「死ぬことも生き続けることも恐怖なんだよ」
永遠の命を持つ(さらに超能力まで使える)クローンの青年と、彼を守ることになった余命わずかな元情報局員の運命を描いた韓国発のSFサスペンスアクションドラマ。予告編だけでは本作の全ての良さが伝えられない。人を吹き飛ばしたり、壁や床に打ちつけたりもできるという超能力が使えるクローン青年“ソボク”、戦闘時の見えない衝撃の視覚化をVFXで巧みに表現し、漫画「AKIRA」を彷彿させる超能力バトルは必見である!
また、「新感染 ファイナル・エクスプレス」のコン・ユとドラマ「青春の記録」のパク・ボゴム の人気俳優のW主演に加え、キレッキレなアクションと緊張で張り詰めたシーンはさることながら、しっかりとヒューマンドラマ的要素も含まれていて観る側の感情の揺れ幅が大きく動く作品でもある。本作は韓国における興行成績初登場No.1!もし鑑賞を迷っているのであれば是非とも見るべき作品だと自信を持って薦めたい!
あらすじ
研究所で生まれたクローン人間“ソボク(パク・ボゴム)”の骨髄ではiPS細胞が常につくられており、彼が疾病で死ぬことはない。しかし致命傷を負えば死ぬため“条件付きの不死”ではあるものの、ソボクには人類の永遠のテーマとされる“永遠の命”をもたらす可能性がある。
ゆえに謎の勢力がソボクを奪おうと狙っていて、研究を続けたい研究所は、「余命わずか」と宣告を受けた元情報局員ギホン(コン・ユ)にソボクの護衛任務を「ソボクの細胞を移植する臨床実験への参加」の特典と引き換えに命じたのだが、任務に着くや否や何者かに襲撃されることにーー。
観る者への‟死生観”を問う作品
本作は“死”をテーマにそこから纏わる人間の愚かさや底なしの欲望、そしてクローンと人間との“人間愛”が描かれており“SFサスペンス”なんだけど、本質的には極めて哲学的かつ哀しき物語でもある。クローン人間“ソボク”の母を想う気持ちは人間とは変わらないし、ギボンを“兄さん”と慕う姿からも、ソボクには人間の心が宿っているのだ。
物語の中盤から、2人の逃避行が始まり、そこで2人は徐々に心の距離を縮めていくのだが、“人間とクローン人間が心を通わす”という凡庸な描き方だとしても、ここにはやはりグッときてしまう。
先月公開された『Arcアーク』がまさに‟不老不死”をテーマにした作品だが、“不老不死”は我々人類にとって“恐怖”とともに“手に入れたい”とされる永遠のテーマでもある。しかし、近年の驚異的な技術革新と医療によってこの不老不死が現実になりつつある(これに関しては様々な側面から議論がなされているが…)。もし本当に近い将来に不老不死が実現すれば、、、“永遠の命”を手に入れられるというのは果たして幸せなのだろうか?いつ来るかわからない“死”があるからこそ、“いま”を目一杯生き、人を愛し、人生を謳歌できるのではないだろうかーー。本作はSFアクションならではの‟娯楽”とともに、ギホンとソボクの生き様や台詞を通して、“死生観”についての課題をも我々に投げかけている。
SEOBOK ソボク
文/ごとうまき