【天海祐希×アダム・クーパー奇跡の競演!】「舞台は初心に帰れて、自分を知れる大切な場所」

インタビュー

 舞台『レイディマクベス』が2023年11月16日(木)〜27日(月)京都劇場にて上演される。本作はウィリアム・シェイクスピアの『マクベス』の登場人物のレイディマクベスに焦点をあて、新たに書き下ろしされた世界初演作。レイディマクベスを天海祐希が、マクベスをアダム・クーパーが演じるほか、鈴木保奈美や要潤、宮下今日子、吉川愛、栗原英雄といった豪華俳優陣が集結する!そして演出に、英国の新進気鋭の若手女性作家・ジュード・クリスチャンを迎えて、新たな『レイディマクベス』が生み出される。

上演に先立ち主演の天海祐希が取材会に出席。かねてより親交があったアダム・クーパーとの夢の共演についてや、本作の魅力、舞台への思いなどを語ってもらった。

アダム・クーパーとのポスター撮影時は緊張!

── アダム・クーパーさんと初共演とのこと。アダムさんとの共演を聞かされたときの最初の心境は?

天海
もう、大変驚きました。え、私! ?と。以前にアダム・クーパーさん主演のミュージカル「SINGIN’IN THE RAIN~雨に唄えば~」を観させて頂きましたが、アダムさんが舞台の中央に佇んでいる時にスポットタイトが集まるのですが、そのライトを全部吸収して、違う色にして客席に届けているように感じられ、舞台を観ながら号泣したんです。そして、また違う舞台で来日された時には、なんとアダムさんにサインをいただいて。そんな方とご一緒できるなんて夢みたいです。
 

天海
今回の『レディマクベス』におけるマクベスは、兵士として心身共に傷ついているという設定で、シェイクスピアのマクベスとは少し違っています。ですから、言葉で何かを表現するというより身体で表現するような役。私もマクベス役は誰がおやりになるのだろうかと思っていました。そんな時にアダムさんのお名前を聞いて、それはそれはびっくりしましたね。そして、台本を読み進めていくうちにマクベスはアダム・クーパーさんで正解なんだと。舞台を見て下さった方もなるほど、と納得してくださるかと思います。 
 

── アダム・クーパーさんとの共演で期待することや吸収したいことは?

天海
アダムさんも演出のウィル・タケットさんもイギリスの方なので、シェイクスピアのベースが日本人の私達とは違うんです。古い言葉、新しい言葉がどのように表現されるかが楽しみです。あとはアダムさんに最初のウォーミングアップを先頭きってしてもらえたら。そしたら身体の使い方も上手くなるのかなと思っています。アダムさんのお稽古中での佇まいや作品に向かう姿勢、演じる時の熱を全身で感じたいと思っています。
 

── アダム・クーパーさんとのポスター撮影の際はどんな感じでしたか?

天海
そこにいらっしゃるのに、本物じゃないような気がして……。これまでに何度かお目にかかっているのですが、恥ずかしくてまともに顔が見れませんでした。撮る時も緊張しましたね。ポスターの顔もちょっと緊張しています(笑)。 
 

マクベス夫人が作品になると聞いた時は、その切り口に驚いた。

──そんなアダム・クーパーさんと天海さんの魅力が掛け合わさることによって、どんな世界観が期待されますか?

天海
静かな作品と思いきや、内に秘めた熱さやエネルギーが溜まっていく作品だと思います。むしろ内側のエネルギーがしっかりしていないと伝えられない作品だと思います。これがアダムさんにしかできないことなのかと思います。 
 

── この作品に出会うまでのマクベス夫人のイメージは?

天海
舞台、映画、小説といろんなマクベスを観ましたが、マクベス夫人のことは、そこまで引っかかっていなかったんですよね。だからこういう切り口でマクベス夫人を作品にすると聞いた時には感激しました。今回はマクベス夫人には子どもがいる設定なので、物語の中の彼女の持つ顔が一つ増えています。マクベス夫人だと思って観にこられると少し違うのかもしれませんし、設定に感心していただけるのではないでしょうか。
 

── 世界初演とのことですが、ここに関してはどのようなお気持ちでしょうか?

