『あの頃。』
2000年代初頭「ハロー!プロジェクト」のアイドルたちがブームを巻き起こし、中でもモーニング娘。を愛してやまない”モーヲタ”と呼ばれる人たちの当時のリアルな様子を、マネージャーやプロデューサー、ベーシストとして「神聖かまってちゃん」などのバンドや音楽ユニットにかかかわってきた劔樹人の自伝的コミックエッセイ「あの頃。男子かしまし物語」を松坂桃李 主演で実写映画化した。
監督には『愛がなんだ』『アイネクライネナハトムジーク』『his』などを手がけた今泉力哉監督、脚本には『南瓜とマヨネーズ』などで監督・脚本を手掛けてきた冨永昌敬。さらに音楽家の長谷川白紙が劇判を担当し、劔が夢中になった”あやや”こと松浦亜弥役にハロプロの山崎夢羽を起用している。
Contents
人生、いつも今が最高。
あらすじ
バンド活動をしながらバイトに明け暮れる日々を送っていた劔(つるぎ)。彼を心配した友人の佐伯から渡された松浦亜弥の「♡桃色片想い♡」のDVDを見て、劔は彼女の圧倒的なアイドルとしての輝きに魅せられあっという間にファンになった。すぐさま向かったCDショップ、ハロー!プロジェクトに彩られたコーナーで店員のナカウチが声を掛けてきた。ナカウチに手渡されたイベントのチラシ、そこから劔の青春ストーリーが始まった。ハロプロを愛してやまない彼らとの出会いにより、劔の仲間たちとのかけがえのない青春・中学10年生の日々が始まる。
夜や土日は仲間のイトウの部屋に集まり、ライブDVDを鑑賞したり、自分たちの推しについて語り合ったり、ハロプロの啓蒙活動という名目で大学の学園祭に参加、バンド活動までしたりと、ハロプロに全てを捧げる劔たち。
仲間たちとのバカバカしくも愛おしい時間がずっと続くと思っていた・・・・。しかし時は刻々と過ぎ、それぞれがハロプロに負けないほどの大切なモノを見つけ自分たちの人生を歩んでいくことになる。そんなある日、仲間のコイズミが癌になったと聞かされることに・・・。
見どころ
今泉力哉監督らしい優しい世界観で包み込む
今回も今泉力哉監督がやってくれた。これまでに恋愛ストーリーを多く手がけてきた今泉監督が、「仲間」をテーマに平成を彩ったハロプロとともに描くハートフルコメディ×青春もの。
今泉監督の手がける作品、世界観が筆者は好きで今作も楽しみにしていたが、脚本ともに、期待していた以上、最高に笑って泣ける作品に仕上がっている。
原作「あの頃。男子かしまし物語」の映画化が発表されると、アイドルファン界隈は騒然となったそうだ。劔さんは映画化にあたり、グッズや衣装など多くの私物を提供したり、かつての仲間たちと共に時代考証をしたりと、協力を惜しまなかったそう。(公式サイトより)
仲野太賀が魅せる圧倒的存在感と演技力
松坂桃李さんの新しい顔がみれる”オタク姿”はそれだけで新鮮である。本作の主役は松坂桃李ではあるが、裏主役は仲野太賀ではないかというくらいに仲野太賀の存在感と演技力には圧倒される。現在公開中の「すばらしき世界」で見る彼とは全く違った印象だ。
ハロプロの名曲とともに”あの頃”が蘇る
2000年初頭音楽業界を席巻したハロプロ、当時のモーヲタ、ハロプロに夢中だった人たち、ハロプロを聴いて育った筆者の世代、多くの人々が彼女たちの存在、歌、ダンス、音楽に元気と希望を与えてもらった。そんな名曲が劇中でも使用されていて、懐かしさとともにそれぞれの”あの頃”が蘇るはず。
夢中になれるって最高で最強!
《あの頃。》
ーー仲間と過ごしたあの頃を思い出すーー
大人になると誰もがそんな経験をしたことがあるはず。「あの頃はよかった」と昔を懐かしむことがあっても「今が一番楽しい」と胸を張って言えるだろうか。人生において「今が一番楽しい、今が一番最高」と言えるような人生を送ることが簡単そうで難しい。
何かに熱中するというコト、夢中になれるものがあるって素晴らしいコト。好きなことを通して出逢える仲間、皆で分かち合う感動や出来事は一人よりももっと味わい深いものがある。人生にはそういったチャンスが多く転がっているのだ。
レビュー
生きる糧になる”好きな事”、これからも大切にしていきたい。
あややこと松浦亜弥とは同い年で同郷、さらにモーニング娘。のエース、「ゴマキ」と奇しくも同姓同名として(彼女が一つ上)、20年近く初対面の人からは最初に名前を突っ込まれるという筆者にとっては、モー娘。松浦亜弥は特別な存在である。また多感な思春期に彼女たちの曲を聴きながら共に大人になってきた筆者の世代にとっては、本作で使用されている曲はそれぞれの大切な青春の一ページを思い出させてくれるのではないだろうか。
高校生の頃に少しだけ付き合っていた先輩がまさに”モーヲタ”で、当時大阪城ホールでのモー娘。のコンサートに連れて行ってもらったことを思い出した。当時のコンサート会場でのファン達の熱量と熱気は今でも鮮明に覚えている。そういえば「モーヲタに悪い人はいない」ってあの人言ってたっけ、、、。
エンディングの演出が秀逸で、エンドロール曲、モーニング娘。の「恋ING」が流れるとともに、ぼろぼろと涙がこぼれ落ちた。2003年の曲だったとは知らず、すぐにiTunesstoreで曲をダウンロード。最高です!
あの頃。
文/ごとうまき