SNSなどで切なすぎると話題を呼んだ小坂流加の原作小説を「新聞記者」「ヤクザと家族TheFamily」の藤井道人監督がメガホンを、「8年越しの花嫁 奇跡の実話」の岡田惠和と「凛 りん」の渡邉真子が脚本を手がけた号泣必至の感動作『余命10年』が3月4日から全国劇場で公開、大ヒットを記録している。
作品での心理描写をより豊かにするため四季の風景を実際に映し出そうと、邦画実写では異例の撮影に1年かけたという本作からは、日本の四季折々の美しさ、圧倒的な映像美が味わえると共に、藤井監督の熱意と確かな才能が感じられる。
あらすじ
20歳の茉莉(まつり)は数万人に一人という不治の病に冒され、余命10年を宣告され、恋も仕事も、生きることさえも執着しないようしていた。そんな中、地元の同窓会で和人と出会い恋におちることによって、茉莉の残りの人生が大きく変化する。
(C)2022映画「余命10年」製作委員会
レビュー
命のバトン、ビデオカメラとサクラ
数万人に1人という不治の病に冒され余命10年を宣告された女性の物語と聞くと、いかにも悲しくて、辛く、重いストーリーだと想像するだろう。もちろん切なくて悲しくて号泣。いや、嗚咽を伴うほである。ただし、その儚さの中にも圧倒的な美しさと優しさに包まれた作品でもある。死を意識しながらも前向きに、絶望の中にも希望を見出し生きようとする主人公の姿と彼女を愛し支える周囲の人々に心打たれる。
(C)2022映画「余命10年」製作委員会
(C)2022映画「余命10年」製作委員会
両親、姉、恋人、友人、上司、担当医、それぞれがそれぞれの立場に思いを重ねて“自分ならどうするか、どんな言葉をかけるか”と考えてしまう。そんな中での茉莉の親友を演じた奈緒の表情や、主治医を演じた田中哲司、母役の原日出子、父役の松重豊の演技が秀逸すぎて、何度彼らの演技に涙腺を刺激させられたことか。とりわけ姉役 黒木華の名演には圧倒される。ほか、ドライブ・マイ・カーの三浦透子や山中崇史、MEGUMIなども出演しているが、ちょっとしか出演しておらず、とにかく贅沢すぎる顔ぶれ。
(C)2022映画「余命10年」製作委員会
(C)2022映画「余命10年」製作委員会
カメラアングルの絶妙なバランス、臨場感ある桜吹雪、夏の海と澄み切った空、静かな雪景色…。
私たちの日常を美しく切り取り、四季折々の美しさを映し出し魅せてくれている。
大好きな藤井道人監督、大好きなRADWIMPSの歌、あぁ見てよかった。劇場ではかなりの確率の人々が涙を流し、あちらこちらから、ちょっとうるさい程の鼻をすする音が聞こえてきた。ハンカチは忘れぬように。
(C)2022映画「余命10年」製作委員会
(C)2022映画「余命10年」製作委員会
(C)2022映画「余命10年」製作委員会
余命10年
監督:藤井道人
原作:小坂流加
製作:高橋雅美 池田宏之 藤田浩幸 善木準二 小川悦司 細野義朗 佐藤政治
脚本:岡田惠和 渡邉真子
キャスト:小松菜奈、坂口健太郎、山田裕貴、奈緒、田中哲司、原日出子、黒木華、リリーフランキー、松重豊
製作:2022年製作/125分/G/日本
配給:ワーナー・ブラザース映画