坂は私の音楽のルーツでもあるのです。

個性を尊重し、受け入れてくれる街・渋谷から世界へ羽ばたく!

──ところで、『渋谷のマリア』の“マリア”にはどんな意味が込められているのでしょう?

おかゆ
“マリア”にしたのはグローバルでも通用する、世界的に受け入れられやすい名前だから。そして渋谷には世界中の人が集まっています。スクランブル交差点では、世界各国の人々と時代が交差しています。日々移りゆく街、それでいて変わらない渋谷の街を背景に、マリアが世界に飛び出していってくれたら、という意味が込められています。

──歌詞にはおかゆさん自身を思わせるような言葉もところどころ出てきます。

おかゆ
渋谷での活動や、ネオン育ちという点では私と重なる部分もあります。しかし、この歌は私のことです!と言い切ってしまうと、歌そのものに奥行きや深みがなくなってしまい、非常につまらないものになってしまうと思っていて。もちろん、私と思って聴いてもらってもいいですし、皆さんにはマリアを自由に想像してもらいながら聴いてもらいたいですね。

『黄昏の雨を抱いて…』はメロディーに詞を、『雪舞桜』は詞にメロディーをつけて完成させた。

──『黄昏の雨を抱いて…』にはどのような思いが込められていますか?

おかゆ
インディーズ時代に作った『雨二濡レテ(雨の交差点)』以来の雨の曲になります。この曲は、以前からストックしていたメロディーに歌詞を書きました。まずメロディーを聴いて、ポジティブな未来がある明るい未来ではないと思って、切なさや儚さ、別れなどをテーマに、だけど、転調からは少し希望を持たせながら温かみのある雨の世界観を作り上げました。黄昏の雨に“濡れる”ではなく“抱いて”にしたのは、受容、一筋の光をイメージしたからです。情景を思い浮かべながら聴いてもらえると嬉しいです。

──『雪舞桜』(雪舞桜盤)は演歌よりの歌謡曲ですね。

おかゆ
これまでとは違ったタイプの曲だと思われるファンの方もいらっしゃるかと思いますが、実は、この曲は提供用に作ったものです。ある歌手の方から依頼されて、その方を思い浮かべて書いた詞。そこにギターでメロディーをつけて仕上げたので、少しフォーク演歌っぽさも感じられます。このおかげもあって、これまでにない自分の世界観を表現できたし、サビでは、これまでで一番情念を込めて歌っています。今回はカップリング曲も全てカラオケにも入れていただけるので、是非カラオケでも歌ってもらえたら嬉しいですね。この曲は、最初は語りかけるように歌って、その後たっぷりと情念を込めて歌ってください。

──『グッドバイ・モーニング』はサンディー(1976年)のカバー曲とのこと。

おかゆ
松崎しげるさんなど、これまで18人の方がカバーされている楽曲ですが、自分の曲のように歌っています。歌い手それぞれが自分の世界観で表現できる。それって、楽曲の力だと思うのです。それに私がこれまでカバーした曲の中では一番スケール感のある曲ではないでしょうか。名曲であり、大曲ですよ。私は母を17歳で亡くし、当時働いていた貿易会社をリーマンショックの影響でリストラされたりと、一度どん底まで落ちた経験があります。いろいろあったけど、それでも朝は来る。今辛い状況にいる人も、この曲を聴いて元気を出してもらえたら……。皆さんの背中を押すお手伝いができると嬉しいです。

──ところで、作詞・作曲はいつからされているのですか?

おかゆ
作詞は、上京してきた頃からずっとしていました。メロディーに関しては、いくらでも生まれるんです。これは、“流し”での活動が生かされているかと。というのも、流しではありとあらゆる曲をリクエストされます。それに、曲を歌えないとその場を持たすことができないし「歌えません」「知りません」と言うことが許されない現場。常に赤本を持ち歩いていたのですが、実は聴いたことがない曲ばかりで。原曲を知らないけれど、それでも歌ってみる。間違っているかもしれないけれど、お客さんの歌に合わせて歌い切る。そういったことを繰り返してきたので、いつの間にか鍛えられたのかもしれません。

