【西川貴教&柿澤勇人インタビュー】デューイ役は一度たりとも気を抜くことができない。子ども達のエネルギーと才能に救われている。

インタビュー

 売れないミュージシャンが名門進学校の臨時教師になりすまし、生徒達と共にバンドを組む青春コメディー、ミュージカル『スクールオブロック』が2023年9月23日(土・祝)〜10月1日(日)まで大阪・新歌舞伎座にて上演される。

 上演に先駆け、7月4日(火)にはメインキャスト全員が出席したプレライブイベント(歌唱&トーク)が開催された。ロックを愛する破天荒なバンドマン、デューイ・フィン役の西川貴教、柿澤勇人が率いるビートチーム(12名)とコードチーム(12名)によってそれぞれ楽曲が披露され、子ども達の生演奏に乗せて西川&柿澤の力強い歌声が届けられた。また、名門進学校の校長ロザリー・マリンズ役の濱田めぐみが歌う劇中のナンバーも披露され、大盛況。ますます公演が待ち遠しくなるようなイベントとなった。

  今回は、プレライブイベント後に西川貴教さんと柿澤勇人さんが、オンライン取材会に出席。公演に向けての意気込みや心境を語ってもらった(取材時はお稽古が始まって間もない時期)。

── お稽古に入られて2週間とのこと。24人の子ども達のお稽古での様子はどのような感じでしょうか?

柿澤
楽器の演奏が本当に素晴らしいです。ただ生徒達はまだ芝居には慣れてないこともあり、導線や台詞のタイミングなど基本的なことから伝えるようにしています。それこそ最初は全く言うことを聞いてくれなくて、演出の鴻上さんはすでに50回はブチギレていますね(笑)。

西川
学校という設定なので、稽古場にホワイトボードも置いてあって、鴻上さんはホワイトボードで熱心に子ども達に説明されています。大きな円を二つ書いて「冷静と情熱の間に芝居があるんだ!」と。僕も大変勉強になりましたね。

西川
子ども達の演奏を聴いたのも、アンサンブルも今日(7月4日)行われたプレイベント(歌唱&トーク)が初めてで、ほぼ、ぶっつけ本番でした。彼らは大規模オーディションを勝ち抜いた新進気鋭の素晴らしいキャストなので、子どもとはいえ、マインドは我々と同じなんですよね。逆に舐められないようにしなければ(笑)と、奮い立たされます。

── デューイ役について、お聞きします。デューイ役は、1公演での消費カロリーが凄まじいと聞きましたが……。

柿澤
僕たちもまだ正直全貌が見えていないのですが、この間全幕の本読みをした時には目眩がしたほどです。どこをとっても気を抜くことができません。これ出来るのかなって、ちょっと不安にもなりました。2公演するとなると倒れちゃうんじゃないかって(笑)、一瞬たりとも油断できません。

西川
僕よりも圧倒的に舞台経験のある柿澤くんが「不安だ」ということに驚いています。シーンによっては、ちょっと間があってもいいと思っていて、それぞれがそれぞれの感情の動きを待って……という芝居をしていると、あっという間に1幕だけで120分が過ぎてしまう。だから一瞬で心を動かしていかなければならないんですよね。しかも12人分の心を動かさないといけないので、そこが大変そうだなと思っています。

──そして子ども達のエネルギーも凄いのでしょうね。

柿澤
僕、子どもが大好きなんです。ただ、24人いると疲れる時もあります(笑)。

西川
その24人の中でも選りすぐりの、さらに濃いキャラの子がいてね。その子が6人分ぐらいの存在感を発揮しているんだよね(笑)。

柿澤
あの子達の吸収力は凄まじいですよ。初めは自分の得意なこと、好きなこと、習い事の延長線上のような感覚の子もいましたが、すでにお稽古が始まって2週間で変わりつつある子もいっぱいいます。僕も子どもの頃にピアノを習っていましたが、なかなか好きになれずにすぐに辞めてしまって。ピアノ担当の子達を見ているとこれが才能か!と痛感しますね。

── 鴻上さんはどのような演出をされますか?

