【落語と弾き語りの融合】新たなカルチャーが誕生!?『スペシャ寄席』

7月19日に開催された『スペシャ寄席』の出演者
EVENT

【落語家×音楽家】アーティストたちの魂の共鳴に大きく心が揺さぶられる。

これぞ表現者たちの魂のぶつかり合い!まさに落語家と音楽家の競演、“セッション”だ!

7月19日に落語と弾き語りライブの融合イベント『スペシャ寄席』がumeda TRAD(大阪市北区堂山)で開催された。本公演は同時にライブ配信も行っており、会場に行けない人もリアルタイムでライブを楽しむことができる。またアーカイブは7月25日(日)23:59まで視聴できるとのこと。こちらから→https://livewire.jp/p/spsyose210719(アーカイブ配信チケットは7/25 21:00まで購入可能)

落語の概念を覆した斬新な落語会が開催されている。落語の存続と幅広い世代に落語の魅力を伝えるべく、時代に沿ったデジタルを駆使し、また時には既存のカルチャーとを融合させながら、常に挑戦し続けている落語家たちがいる。勇猛果敢に挑む彼らの名は桂紋四郎、笑福亭笑利、桂九ノ一、大阪ラジオ局FM802DJの樋口大喜である。

「Clubhouse寄席」と言えば2021年2月にスタート、数多くのメディアにも取り上げられ話題になったことで記憶に新しい(当メディアの取材記事)。同年3月には天満天神繁昌亭と東京・お江戸両国亭でそれぞれ生クラブハウス寄席を開催(生クラブハウス寄席の記事)、これまで生の寄席に縁のなかったとされる人々を呼び込むことに成功し、落語界に新たな風を巻き起こした。さらに現在は「紅楽葉寄席(くらはよせ)」として形を変えて全国行脚、まさに“スクラップアンドビルド”ごとく、柔軟に、斬新かつ心躍る企画で全国に落語の魅力を届けている。

スペシャ寄席レポート

『スペシャ寄席』は、ゲストに石崎ひゅーい、ヤマサキセイヤ(キュウソネコカミ)、森良太の3人を迎えて、ミュージシャン×落語家の3つのブロックを作って進行していくという異色格闘技戦である。

桂九ノ一× 森良太

落語と音楽のガチ対バン

桂九ノ一と森良太の織りなすセッションは『家族』をテーマとした噺と音楽で繰り広げられる。給与のほとんどをレコードにつぎ込むほどのレコードマニアで、作曲も手がけるという桂九ノ一は、古典落語「真田小僧」を熱演、その豊かな表情からは、噺の中のずる賢い息子と父親とのやりとりの情景がはっきりと浮かびあがるほどだ。一方の森良太は2007年にBrian the Sunを結成、2021年からはソロ活動を開始したばかりである。なんと、森さんの父親は落語家だという。そして彼の甘い声には誰もが酔いしれるはずだ。

桂九ノ一×森良太

笑福亭笑利× ヤマサキセイヤ(キュウソネコカミ)

楽曲からインスパイアした創作落語を披露

この日のために、そしてキュウソネコカミの楽曲を落語で表現するために新作落語を書き下ろしたという笑福亭笑利。‟夢”をテーマにした創作落語『冷めない夢』は、かつて芸人だった20代の頃の笑利さん自身とキュウソネコカミのファンに向けて、そして夢を追う全ての人たちに向けてのエールが込められていて、その噺には思わず目頭が熱くなる。まさに‟泣き笑い”がピッタリな作品だ。個性豊かな歌詞と唯一無二なライブパフォーマンスでお馴染みの、ロックバンド“キュウソネコカミ”のギター・ボーカルのヤマサキセイヤさんは毎月放送中の自身のラジオで「音割れの貴公子」という一面を持ち、二時間ものマシンガントークを繰り広げるという。そんな‟喋りの才能”も併せ持つヤマサキセイヤさんと笑利さんの2人のフリートークも息がぴったり、見どころの一つである。

笑福亭笑利×ヤマサキセイヤ

桂紋四郎×石崎ひゅーい

桂紋四郎の古典落語を聞き、石崎ひゅーいが選曲するというが、、、

コロナ禍がいよいよ本格化することとなった2020年2月、落語会の自粛・中止が相次ぐ中でいち早くYoutubeを利用したオンライン落語配信「テレワーク落語会」を開催し、この活動が評価され2020年12月には第15回繁昌亭大賞特別賞を受賞した桂紋四郎。自身のYouTube『おはよう落語』をほぼ毎朝配信し続ける。いつ寝てるの?と聞きたくなるくらいにエネルギッシュに活動する紋四郎さんは、古典落語の景清』を披露。噺の中で三味線や鳴り物を盛り込む“ハメモノ”を石崎さんがギターで演出するという斬新なシーンは歴史的な瞬間。これは見逃せない(しかも本番直前、紋四郎さんのアイディアで実現したと言う)!石崎ひゅーいさんと言えば2018年菅田将暉への提供曲のセルフカバー「さよならエレジー」を配信リリースするほか、「アズミ・ハルコは行方不明」や「そらのレストラン」といった映画に出演するなど、役者としても活躍中である。スペシャ寄席の為に用意したという石崎さんの渋くクールな浴衣姿にも注目したい。

桂紋四郎×石崎ひゅーい

そしてなんといっても神MC 樋口大喜の存在は絶大である。彼の心地よい声にクレバーかつ安定感抜群のMCパフォーマンス、実は彼こそがClubhouse寄席の中核を担っているといっても過言ではないほど、Clubhouse寄席のメンバーには欠かせない存在である。また今回の「スペシャ寄席」も樋口さんのアイディアによって開催が実現したという。

樋口大喜

パッションが落語界を、エンタメを盛り上げる

そんな『スペシャ寄席』、本来は6月に開催予定だったと言うが、緊急事態宣言により延期に、さらに会場も変更になったりと紆余曲折あった公演でもある。

落語や音楽の“エンタメ業界”だって幾度となく発令される“理不尽なルール”によって大きな打撃を被っている。それでもピンチをチャンスに、試練をバネにと、前を向いて挑み続ける彼らの姿からは並々ならぬ“落語愛(音楽愛)”と“情熱”を感じる。エンタメこそパッション、‟情熱”と“好き”が人を動かし感動を与えるのではないかと。私たちはそんな彼らの情熱に強く心を打たれ、勇気や希望をもらっているのだ。

『スペシャ寄席を今後も引き続き開催していきたい』と目をキラキラさせながら意気込む彼らから今後も一層目が離せないとともに、次回は是非ともライブ配信でなくこの感動を生で、肌で感じたいと強く願う。

歴史的な1日となった落語と音楽の融合イベントの模様はアーカイブにて7月25日(日)23:59まで配信中!(アーカイブ配信チケット7/25 21:00までご購入可能)こちらから→スペシャ寄席【振替公演】 | LIVEWIRE – 新しい音楽体験を、いま、ここで。

文/ごとうまき