【新歌舞伎座・スペシャルな3日間】新作能「聖徳太子」劇場初演!大槻文藏(人間国宝)、東儀秀樹インタビュー!!

大槻文藏(左)、東儀秀樹(右)
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各ジャンルのトップ達の化学反応が生み出す“和の心”に酔いしれる至高の3日間

8月6日(土)〜8月8日(月)の3日間、大阪・新歌舞伎座にて「スペシャルサマーステージ」が開催される。雅楽、ヴァイオリン、バンドネオン、さらに能楽、舞楽…、豪華な出演者が化学反応をおこしながら感動を解き放つ――。新歌舞伎座だからこそ成し遂げられる魅惑のステージをお届け。公演を前に、出演者の雅楽師・東儀秀樹、人間国宝の大槻文藏を取材。公演への意気込みや、本公演では劇場初演となる新作能「聖徳太子」などについても語ってもらった。

8月6日(土)「東儀秀樹プレミアムステージ時空を超えた響き

新歌舞伎座としても新たな試みとなる本公演、初日の8月6日(土)は雅楽師・東儀秀樹による「東儀秀樹プレミアムステージ―時空を超えた響き―」がおくられる。第一部に奈良時代から1300年にわたり雅楽を世襲してきた雅楽・東儀家に伝わる雅楽の世界をたっぷりと楽しめる内容に。第二部には作曲やプロデュースなど幅広く活躍するヴァイオリニスト・川井郁子と東儀秀樹によるこの日限りの唯一無二のパフォーマンスが繰り広げられる。

その人の好きな入り口から古典、伝統文化を知ってもらえたら

――本公演に対する意気込みなどお願いします。

東儀
デビューして25年、雅楽の道はまだまだ。とはいえ、25年前と比べると世間に認知されてきた。昔は日本の伝統文化と言えば歌舞伎が取り上げられ、雅楽が出ることが少なかった。音楽の教科書にも雅楽は載っていましたが、そもそも先生が雅楽を知らないから好きや嫌いと言った感情が乗らないし伝えようがないんです。文化を知るためには生で聴いて観て感じること、これに勝るものはないんですよね。僕は最近はバラエティー番組にも出演していますが、とても効果的なんです。雅楽に興味のなかった若い子達が“笑い”から入り、篳篥(ひちりき)に興味を持ってくれる。日本の文化を知るきっかけの入り口は一つでなくていいと再認識しています。

東儀秀樹の長男・東儀典親(のりちか)も3日間続けて出演する。篳篥、ギター、歌のほかに作曲も手がけるなど、豊かな才能を発揮。2019年9月仁和寺音舞台の初舞台から数々のステージ、テレビなどに出演している。

東儀典親

――新歌舞伎座での親子共演、長男・典親さんについて

東儀
息子典親と出演する機会が多いのですが、全てにワクワクし、表現することに喜びを感じてくれている。雅楽師の家に生まれるというだけで、周りからは厳しい環境で育ったと思われているけど、僕自身は全く感じていないんです。雅楽をただだだ楽しんでいる。音楽とはジャンルにとらわれずに楽しむことだと思うんです。それが我が家の日常で、息子は僕が楽しんでいる背中を見て育っている。音楽って本来はそういうことなんだと思います。YouTubeやInstagramも日常の楽しい瞬間を切り取ってアップしています。私が楽しむ姿を見せることで自然と“継承”に繋がっているのだと思います。

長男とのセッション動画を頻繁にアップしているYouTubeはコロナ禍に始めた。プロ顔負けの編集は東儀自身で行っているという。

8月7日(日)「川井郁子スペシャルコンサート華麗なる真夏の夢

2日目は様々な分野とのコラボレーションでも活躍する川井郁子による「川井郁子スペシャルコンサートー華麗なる真夏の夢ー」

第一部に弦楽アンサンブルとともに幅広いジャンルの名曲を愛器ストラディヴァリウスで艶やかに奏でられる。第二部に東儀秀樹とバンドネオンの三浦一馬が出演。

川井郁子

三浦一馬(C)Toshinori Iida

川井
素晴らしいアーティストお二人との初めてのコンサート、とても楽しみです。東儀さんの篳篥の深い音色、その唯一無二の伝統の音で自由自在に国境やジャンルを超えて奏でられる音楽にはいつも新鮮な感動を覚えます。今回初共演の三浦一馬さんのバンドネオンには、内省的な熱い情熱と研ぎ澄まされた知性を感じます。大好きなタンゴやピアソラを初めてご一緒できるのが楽しみです。それぞれの音色と感性が出会った時に生まれる化学反応に今からワクワクしています。

――東儀さんから見た川井さんの印象は?

