【朝夏まなと インタビュー】2年越しの上演!歌とダンスとびきりのハッピーをお届け!ミュージカル「モダン・ミリー」

撮影:草田康博
舞台

10月1日(土)、2日(日)大阪・新歌舞伎座にてミュージカル「モダン・ミリー」が上演される。「モダン・ミリー」は2002年にトニー賞作品賞や主演女優賞を受賞した大ヒットブロードウェイミュージカル。1967年に公開されたミュージカル映画「モダン・ミリー」が原作となり、半世紀以上にわたり人々から愛され続ける名作。モダンガールに憧れる主人公ミリーを務めるのは、元宝塚歌劇団宙組トップスターで、2020年に第45回菊田一夫演劇賞を受賞した朝夏まなと。今回は上演に先立ち、朝夏さんにインタビュー。

本公演は当初2020年4月に予定されていたが、第1回目の「緊急事態宣言」によってやむなく中止に。2年越しの待望の公演となる。

1920年代のニューヨークを舞台に、仕事に恋にと奔走するミリーに活力をもらえる

——2年前、中止が決まった時の状況や心境を教えてください。

朝夏さん
あの時は通し稽古まで行っていて、劇場でオケ合わせをしようと言う最中、緊急事態宣言が発令、楽屋に荷物を取りに行って解散という状況でした。シアタークリエにはセットも組まれていて、そのセットが壊されていく様子を客席からみんなで見ていて…。仕方がない反面、やるせなさや無念さが込み上げてきました。演出の小林香さんが、「これは中止ではなく大幅な延期です。」という言葉を残してくれて、みんなその言葉を信じて、別れました。

——再び公演が決まった時の気持ちは?

朝夏さん
今度こそお客さまに届けられる!という気持ちと、キャストがほとんど変わらないことも含めて、ほんとに嬉しかったです。私と同年代のキャストが多く、終始和気あいあいとした雰囲気です。作品そのものも、ハッピーなコメディーミュージカルなので、稽古場も明るい。演出の小林さんも面白い方。そんな中、一路さんと保坂さんの2人の役柄、2人の掛け合いが最高なんですよ。オフ、オンともにカラーの違う女優さんが役を通して面白さを競うところが刺激的です。

劇団四季を経て「オトコ・フタリ」などミュージカル以外でも活躍を続ける保坂知寿と元宝塚歌劇団雪組トップスター・一路真輝の絶妙なコンビネーションにも注目したい。

——2年の時を経て、作品に対する向き合い方はどのように変化しましたか?

朝夏さん
この2年間、私自身いろんな作品や役に挑戦させていただきました。様々な経験を通して、改めて2年前には掴みきれていなかったミリーというキャラクターが見えてきましたね。例えば彼女は「なんでこんなことを言うのだろう?」とか、ミリーというキャラクターをより深掘りしたり…。自分自身も少しは成長したのかな、と感じているので、2022年版でもまた役作りをしっかりと行っていきたいです。

——ミリーに関して掴みきれないところがあったとのことですが、どんなところですか?

朝夏さん
ミリーがなぜこれほどまでに“玉の輿に乗りたい!”、“道を切り開いていく”と彼女の言っている理由を自分の中に落とし込むのが難しかったです。ロマンスより理性が強いミリーは、タイプライターでありながら玉の輿を夢見る子。“結婚=ビジネス”という計算高いところもあるのに、ラストの展開を見ると言行不一致なところもある。だけど、人って理想と本当に求めているものって違うんですよね。「心に従う、自分の声を聞く」が本作のテーマでもあるんです。

——朝夏さんとミリーには最初は距離感があったものの、一方で共感できるところは?

朝夏さん
ミリーは中身が女の子、対して私はサバサバしているほうなので、最初はなんだか、くすぐったいような違和感がありました(笑)。だけど改めて本を読むと彼女の真っ直ぐなキャラクターや天然でお茶目なところに可愛いなって、彼女を愛おしく感じるようになりました。一度決めたらやり通す頑固なところは、私と似ているかもしれません。

ブロードウェイミュージカルの醍醐味を堪能!

——たくさん見どころがあると思いますが、特に挙げるとすれば?

