尾上右近 自主公演 第八回『研の會』が8月31日(土)9月1日(日)国立文楽劇場で開催される。“自己研鑽の場”という意味合いも込めて始めた自主公演も今年で八回目を数え、大阪の上演は初。今回も未経験の名作に挑戦する。取材会に出席した尾上右近さんに意気込みや演目について語っていただきました。
「いままでの人生で一番気合いが入っている」という尾上。今回は『摂州合邦辻』と『連獅子』の“親の愛”がテーマとなった作品をセレクトした。『摂州合邦辻』は元々はインドの神話を大阪の摂州に置き換え上演されたもの。「大阪では不思議と大きな役や転機となる役をさせてもらうことが多く、大阪でやらせてもらうなら縁のあるものがいい、それに玉手御前(たまてごぜん)という役は僕の世代ではあまりいないという思いからこの演目に決めました」と、尾上。
出演者も中村橋之助、中村鶴松、尾上菊三呂、市川青虎、市川猿弥と豪華な顔ぶれが揃う。「それぞれがハマり役。僕が見たいキャストでの演目の上演が決まりました!」と目を輝かす。
高安家のお家騒動阻止のため、義理の息子・俊徳丸(しゅんとくまる)に邪恋をしかけ、ついには自らの命をも捨てる玉手御前。継母の一途な真心が俊徳丸を業病から救う奇蹟を起こす物語。「観る方によって玉手御前の人格や俊徳丸への思いなど感じ方が違うと思います。自由に受け止めていただきたいので、自分が玉手御前をどのように演じるかは言えません」とニヤリ。
『連獅子』も、尾上が15歳の時に仔獅子を演じたため思い入れが強い。「人生で初めての大役をさせていただき、その場所が大阪の松竹座さんでしたので、大阪は僕にとって特別な場所なんです」 さらに「まだ仔獅子を踊れる体力はありますが、今回は親獅子にまわって4人の先輩方(市川團十郎さん、市川猿之助さん、尾上松也さん、尾上菊之助さん)の親獅子に学んだものを後輩に受け渡したい」と、意気込みをみせた。
仔獅子を演じるのは寺島しのぶの息子・尾上眞秀だ。「父が歌舞伎俳優ではないというところも眞秀さんと僕の共通点。親獅子をやらせていただくなら眞秀さんにお願いしたいと思っていました。」と、親子の物語を眞秀さんと2人で演じることも一つの挑戦だという。「“血は水よりも濃い”と言われる世界の中で、“血よりも濃い水がある”ということを先輩方に教えていただきましたので、彼とも共有したいです!」と、すでに父性が芽生えているようだ。
2015年から始まった『研の會』も八回目、まもなく10年を迎えることになり、始めた当初は23歳だった。「はじめは第十回までは絶対にやる!と決めていましたが、回を重ねるごとに自主公演を続けていくことがとても大変なことだと気付きました。十回まで残り二回。残りの自主公演では新作歌舞伎もやりたいし、まだ分かりませんが十回目は全国ツアーをやりたい。芝居小屋やホールなど場所を問わず、自分のやりたいところでやってみたいです!」と意欲的!
最後に「“ケンケンカレー”を買いに来るつもりで観に来てもらえたら……。ついでに歌舞伎を観たらうっかりハマっちゃう!というくらいに責任を持って、面白い歌舞伎をお届けするつもりでいます!」と、場を沸かせた。
尾上右近自主公演 第八回『研の會』は国立文楽劇場にて8月31日(土)9月1日(日)両日ともに昼の部11:00開演、夜の部16:00開演。
取材・文:ごとうまき