天海
世界初演って聞くと恐ろしいし、緊張しますよね。だけど逆を言えば前例がないからこそ、私たちでやっていこうと抜け道を探りました。演出のウィル・タケットさんを目印にして、それぞれの役からどう見えて、どう思っているのか……。私たちキャスト皆で対話や議論を沢山して歩んでいこうねと、出演者の皆さんと話しています。比べられるのは怖いですからね。比べるものがないということを拠り所に頑張っていきます。 
 

詩的な言葉で丁寧に描かれている。

── 『レイディマクベス』は誰もが知るシェイクスピアの名舞台を視点や設定を変えて新作として描いていますが、台本を読まれた時の感想を教えて下さい。

天海
とても面白かったです。私もこれまでに映画や舞台で『マクベス』を拝見していますが、知っている上で観るともっと面白いですし、もちろん『マクベス』をご存知ない方もこの世界観を楽しんでいただけるのではないかと思います。シャイクスピアはずっと昔の作品ですが、生活の営みや人間関係、人の在り方、妬み、嫉み、恨み……そういったものは今も何も変わっていません。そして現代にも通ずる言葉で描かれながら、それでいて詩的な台詞で響きが美しいんです。覚えるのは大変だろうと覚悟はしているのですが、ワクワクする台本でした。 
 

天海
何か大きなスペクタクルが起こるというわけではありませんが、ある地点に到達していく人間の思いや状況が丁寧に描かれています。レディマクベスとしては駆け上がっていくつもりが、実際は駆け落ちているのではないかと……そういったギャップがとても面白いんです。景色が想像できるような言葉で台本が描かれているので、観てくださった方の景色が広がるようなお芝居ができたら……。
 

── 天海さんが演じられるレイディマクベスは悪妻というイメージが強い役柄です。レイディマクベスをどのように演じていこうと思われていますか?

天海
役を作り上げた時にどう見えたのかは気にしますが、こういう風に演じようといったのではありません。台本の中のレイディに誠実に向き合っていけたら。『レイディマクベス』におけるマクベス夫人に関しては“悪妻″という想像を始めから持っていなくてもいいのかなと思っています。レイディマクベスの思いや行動が劇中では丁寧に描かれているので、それを観た上で、悪妻だと思うのか、はたまた方向を間違えた人なのか、可哀想な人あるいは強い人と捉えるのか……、観てくださった方に感じてもらえたらと思います。 
 

── 改めて天海さんにとって舞台に立つことの意味、そして京都劇場の舞台に対しての思いを教えて下さい。

天海
元々舞台から出させて頂いているので、舞台は初心に戻る場所でもあって、自分の状態を知ることができます。例えば発声についてや、体力の低下を知ることができ、そしてそれを補うためにどうすれば良いのかと考えることができるんです。そのためにも必ず出ているジャンルです。そして私は京都で公演するのが初めてなので、とても楽しみにしています。海外の古典作品を京都で上演するってとても素敵じゃないですか。是非、京都劇場で『レイディマクベス』を観て、京都観光をしていってもらえたら。私ならこれをやりたいですね!
 

──最後にメッセージをお願いします。

天海
この作品は何年も前に立ち上がった企画で、コロナ禍でダメになったと思っていたものの、むくむくと立ち上がってこうして上演に向かうことを幸せに思います。きっとこの企画に力があったのでしょう。そして、私がアダム・クーパーさんと同じ舞台を作り、同じ板の上に乗っているというのは今後一生ないと思います。是非、劇場にいらして確かめて下さい。生で繰り広げる舞台を劇場で、みんなで楽しんでもらえると嬉しいです。 
 

取材・文・撮影:ごとうまき