【シングルファーザー役の山田孝之が新鮮】家族の成長の物語『ステップ』

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若くして妻を亡くし、男手ひとつで娘を育てるシングルファーザーと、母親を亡くし父と2人で人生を歩む娘の二人の10年間の足跡を描いた重松清の同名小説を映画化。

結婚3年目、30歳という若さで妻の朋子に先立たれた健一。妻の両親から1人娘の美紀を引き取ろうかと声をかけてもらうも、健一は妻と時間をともにした妻の気配が漂うこの家で、娘と天国にいる妻との新しい生活を始めることを決める。妻の一周忌後、娘の美紀と二人で歩む保育園から小学校卒業、子どもから少女に成長するまでの10年間、さまざまな壁にぶつかりながらも、周りの人に助けてもらいながら、亡き妻を思い、健一はゆっくりと歩みを進めていく。主演の山田孝之が自身初のシングルファーザー役を演じるほか、國村隼、余貴美子、広末涼子、伊藤沙莉、川栄李奈らが出演。「虹色デイズ」「大人ドロップ」の飯塚健がメガホンをとった。

この作品を観て泣けないわけがない

重松清の同名小説が原作とのことで、重松清と言えば親子愛について書かれた作品が多く毎回しっかり泣かせてくれる。これで泣けないわけがない!

この物語は保育園~小学校卒業までの美紀を保育園時代・小学校低学年・高学年と3人の子役が演じている。30歳~42歳までの健一を山田孝之が演じるが、少しずつ歳を重ねて出てくる白髪や体形の変化などの細かい描写がリアル。

2歳の頃の美紀

9~12歳の美紀を演じた田中里念ちゃん

そして親子のステップ、家族のステップ、”ステップマザ=継母 というように「ステップ」という題名には色んな意味が込められている。

またこの作品には悪い人が一人も出てこない。保育士、カフェのお姉さん、健一の会社の同僚、上司、義父母・・・みんな優しくて温かい。ハートウォーミングな作品なんです。

6歳~9歳の美紀を演じるのは白鳥玉季ちゃん

俳優陣の演技が神がかっている!

山田孝之さんの主演作を観たのは最近では「全裸監督」だったので、「全裸監督」とこの作品の山田孝之の違いと言ったら・・・(笑)本当にフツーのサラリーマンとフツーのお父さんを演じているんです。さらに日常の子育てシーンもめちゃくちゃリアルで(洗濯機回しながら寝落ちしているシーンとか)。やっぱ山田孝之、天才だわ!

義父役の國村隼さんの存在感は抜群

そして脇を固める名俳優陣達にも目が離せません。まず義父役の國村隼さんの演技には圧巻です。とくに病院で孫を抱きしめるシーンには館内で鼻をすする音があちらこちらから聞こえました。

そして保育園の美紀の担任のケロ先生を演じた伊藤沙莉さん、毎回彼女の演技力には圧倒されます。彼女の演じる保育士さんは、この物語での重要な役割ですね。

社会全体で子育てしていくことの重要性

世の中の多くは”シングルマザー”を取り上げ、”シングルファーザー”にはフォーカスされにくい。もちろん数的にもシングルマザーの割合が87%、シングルファーザー13%とシングルマザーが圧倒的に多いので当然っちゃ当然かもしれませんが。シングルファーザーの大変さ辛さもこの作品でわかるはず。とはいえ、この作品の主人公健一は周りの人に恵まれている。実際頼れる人が周りにいないと、もっと厳しく大変です。地域で、社会全体で子育てしていくことの必要性を感じられると思います。

一方で、”シングルファーザー”、”男手一つ”というフィルターも多少はかかっているかもしれません。乳幼児を抱える日本のワンオペ育児ママたちは、24時間365日休みなし。特にフルタイムで働くワーキングマザーはいくらパパが協力的だとしても、今の日本ではこれが日常であるということもお忘れなく。

子育て世代だけが共感し感動できるというわけでなく、全世代の人が楽しめる作品

劇中の義母が放つ言葉「思い通りに行かないのが人生よね」

どんな人にも、どんな家族にも「ステップ」がある。結婚しているとかしていないとか、子どもがいるいないとかは関係ない。健一と美紀、そしてこの親子を支える周りの人たちの10年の歩み、誰しもが持つ何かしらの記憶と重なり涙するのではないでしょうか。子育てを終えた人もあの頃こんなことがあったと懐かしくなるはずです。

観た人にはわかる。実はこの作品の中で一番気になる人。

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監督:飯塚健
キャスト: 山田孝之、國村隼、余貴美子、広末涼子、伊藤沙莉、川栄李奈
原作:重松清
製作:2020年製作/118分/G/日本
配給:エイベックス・ピクチャーズ
公式サイト:https://step-movie.jp/
KANSAIPRESS編集部から
二歳の美紀が小学生になり、少しずつ幼児から少女に変わっていく姿を、自分の娘と重ねて観てしまい、涙腺崩壊です。子育てっていくつかのステージがあって、乳幼児期が一番大変。だけど一番可愛くて、そして人間の基礎を作る上での一番大切な時期でもあって、大変けどその大変な時期もあっという間に過ぎるんですよね。親子の物語だけでなく、生死にまつわる普遍的なテーマの映画でした。

文/ごとうまき