【インタビュー】社会人とバンドの“二刀流”が届ける生活に根ざした極上のポップミュージック。

J-pop

少年キッズボウイが1st EP『もっと少年キッズボウイ』で提示する「音楽の楽しさ」の原点

2020年の結成以来、メンバー8人全員が社会人として働きながら、遊び心あふれる独自のサウンドを追求し続けている「今どき二刀流バンド」、少年キッズボウイ。2025年5月にシングル『キスをしようよ』でメジャーデビューを果たした彼らが、同年12月10日、待望のメジャー1st EP『もっと少年キッズボウイ』をリリースした。

音楽のみならず、ファッション、映画、漫画、お笑いといった多様なカルチャーを血肉化し、わんぱくにシャッフルして届ける彼ら。今回はメンバーを代表して、アキラ(Vo)、山岸(Gt/Leader)、きもす(Tp)の3名に、バンドの数珠つなぎな成り立ちから、最新作に込めたマニアックなこだわり、そして仕事と音楽を両立させる彼らならではの人生観について、たっぷりとお話を訊きました。

新宿の飲み屋から始まった「数珠つなぎ」の縁

――まずは結成のきっかけから。もともとは山岸さんと、コンポーザーのこーしくん(Vo)、ドラムのGBさんが旧知の仲だったそうですね。

山岸
そうですね。前のバンドからの繋がりがあって、そこからベースの服部が僕の大学のサークルの後輩だったりと、本当に「数珠つなぎ」で増えていきました。

きもす
僕の場合はちょっと特殊で。会社の友達の先輩がこーしくんだったという縁で、バンドがキーボードを募集していると聞いて。僕はピアノを習っていたので「いけるかな」と思ってスタジオに行ったら、なぜか手元にトランペットがあって……。

山岸
 そうそう(笑)。本人はピアノのつもりで来たのかもしれないけど、僕らからしたら「トランペット持ってるじゃん!」ってなって。最初の頃はライブでもピアノを弾く場面があったんですけど、今や完全にトランペット専任ですね。

アキラ
私は、前任のボーカルの方が急にいなくなっちゃって、ライブが間近に迫っているというタイミングで山岸から誘われました。山岸とは大学のサークルの同期だったので。

山岸
 当時、新宿の飲み屋でたまたま意気投合して入った初期メンバーがいたんですけど、事情があって抜けてしまって。「誰かいないか」となった時に、やっぱりステージに立った時のスター性がずっと印象に残っていたアキラに声をかけました。

――8人という大所帯ですが、お互いの印象はどうですか?

きもす
アキラはとにかく明るい。でも、関わっていくうちに「この人、結構尖ってるな」と思うようになりました(笑)。見た目は可愛らしい雰囲気ですけど、めちゃめちゃ反骨精神が旺盛なんですよ。そこが表現者としてかっこいい。

アキラ
きもすくんは、メンバーの中で一番の不思議ちゃん。でも、一番の常識人でもあります。トランペットに関しては、毎回違うフレーズを吹いてきたりして、その場のテンションでかっこいい味を出してくれる。ライブ中、隣で吹いていて「そんなの弾いてたっけ!?」って興奮させてくれる頼もしい存在です。。

きもす
ライブでのフレーズは、ほぼ思いつきですね(笑)。その場にしか出せない空気があると思っているので。逆に山岸は、音楽そのものへの愛はもちろん、それに付随する媒体やカルチャーすべてを咀嚼して自分の人生観や哲学に昇華している。そういう生き方に憧れます。

アキラ
山岸は本当にしっかり者。リーダーとしてスケジュール調整から練習の管理までこなしつつ、自分の曲作りにも並々ならぬ熱量を注いでいる。私が家で料理や洗濯をして一日が終わってしまう間も、彼はカルチャーの深掘りを続けている。そのバイタリティは本当に尊敬しますね。

理論と遊び心が交差する楽曲群

――最新EP『もっと少年キッズボウイ』は、メジャーデビュー後の勢いをそのままパッケージしたような、カラフルな作品です。山岸さんはM3『ムーンライト・レビュー』とM4『下北沢ターミナル』を手掛けていますが、制作の背景を教えてください。

山岸
 『下北沢ターミナル』は、僕らがライブでも生活でも深く関わっている街・下北沢が舞台です。あの街は今、駅の工事や再開発でどんどん景色が変わっている。その変化の中で、取り残される自分や、過ぎ去った思い出を肯定したいという思いがありました。

きもす
この曲、トランペットのアレンジにはかなりこだわりました。こーしくんから「バロック音楽の要素を入れてみよう」という提案があって。バッハのような、かつての宮廷音楽のような気品を出すために「ピッコロトランペット」という小さな楽器をこの曲のためだけに買ったんです。

アキラ
 あの「ハロー、ハロー」というフレーズの後にトランペットが重なる瞬間、人生が動き出すようなドラマティックさがありますよね。MVも加藤マニ監督のアイディアで、プラレールを使った一発撮りに挑んだんですけど、列車の振動で線路がズレたりして……結局、朝から晩までかかってOKテイクは1回だけ。あの「エモさ」は、その苦労の賜物かもしれません。

