【日本最古の建物で歌い舞うのは静御前以来!!】葵かを里、静御前に寄り添いながら、吉野の魅力伝えてく

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日本舞踊を舞いながら歌う“艶歌歌手”葵かを里が3月1日(水)に新曲『吉野 千本桜』を発売した。今作の舞台は、奈良県・吉野。吉野山の桜と源義経と静御前の切ない恋が歌に描かれている。前回当メディアでは、世界遺産・吉水神社(「吉」の正確な表記は「土」の下に「口」、つちよし)で行われたMVの撮影を取材したが、今回は葵に『吉野 千本桜』に対する思いをさらに深掘り。また、3月1日に行われた吉野観光大使委嘱式や吉水神社で行われた歌唱奉納などについても振り返ってもらった。

日本最古の建物で歌い舞ったのは静御前の次

——3月1日新曲「吉野 千本桜」の発売日に、奈良県吉野町観光大使の委嘱式、歌唱奉納が無事行われましたが、数日経っての心境は?

もう全身全霊で喜びを噛み締めました。3月1日の発売日に吉野観光大使の任命をいただいたこと、さらに今回の曲の一番メインとなる吉水神社で歌唱奉納をさせて戴いたこと光栄です。歌唱奉納の際、宮司さんに「日本最古の建物で歌い舞ったのは静御前の次に葵かを里さんですよ」と言っていただきました。もう鳥肌が立ちますよね。20周年を迎えるにあたっての集大成として、踊りの名手・静御前を歌いたいと調べていくうちに、源義経と静御前の悲恋の物語があると知りました。こうしてどんどん良いご縁が回っている。思いって通じるんだと肌で感じています。

——桜の植樹も同時に行われましたが、桜の成長も楽しみですよね。

桜の成長を見つつ、私も一緒に成長していきたいですね。そして一つ大きな足跡を残せた気がします。今こうして私たちが見ている吉野山の桜は、修験者の方たちが1000年以上かけて一本一本植えてきたもの。そんな歴史ある苗木の中に、葵かを里の苗木も植えていただけること、こんなに幸せなことはないですよね。桜の木って成長が早いみたいなので、できるだけ事あるごとに一緒に成長を見届けていきたいです。当時の修験者の持ち物が、杖と法螺貝だったと聞いて、今作のアレンジには、法螺貝の音が使われています。吉野山の情景が広がり、奥行きを感じてもらえるのではないでしょうか。

——今作 Type-Aのカバー曲には、同じ奈良県を舞台にした「二月堂」(2014年11月12日発売)が収録されていますが、どちらも世界遺産です。歌を通して、それぞれの場所の魅力が伝わるといいですよね。

やっぱり、奈良は日本最古の場所だと改めて感じますね。吉野の桜は有名であるものの、吉水神社にまつわる義経と静御前の悲史はそう多くは知られていないんです。私も制作するまでは知らなかった。この曲を通してお伝えしていく事も、今後の私の課題でもありますね。そういえば、今回来阪した際、仕事終わりに二月堂の最終日に行ってきましたよ。最終日はたった10分しかないのですが、猛ダッシュして、最後の2分間見ることができました。元陸上部なんですが、久々に走った(笑)。

歌を聞く前に是非、歴史を知ってもらいたい

——「吉野 千本桜」を発売されてから、手応えなどはありますか?

発売してから、1日も休むことなく活動ができているのがとてもありがたい。コロナ禍、新曲を発売しても動きたくても動けない時もありました。ようやくコロナも落ち着き、皆さんに歌を届けられる。あと、今回は歌を聴いて頂く前に、この吉水神社や義経と静御前の歴史を知ってもらえたら。事前に知っているからこそ、歌がより伝わると思うんです。実際に聴いて下さったファンの方たちも、歌が沁みると言って下さっています。

どれだけ静御前に成り切り、寄り添えるかが重要。

——義経と静御前の悲恋を知っている上で歌詞を読むと、静御前の切ない想いが感じられ、より情景が浮かびあがります。

静御前が主人公なので、私も静御前に成り切って歌っています。MVでは、吉水神社の義経と静御前が最後に過ごした居間で撮影をさせていただくということで、彼女に思いを重ねられるように、鎌倉の鶴岡八幡宮の舞殿やお墓のある栗橋、そして茨城県にある光了寺など、静御前の縁の場所をいくつか周りました。光了寺では、静御前が着ていた着物が蔵に納められていたので見せて頂いたり。

 

——こうして静御前の縁の場所を訪れることにより、もっと歌への愛情が深まりますね。

前作の 『諏訪の御神渡り』でもそうでしたが、執着してしまうんですよね(笑)。でも執着しないと良さが伝えられないと思っているので、何度も何度も現地に通って、知識を吸収する。それを皆さまに体感してもらいたいといった思いがあります。

——Type-Aには「夢さくら」(2016年12月21日発売)、そして葵さんが茶野香 名義で作曲された「明日への虹」も収録されていますが、それぞれの曲について教えてください。

「夢さくら」は、同じ桜の歌でも前向きな桜の歌です。「明日への虹」も人生の応援歌で、私の作曲第三弾作品。メロディーが重ならないよういろいろ考えた結果、ワルツのメロディーに決めました。歌う際には、聴いてくださる皆さまの背中を押してあげられるように心がけて歌っています。この歌詞は、私の歌手人生とも重なりますし、私自身歌っていて、背中を押してもらえるんですよね。「明日への虹」では、皆さまに掛け声もかけていただく場所があるので、一体感を感じてもらいながら盛り上げて歌いたいですね。

——ところで歌うだけでも体力を使う中、日本舞踊を踊りながら歌うのはとても大変ではないでしょうか?

本来は踊りの時は草履を履かないのですが、草履を履いて踊っています。なので、普通よりは大変かもしれませんね(笑)。重心を間違えるとラインが崩れたりもするので、そこを意識して歌っています。陸上部で培った体力の貯金がまだあるみたい(笑)。

妥協せずに制作した「吉野 千本桜」を、とことん突き詰めたい。

——来年で歌手生活20周年、今後に向けての意気込みを教えてください。

「吉野 千本桜」は、“何がなんでも静御前になりたい!”という思いから20周年に向けての大切な作品ですし、私が事務所を独立してからの第一弾作でもあります。妥協せずに制作してきたからこそ、とても思い入れのある曲なんです。

——葵さんの追求心は唯一無二、尊敬します。

歌については突き詰めますね。今作もアレンジから作詞、作曲と全部首を突っ込んで、突き詰めすぎました(笑)。いろんな意見を聞いていただき、先生方にも本当に感謝しています。だからこの曲をまずは頑張って、20周年に繋いでいきますね。

インタビュー・文・撮影/ごとうまき