西川
鴻上さん演出の作品や、ホリプロミュージカルに出演させていただくのは初めてです。鴻上さんに対して、“厳しい演出家”という印象を勝手に抱いていましたが、違いました。僕たちの様々な意見を吸い上げて下さるんです。今後お稽古が進むにつれ、もっと厳しい面も出てくるのでしょうが、いろいろと勉強させてもらえたらと思っています。

柿澤
確かに鴻上さんはいろいろなトライをさせてくださいます。2チームあるので最低4回はシーンの稽古をしますが、動きやセリフは状況に合わせて変えてもいいとのことで。間口を広くして一緒に探って下さるんです。

──『スクールオブロック』の“ロック”には、ロックンロール以外にいろんな意味合いが込められていると思います。お二人が思うこの作品におけるロックとは?

柿澤
この作品を通して伝えたいことだとか影響を与えたいとかいう以前に、僕の場合はやること、覚えることが多すぎてそこまで考える余裕がない気がします。きっと汗だくになってクッタクタになって、終演後は倒れて終わる気がしています(笑)。とにかく一生懸命に、役を全うするしかないと思っています。

西川
ロックは、現代のミュージックシーンにおいて、ノスタルジックなものという印象がありますし、ロック、ロックと言って騒ぐ時代ではなくなりました。ですがセリフにもあるように、抗ったり、ぶつかったりすることって、ロックの象徴でもあるのかなって。僕がやっている「イナズマロックフェス」だってアイドルもいれば、アニメをルーツとしたアーティストも出たりして、これを“闇鍋フェス”と呼んでいますが(笑)。だけどこういった音楽フェスに出てくれること自体に、信念や思いがあるし、その思いがロックだって思うんです。それに、大人がこんなに夢中になることってそう多くはありません。大汗かいて夢中になって、必死になる瞬間って、カッコ悪いからあまり見せたくはないけれど、それでもこのカンパニーで最高の時間を過ごせることが、人生の中でのロックな瞬間なのかなと思います。

──最後にメッセージをお願いします。

柿澤
“果たして出来るのか!?”という怖さもありますが、稽古をしていて思うのは、子ども達がとにかく疲れ知らずだということ。帰りたい、なんて一切言わないどころか、もっとやりたい!もっと自分達にやらせてほしい!というやる気に満ち溢れています。そんな彼らに僕たちが引き上げてもらっているような感覚なんですよね。自分も負けてられないという気持ちになりますし、彼らに救われている部分があります。この公演はある意味で、彼らにおんぶに抱っこを期待していたりもします(笑)。

西川
そのうち楽しくなる瞬間があるかもしれないよね。質量を高める作業が貫通して一本になった時はすごく楽しくなるのだろうなと思っています。そして、大規模オーディションの中から選ばれた将来を嘱望される24人の子ども達は、やっぱり凄いです!!こういう子達がもっと増えたら、日本は面白くなるし、未来が明るくなりますよね。そして、この作品を観に来てくれた子ども達も同じような気持ちになってくれると嬉しいです。特に、コロナ禍ではマスク生活で、クラスメイトや友達の顔がまともに分からないまま卒業してしまった、という子ども達もいると聞きます。この作品を観て、少しでも心を解き放ってもらえると嬉しいです。

公演概要・チケット

ミュージカル『スクールオブロック』
公演期間 2023年9月23日(土・祝)~10月1日(日)
料金 (税込)
S席(1・2階) 13,500円
A席(3階) 9,500円
特別席 15,000円

チケットミュージカル『スクールオブロック』 ○一般発売 | 新歌舞伎座ネットチケット[演劇 ミュージカル・ショーのチケット購入・予約] (pia.jp)

新歌舞伎座テレホン予約センター:06-7730-2222(午前10時~午後4時)

撮影:荒川潤

取材・文:ごとうまき