――『ムーンライト・レビュー』は、渋谷系や90年代ポップスへのリスペクトを感じます。

山岸
  もともとは親友と散歩していた時期のことを思い出して書いた私的な曲なんですけど、これを普遍的なラブソングにしたいなと。メロディの端々に、僕たちが好きな「昔の音楽」の匂いを忍ばせています。実はサビのメロディが、自分では意識していなかったんですけど、デモを送ったら「これ、JUDY AND MARYの『LOVER SOUL』のような懐かしさがあるよね」って言われて(笑)。結局、それが一番しっくりきたので採用しました。

アキラ
私はこの曲のレコーディングが本当に楽しかった。ピチカート・ファイヴの野宮真貴さんのような、軽やかで少しお洒落なボーカルに憧れがあったので、それをキーワードにして歌いました。タイトルも実は『スウィート・ソウル・レヴュー』へのオマージュなんです。

――さらに今作には、初期の人気曲『海を見に行く』の再録も収録されています。

アキラ
この曲は結成当初からずっとライブでやり続けて、アレンジがどんどん進化していった曲です。前の音源は私のボーカルではなかったので、今の私たちの「ポップに振り切る」という方向性を反映させた、よりフレッシュで軽やかな仕上がりになったと思います。

きもす
『ムーンライト・レビュー』もそうですけど、最近の山岸の曲はすごく「理論」が詰まっているんですよ。これまでは世界観を前面に出す感じだったのが、コード進行一つとっても繊細で複雑になっていて。プレイヤーとしても刺激されるし、「やる気にさせられる」楽曲たちですね。

「電車の運転士」から管理職まで。社会人としての矜持

――少年キッズボウイの大きな特徴は、8人全員が社会人であることです。仕事と音楽、このバランスはどう保っているのでしょう?

山岸
  僕はシステムエンジニア、アキラは映画館勤務、きもすは鉄道会社。他にもアパレル店員がいたり、みんな職業はバラバラです。

アキラ
私はずっと映画館で働いています。メンバーも管理職になったり、仕事もそれなりに責任のある立場になってきているんですよね。

きもす
 僕は電車の運転士をしています。常に緊張感のある現場なので、その反動というか、ライブの時の「爆発力」はすごいですよ。仕事上がりにそのままライブハウスへ駆け込むメンバーも多いですし。

山岸
  むしろ「仕事だけ、音楽だけ」どちらかだけだったら、きっと行き詰まっていたと思うんです。仕事とは別の居場所があって、そこで思い切り音を鳴らして、いろんなカルチャーについて語り合える仲間がいる。だからこそストレスも溜まらないし、両方の活動に良い影響を与え合えている気がします。

きもす
そうですね。平日の業務があるからこそ、週末にステージで音を出す瞬間の「解放感」が何物にも代えがたい。そのエネルギーが、僕たちの音楽の「わんぱくさ」に繋がっているのかもしれません。

 展望は「フジロック」と、あらゆるカルチャーが混ざり合う場所作り

――2026年2月には名古屋と東京でのツアーが決定しています。ライブへの意気込みを教えてください。

アキラ
私は一番前でお客さんの顔を見るので、ライブは最高のコミュニケーションの場だと思っています。自分たちの音楽がどう届いているか、視覚的にわかるのが楽しみでもあり、怖くもあり……でも、やっぱり一緒に踊りたいですね。

きもす
僕にとってのステージは「実験室」。マイルス・デイヴィスじゃないですけど(笑)、本番の空気の中で偶然生まれる新しい試みを大事にしたい。ステージとフロアの境界をなくして、みんなで体を揺らす楽しさを共有したいです。

――最後に、今後の野望を聞かせてください。

山岸
 フジロックへの出演! フェスという開放的な場所で僕らの音を鳴らすのが夢です。あとは、社会人らしい視点で言うと、アニメや映画、CMソングなどとのタイアップという形でもっと僕らの曲を届けたいですね。

アキラ
 私たちは音楽だけじゃなく、ファッションやお笑い、映画も大好き。だからいつか、ジャンルを問わずいろんなカルチャーが混ざり合ったイベントを主催したいです。アパレルチームとコラボしたり、お笑い芸人さんを呼んだり。

山岸
 社会人がやっているバンドだからこそ、いい意味で「敷居の低い」場所でありたい。でも、その中には深いカルチャーが詰まっている。そんな、いろんな人が集まれる「カルチャーの交差点」のようなバンドを目指して、2026年も突き進んでいきたいと思っています。

【リリース情報】

メジャー1st EP 『もっと少年キッズボウイ』

2025.12.10 ON SALE

* キスをしようよ(メジャーデビューシングル)

* スペランカー

* ムーンライト・レビュー

* 下北沢ターミナル

* 海を見に行く (再録)

* エバーグリーン

【ツアー情報】

「少年キッズボウイのお楽しみ会〜もっと少年キッズボウイ東名阪行脚〜ぜってぇ来てくれよな!」

* 2026/2/07(土) 名古屋・新栄CLUB ROCK’N’ROLL

OPEN 18:00 / START 18:30

* 2026/2/20(金) 東京・下北沢シャングリラ (One Man Live)

OPEN 19:30 / START 20:00

インタビュー・文・撮影:ごとうまき