【津吹みゆインタビュー】歌い手として、演歌をベースにいろんなジャンルの曲にも挑戦したい

アーティスト

“どんと響く!直球ボイス!”で2015年にデビューしてから歌手生活9年目を迎えた津吹みゆ。2023年6月14日にリリースされた『郡上しぐれて』は岐阜県の郡上市で毎年開催される郡上踊りをテーマに、一途に男性を待ち続ける切ない女心をしっとりと歌った悲恋歌。今作では新たな歌い方にも挑戦したという。『郡上しぐれて』や母への想い、11月3日にフランス・パリのマドレーヌ寺院で開かれたコンサートのこと(取材時はコンサート前)など、沢山お話を聞きました。穏やかで優しい雰囲気を纏う津吹さんの意外な一面も知ることができたインタビューです。記事の最後には本人からのコメント動画も♪

『郡上しぐれて』で一つ成長

── 『郡上しぐれて』を歌うことで自身や周りに何か変化はありましたか?

津吹
 女性から「歌っています」と声をかけていただく機会が増えました。カラオケ大会やお教室で課題曲にして歌ってくださっているみたいで、特に同性の方から言っていただけるのは嬉しいですよね。

──女心を描いた歌詞に多くの女性が共感するのでしょうね。

津吹
 私も、歌詞にとても共感しました。主人公の苦しみやもどかしさにも思いを馳せて歌っています。歌詞も大人っぽくしっとりとしたメロディーで、このような曲を歌うのは今回が初めてなんです。これまでは“ドーンと響く直球ボイス”で張りあげるような歌い方が多かったのですが、今回のように声を張らずにグッと堪える歌い方は初めて。私にとっての挑戦曲となりました。

── 『壇ノ浦恋歌』『おんなの嵯峨野路』に続く“情念三部作”とのことで今回も女の情念がしっかりと込められています(笑)。

津吹
 三部作ともそれぞれ違ったタイプの女性が主人公です。『壇ノ浦恋歌』はとてもカッコ良く激しくて、命懸けの恋をする強い女性をイメージしました。若い世代の女性にも好評だった曲です。『おんなの嵯峨野路』は2年間恋人を待ち続けている辛抱強い女性が主人公。そして今作『郡上しぐれて』の女性はしっとりとした控えめな女性だけど、内に秘めた情念や燃える強い心を大切に歌っています。今回は特に情念を表現するのに苦労しました。レコーディングでは、“郡上おどりの 下駄の音″の部分がリズムが変わるので、この部分の間の取り方、情感を出すのも難しかったですね。

郡上おどりを体験、現地に行くことで内面も変化

── 舞台となった岐阜県郡上市には2回足を運ばれているとのことですね。

津吹
 1回目は春、ゴールデンウィークの初日に、2日前に思い立って行きました。歌詞に出てくる場所やモノのことはできる限り勉強したいと思い、郡上踊りのレッスンDVDを買って観ました。そうすると夏も行きたくなって。本当は8月13日〜16日に開催される徹夜おどりに行きたかったのですが、台風が重なり断念、日を改めて行きました。やっぱりDVDで勉強していたものとは間の取り方なども違っていて、現地に行かないと分からない部分もあるのだと痛感しました。そして現地の人と一緒に踊れたのは良い思い出ですね。

── 実際に行くことで歌に対する気持ちも変化しましたか?

津吹
 表面的にはそんなに変化はないかもしれませんが、内面的には全く違います。行ってきたというだけで、真実味が湧く。歌っていると長良川の景色や下駄の音が頭に浮かびます。下駄は、郡上八幡に着いてすぐに購入して音を確かめました。

── すごい!徹底されていますね。性格も徹底してやるタイプでしょうか?

津吹
 これ!ということに対しては意外と徹底して突き進めるタイプかもしれません。のほほんとしているので意外だと言われますが(笑)。

歌えることの喜びを噛み締めて

── カプリング曲『母子草』の歌詞にもグッときます。曲調もまた違いますが、この歌はどのような気持ちで歌っていますか?

津吹
 春の七草のごぎょう(御形)の別名が母子草で、花言葉が「無償の愛」。母への思いを綴った一曲なので、優しい気持ちで歌うようにしています。私の両親はまだ元気ですが、やはり母は特別。こういった母への想いが込められた歌を歌うと泣いちゃうだろうと思い、こういう曲を歌うのを避けていました。いざ歌うと「歌を伝えないと!」という使命があるからでしょうか、意外と泣かずに歌えています。

── 演歌好きのお母さまの影響で、津吹さんも演歌を歌うようになったんですよね。

津吹
 音楽療法士の母が歌好きのメンバーと慰問活動で老人ホームなどを回っていたんですが、そこによく連れて行ってもらっていました。そんな母の姿を見て、私も昭和の名曲『リンゴの唄』『青い山脈』などを歌うと皆さん喜んでくださって。そこから歌の魅力を知りました。母が音楽の活動に携わっていなかったり、演歌を聴いていなかったら今の私はいないと思います。

── デビューから9年目、振り返っていかがですか?

津吹
 コロナ禍を経て自分の気持ちが大きく変化しました。それまでは立ち止まらずに走り続けていたように思います。それがコロナ禍でピッタと止まってしまい、お仕事ができなくなりました。そこから、歌うこと、自分の存在意義などについてゆっくりと考え、見つめ直す時間ができました。コロナが少しずつ落ち着いたいま、自分がこうして歌えることの喜びを噛み締めています。歌えることは当たり前じゃないと。目の前の一つ一つを大切にしていきたいです。

初海外公演に心躍る

── 11月3日にはフランス・パリのマドレーヌ寺院で開かれる、ユネスコ平和芸術家・城之内ミサさんによる『世界遺産トーチランコンサート』にゲスト出演されるとのこと。

津吹
 城之内さん作曲の『もう一度あいたいビューティフルプレイス』を英語とラテン語で歌います。勉強が嫌いだったので英語もラテン語も覚えるのに不安しかありませんでしたが、何度も聞いてバッチリ覚えました。こうしてクラシック曲を歌うのも初めてだし、海外に行くのも今回が初めてです。

── 昨年10月には初めての時代劇に挑戦され、同じレコード会社の木村徹二さんと共にラジオにも出演されています。歌以外のお仕事を通して新しい発見などありましたか?

津吹
思っている以上に私は抜けているんだと(笑)。ラジオ大阪『土曜クラウン劇場 みゆ×てつ』では、私がボケると、すぐに徹さんが突っ込みを入れてくださる。徹さんと一緒にさせていただいてから自分の抜けている部分がバレてしまいましたが(笑)、徹さんは私の良い部分を引き出してくださいます。それに番組のディレクターさんも優しくて、とっても楽しいんです。

── 最後にファンの皆さんにメッセージをお願いします!

津吹
 いつも応援していただき、本当にありがとうございます。デビュー前から四方先生に「演歌歌手だけど、常にいろんなジャンルを聴いて勉強しなさい。」と教えていただいています。それを形にしてお届けすることができなかったのですが、今回城之内ミサさんにきっかけを与えてもらいました。これを機にいろんなことに挑戦していきたいですし、今後は演歌歌手をベースに1人の歌い手として、いろんなジャンルの楽曲にチャレンジしていきたいと思っています。そして、「そんな みゆちゃんも良いね!」と言ってもらえるように、人としても成長していけるよう研鑽を積んでいきたいです。これからも応援よろしくお願いいたします!

インタビュー・文・撮影:ごとうまき