【本屋大賞受賞小説を映画化】繊細さと美しさが融合した衝撃作 「流浪の月」

(C)2022「流浪の月」製作委員会
映画

2020年本屋大賞を受賞した凪良ゆうのベストセラー小説「流浪の月」が映画化、5月13日から全国劇場で公開されている。監督には「怒り」の李相日がメガホンをとり、広瀬すずと松坂桃李が主演を務める。「パラサイト 半地下の家族」のホン・ギョンピョが撮影監督を担当したため、映像が格別に美しい。

あらすじ

ある日の夕方、雨が降る公園でびしょ濡れになっていた10歳の少女・家内更紗に、19歳の大学生・佐伯文が傘をさしかける。伯母に引き取られて暮らす更紗は家に帰ることを拒み、文は彼女を自宅に連れて帰ることに。更紗はそのまま悠々自適に2カ月間文の部屋で過ごす。
しかしある日、文は更紗を誘拐した罪で逮捕される。“被害女児”とその“加害者”という烙印を背負った二人は事件から15年後に再会するが・・・・二人は誰にも言えない秘密を抱えていた。更紗の現在の婚約者・中瀬亮を横浜流星、文の恋人の看護師・谷あゆみを多部未華子が演じる。

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レビュー

更紗という役に見事にハマった広瀬すず、松坂桃李の身体作りまで含めた徹底的な役作りと演技力は言うまでもなく、更紗に歪んだ愛を向ける亮を演じた横浜流星の怪演っぷりには圧倒される。繊細で儚く危なっかしい、だけどとびきり美しい作品。色調、画の切り取り、カメラワークが秀逸。また月の満ち欠けや、水、雲、風、カーテンなど“流れる”描写にも目を奪われ、インテリアや文のカフェも味がある。筆者は原作未読のため、最後の最後まで真実が分からずに食い入るようにみてしまった。ラストの伏線回収には文に対して悲しみとショックと何も知らずに偏見の目を持っていた自分に罪悪感と自己嫌悪に打ちのめされる。
更紗と史の間には確かに愛があったのだろう。複雑な環境にあった更紗にとって文は唯一の安らぎの場所、自然体でいられる相手だった。
“愛”にも様々なカタチがある。どれだけ周りにとやかく言われようが、石を投げられようが二人の愛を貫けば良い。本作に描かれる文という人物は、ニュースで騒がせているような劣悪な犯罪者たちとは違うということ。ただし一歩間違えると危険な作品にもなりかねない。非常に難しいテーマを観客に投げかけている。見終えたあとは、とてつもない余韻が残る。是非大きなスクリーンに包み込まれてみてほしい。

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流浪の月

監督:李相日
製作総指揮:宇野康秀
原作:凪良ゆう
脚本:李相日
キャスト:広瀬すず、松坂桃李、横浜流星、多部未華子、趣里、三浦貴大、白鳥玉季、内田也哉子、柄本明
製作:2022年製作/150分/G/日本
配給:ギャガ

文/ごとうまき