葵かを里「歌を通して伝統を伝えていく。この道は間違っていなかった」

アーティスト

“舞いながら歌う艶歌歌手”として活動する葵かを里の20周年記念曲第2弾『西陣おんな帯』が11月6日に発売された。舞いながら古都を歌う葵の原点である京都を舞台に、京都の伝統工芸「西陣織り」にスポットを当て、新たなドラマが誕生した。今回も葵にインタビューを行い、楽曲の制作秘話や今の思いを語ってもらった。

今後も“歌の伝道師”としてブレずに突き進んでいく

── 京都を舞台にした歌は今回で7作目。西陣がこれまでになかったのが不思議です。

これまで京都の川を5本と五山送り火を歌ってきました。金沢の加賀友禅を題材にした歌も歌ってきたので、西陣が今回初めてなのは意外ですよね。私の“舞いながら歌う艶歌”の原点が京都で『桂川』からスタートしました。なので20周年の節目にはもう一度京都を舞台に歌いたくて、京都の伝統工芸である「西陣織」にフォーカスしました。私自身、西陣の帯を数本持っていましたが、歌う際に西陣織りを勉強していくうちに、こんなにも種類が豊富で緻密な作業をして作られていることに驚きました。

── 西陣織りといっても、ものすごい種類があるのですね。

そうなんです。その中の一つが歌の3番の歌詞に出てくる“つづれ織”です。実際に拝見をしましたが、これが大変な作業で……。自身の爪をノコギリのように削って、よこ糸を手繰り寄せて柄を作る。その柄も裏になっているから、鏡で写して確認しながら織っていく。時間と根気がいる作業なんです。

── アレンジでは雅楽の音色がとても印象的ですね。

みんなで、ものすごく時間をかけてアレンジを考えました。というのも、これまでに京都の歌を6曲歌って、いろんなアレンジをやり尽くしてきましたから……。あまりにもこだわりすぎて編曲をしてくださった竹内弘一先生からも呆れられているかも(笑)。

── 他にこだわられた部分は?

詞です。作詞してくださった麻こよみ先生にも無理を言っていろいろ書き換えていただきました。例えば「経(たて)糸(いと)、緯(よこ)糸(いと)、心糸」の部分ははじめは2番の歌詞だったのですが、この部分は1番に変えてもらいました。歌詞の最初に3つ名詞を並べる部分も、こだわったポイントです。

奇跡の舞がみられるミュージックビデオ

── MVは、晴明神社の境内で踊られています。

神社でお参りするMVは何作もあるのですが、境内で踊らせていただくのは初めてなんです。安倍晴明さんに見守っていただきながら踊らせていただいたのが、とても貴重な時間となりました。この日は朝から雨が降っていましたが、MVの撮影になるとピタリと雨が止んで。不思議な現象でした。新曲の祈願もこのパワースポットでさせていただいたんですよ。

さらに徳間ジャパンの大先輩・松前ひろ子さんが、自身の西陣織・28本をこの撮影の為に貸してくださったんですよ。その帯をバックに並べてMVを撮影させていただきました。こんな贅沢な経験ってなかなかできませんよね。松前先輩にも本当にお世話になっています。

── 葵さんの歌を通して、日本の伝統を知ることができる。これまでにいろんな古都、文化をお歌いになっておられます。日本には素晴らしい文化が沢山あることを改めて感じます。

ありとあらゆる場所に魅力がありますが、そう簡単にその土地の魅力に巡り合うことはありません。だけど、歌だと比較的簡単に伝えられます。もっともっと皆さんに届けていきたい。歌を通して伝えていく……。それが私の使命ではないかと思っています。

茶野香 作曲、第5弾は明るい応援歌

── カップリングに収録されている『おんなの花道』は、今回も葵さんが茶野香 名義で作曲されています。曲作りに対する心境の変化などはありましたか?

まだ、なんちゃって作曲家なので……(笑)。ライブやイベントのオープニングで元気で明るい曲を歌いたくて、麻こよみ先生に作詞をお願いしました。ただ、今作に関してはステージの最初に、どんな形で、内容で歌いたいかが明確にあったので、スムーズに作曲ができました。歌詞を見た瞬間に、すぐにメロディーが降りてきたんですよ。皆さんに元気になってもらいたいので、私自身明るく歌って、ステージでは走り回っています。

今年最大の進歩は、自身のYouTubeチャンネルを開設!

── 2024年を振り返っていかがですか?

20周年ということもあり、今年は2曲も発売させていただきました。また今年は5年ぶりに名古屋でディナーショーも開催することができ、静御前になって20周年の節目の舞を披露することができました。それと、今年は自身のYouTubeを開設しました!SNSは大の苦手だったのですが、なんとか克服しようと、その第一歩を踏み出したところです。今後も歌を通じていろんな方と出会い、私の歌で元気になってもらえたらこれほど嬉しいことはありません。そして、“歌の伝道師”としてこれからも様々な土地の魅力を伝えていきます!2025年もよろしくお願いします。

葵かを里 がんばりん ちゃんねる – YouTube

インタビュー・文・撮影:ごとうまき