東儀
川井さんがデビューしてまもない頃にリプトンのCMで共演して以来、ツアーなどでご一緒させてもらっています。彼女の奏でるヴァイオリンは良い意味で男っぽさに情熱が加わり力強い。もちろん川井さんのビジュアルも情熱的です。川井さんって普段はボーイッシュでとってもかっこいいけど、一方でステージ上ではドレッシーで女性的。いつかはステージ上でボーイッシュな川井さんも見てみたい。

共演するバンドネオン奏者・三浦一馬は2008年イタリアで開催された第33回国際ピアソラ・コンクールで日本人初・史上最年少で準優勝を果たした驚くべき才能の持ち主。2021年大河ドラマ「青天を衝け」で大河紀行の演奏を担当するなど。若手実力派バンドネオン奏者として注目されている。

8月8日(月)「雅楽と能楽未来へつなぐ和の心

8月8日(月)は「雅楽と能楽―未来へつなぐ和の心―」。雅楽と能楽、それぞれ次の世代へ受け継がれる舞台を上演する。前半は東儀秀樹と息子・東儀典親(のりちか)による舞楽「登天楽」。演劇評論家・村上湛による解説「雅楽と能楽の関係」、東儀秀樹と村上湛の対談が行われる。後半には2021年、聖徳太子没後1400年を記念して作られた新作能「聖徳太子」がおくられ、劇場初演となる記念すべき日となる。

新作能「聖徳太子」(C)後藤鐵郎

聖徳太子の精神に触れる

聖徳太子と言えば飛鳥時代の貴族であり政治家。様々な学説や伝説がある。昨年には、聖徳太子と生母の穴穂部間人皇女(あなほべのはしひとのひめみこ)、妃(きさき)の膳部大郎女(かしわべのおおいらつめ)が合葬された叡福寺(大阪府太子町)で、没後1400年の御恩忌大法会が行われた。その一環として新作能「聖徳太子」が上演され、一般公開としては今回初めて、大槻さんも上演に対して熱い思いがあるという。

――新歌舞伎座での上演、意気込みは?

大槻
昨年叡福寺から依頼を受け、聖徳太子没後1400年で記念に残るものを…と、脚本を武田真砂子先生にお願いし、新作能をつくらせていただきました。疫病によって命を落としたと言われており、昨年特に大変だったコロナ禍と重なる部分があります。新歌舞伎座で上演させていただくことをとても楽しみにしております。

東儀
僕の先祖が聖徳太子の参謀だった秦河勝(はたのかわかつ)。わが家では正月に必ず聖徳太子の掛け軸をかけて演奏する習わしがあり、とっても楽しみにしてます。ジャンルの違ったものを同時に上演することはとても効果的。能楽と雅楽によって互いの理解度が深まり、文化の違いや価値観を相互に理解できる一日になると思っています。

――“伝承”について、大切にしていることは?

大槻
伝承は途絶えると困る、繋いでいくことが大事なんですよね。役者としては身体作りや基礎などの技術を伝えていくことが大事だと思っています。

東儀
形や表現方法については時間をかければ誰でもできると思っていて、雅楽の世界や他の世界でも、そこの血筋でない人間が伝承しています。1300年前から続く家に生まれた僕は、いつも目に見えない価値観や“血”を身体の中で感じています。息子が生まれた時によく“後継者ができて良かったですね”と言われましたが、僕は息子に雅楽師になりなさいとは、一度も言ったことがないんです。たった一度の人生をおもいっきり好きなように生きてほしいし、伝承に翻弄されて欲しくない。それに途絶えるという心配も全くありません。1000年以上続いている雅楽の歴史の中で、僕や息子の存在はわずかな‟点”でしかないんです。たとえば息子が野球選手になったとしても、“雅楽の血が流れている”という価値観をもっていればそれが伝承だと思っています。

本公演のテーマである“和の心”、私たち日本人の文化とルーツを改めて知る絶好の機会だ。そして日本人として知るべく教養ではないだろうか。東儀さんが言うように、何千年と続く雅楽や能楽からすると今生きている私たちは点でしかない。ただし、その点が幾つも連なると線になり、それが未来に伝承されていく。過去から現在、現在から未来へ――。他では決して見ることのできない特別な3日間、是非劇場で体感してほしい。

公演概要・チケット

Special Summer Stage 1
東儀秀樹プレミアムステージ -時空を超えた響き-
公演期間 2022年8月6日(土) 17:00開演
料金 (税込)
S席(1・2階) 9,000円
A席(3階) 5,000円
特別席 10,000円
※8/6・8/7 2DAY通し券あり

チケット:東儀秀樹プレミアムステージ -時空を超えた響き- ○一般発売 | 新歌舞伎座ネットチケット[クラシック 器楽・室内楽のチケット購入・予約] (pia.jp)

Special Summer Stage 2
川井郁子スペシャルコンサート -華麗なる真夏の夢-
公演期間 2022年8月7日(日) 16:00開演
料金 (税込)
S席(1・2階) 9,000円
A席(3階) 5,000円
特別席 10,000円
※8/6・8/7 2DAY通し券あり

チケット:川井郁子スペシャルコンサート -華麗なる真夏の夢- ○一般発売 | 新歌舞伎座ネットチケット[クラシック 器楽・室内楽のチケット購入・予約] (pia.jp)

Special Summer Stage 3
雅楽と能楽 ー未来へつなぐ和の心ー
公演期間 2022年8月8日(月) 18:00開演
料金 (税込)
1階席 9,000円
2階席 6,000円
3階席 3,000円
特別席 10,000円

チケット:雅楽と能楽 -未来へつなぐ悠久の心- ○一般発売 | 新歌舞伎座ネットチケット[演劇 歌舞伎・古典芸能のチケット購入・予約] (pia.jp)

電話:06-7730-2222(午前10時~午後4時)

 

取材・文/ごとうまき