コロナ禍を経て自身も変化

── 2019年にメジャーデビューするも1年経たぬうちにコロナ禍に突入。大変でしたよね。

おかゆ
デビュー1年目はびっくりするぐらい忙しくさせてもらって、それこそ2019年には流しで全国制覇を達成して、スナックの流しの経験を活かした新しいテレビ番組のレギュラーも決まっていました。他にもライブや公演、2年目にリリースする予定のCDのリリースイベントも決まっていました。デビュー2年目までのスケジュールも沢山入っていた中、コロナによって全て仕事がなくなりました。もちろん流しもできない。『愛してよ』(2020.05.27)は発売されるけどキャンペーンはできないし……。

──ここから勝負!って時に踏んだり蹴ったりでしたね。

おかゆ
当時所属していた個人事務所で、私は役員をしていましたが解散。次に移籍した事務所でも、コロナ禍の影響で、1年間一つも営業ができませんでした。ただ、こうした経験があるからこそ、仕事があることに感謝できるし、忙しくしていることが幸せなんです。

──これまで数々の苦難を一つ一つ乗り越えてこられた。そんじょそこらのことじゃ、ヘコタレナイ!って思いませんか?

おかゆ
そうかもしれませんね、これまでいろんな事があったので。ただ、流石にコロナは想像していないし、自分の力ではどうにもできなかった。だけどこれを乗り越えた先に『星旅』(2021.06.02)が生まれたり。困難を乗り越えるたび、少しずつ進化はしているのかなって思います。今年のテーマは進化なんです!これまでの5年間の集大成として、『渋谷のマリア』でさらに飛躍したいと思っています。

令和の音楽史に名を刻みたい

──シンガーソングライター、楽曲の提供、MCなど才能豊かなおかゆさん。今後挑戦したいことは?

おかゆ
1つは、もっと楽曲提供をしていきたいと思っています。昨年NHK『ラジオ深夜便』にて、初めてのタイアップで秋元順子さんに『一杯のジュテーム』という曲を書かせていただきました。自分に書く曲と人に書く曲とでは、全く違うんです。人に書く曲は俯瞰して書けるし、その歌手の方が歌ってきた楽曲を全て聴いて、心から愛して、その人の事を思い描いて書く。こういった作業がとても好きだと気づきました。

──他にはどんな事をしたいですか?

おかゆ
本を出したいなって思っています。コラムなどの連載でもいいな。“流し劇場”とか、“おかゆの人生劇場”とか(笑)、流しで出会ったキャラの濃いママの話とかいっぱいあるんですよ(笑)。お声がかかれば是非、書かせてもらいたいです。もちろん全国ツアーをしたり、東京国際フォーラムで歌ったり、ディナーショーをしたり、望みは沢山あります。だけど、私の一番大きな目標、野望は、自分の曲を令和の音楽シーンに残すこと!ヒット曲、時代を彩る音楽を生み出して、軌跡を残したい!!これからも進化し、成長していきますので見守ってください。

イベント告知

●7月19日(水)

◎「大阪はやりうたライブ」 会場:アメリカ村BIG CAT 

11:00開場 11:30開演 出演おかゆ、キム・ランヒ、こおり健太他

 チケット¥3.500(CD付き)

 *詳細は大阪はやり歌ライブホームページ大阪流行歌ライブ (hayariutalive.com)

◎午後7時スタート『渋谷のマリア』PRイベント・ミニライブ&特典会

HMV三宮オーパ店(神戸市中央区三宮町1-5-26)

観覧無料・問い合わせ先:HMV三宮オーパ店(TEL:078-327-4060)

●7月20日(木)

◎15:30~ミヤコ瓢箪山店 PRイベント・ミニライブ&特典会

*この日はミヤコ瓢箪山店以外に奈良県橿原市、羽曳野市、門真市でカラオケ喫茶、カラオケ教室のキャンペーンも開催。 お問合せはミヤコ瓢箪山店までTEL:072-982-4589

おかゆ | プロフィール | ビクターエンタテインメント (jvcmusic.co.jp)

おかゆ | Sun Music Group Official Web Site (sunmusic-gp.co.jp)

インタビュー・文・撮影/ごとうまき