朝夏さん
まず、面白いキャラクターたちが集結しているところ。1人だけでもキャラが際立っているのに、その人たちが絡み合い、最後に伏線回収されるんです。一度観て、ストーリーを理解したうえで再度観ると新たな発見もあり、何度観ても楽しめる内容になっています。歌や踊りも注目してほしいですね。本作はタップダンスが多く、古き良きブロードウェイミュージカルを味わってもらえると思います。タップを踊っている私たちも、ワクワクして元気が出ます。

——今作の楽曲、キーが高いですが難易度は高かったですか?

朝夏さん
そうですね、サットン・フォスターさん(ブロードウェイ版で演じた)に合わせて作られているし、プラス踊りも入っているので、やっぱり難しかったです。ミュージカルはただの歌ではなく、歌の中に気持ちの変化が流れている。なので芝居もしっかりと演じながら、歌もしっかり届けられるようにと、より意識をしています。

撮影:草田康博

“笑いの間”を大切に演じたい

——コメディー要素が多い本作、笑いの本場大阪で特に意識されることはありますか?

朝夏さん
コメディーを演じるうえでは、“間”を特に意識しています。大阪は‟お笑い”に厳しいので…(笑)、東京と大阪でセリフを変えることはないのですが、お客さまの空気を読みながら“間”を意識して立ち向かっていきたいですね。

演出は「SHOW-ism」シリーズや「Little Woman-若草物語-」「リトルプリンス」などで手腕を見せた小林香が手がけている。

——小林さんはどんな演出をされますか?

朝夏さん
自由にさせてくださいます。まず、やってみよう!と、そこから修正していくというスタイル。香さんを笑わせたら勝ち!みたいな稽古場なので、香さんが笑ってくれると嬉しいんですよね。

——宝塚歌劇団在団中にはトップ娘役で朝夏さんとコンビを組まれていた実咲凜音さんと、今回は女の子同士としての共演となりますね。

朝夏さん
宝塚時代は「風と共に去りぬ」で私がスカーレット役、実咲さんがメラニー役として共演し、当時のことを思い出しました。2人で「懐かしいね」って話してます。退団してからは会う回数が増え、一緒に宝塚を観に行ったりと、仲が深まりました。「モダン・ミリー」の役を通して、普段の私たちに近い関係性が垣間見れるかと思います。実咲さんの役はお嬢様、私の方が立場が下なので、宝塚時代には見れなかった関係性も新鮮に感じてもらえるかと思います。

時には女性役に苦戦することもあった

——宝塚退団後、いろんなミュージカルに出演されていますね。今後挑戦したいことはありますか?

朝夏さん
有難いことに、幅広いタイプの女性役を演じさせていただいています。宝塚在団中は男役でしたので、女性役を演じるのには手探りの状態で挑み、毎公演、壁にぶち当たってきました。とりわけ発声に関しては難しかった。女性役は男性役とはキーが全く違うので、歌い方にしても鍛える筋肉が変わります。今でこそ出る音域も少しずつ広くなりましたが、当時は歌いこなすのに苦労しました。自分との戦いでしたね。いろんな役を通して痛感するのは、やっぱり私は表現することが大好きなんだなって。ミュージカル以外にも、ストレートプレイ、歌、ドラマ、ラジオ、などにも挑戦し、今後も表現することを極めていきたいと思っています。

カンパニーも大きな家族

——カンパニーは毎回変わりますが、宝塚時代との違いはありますか?

朝夏さん
宝塚時代と比べ、違和感がないんですよね。宝塚は家族という感じで。カンパニーは毎回変わります。だけど表現することを愛する人たちが集い、一つの作品を良いものにしようという気持ちは、宝塚であれ、カンパニーであれ変わりません。公演が終わるごとにカンパニーの仲間と仲良くなり、友人も増えていく…。また大きな家族になっている感じがするんです。今こんなご時世で、舞台などは特に影響が出やすい。幕が開けられないとか…。本当に胸が痛いです。

愛か財力か…天秤にかけるとすれば?

——見目麗しい朝夏さん、美と健康のためにこれだけはやらない!と、気をつけていることは?

朝夏さん
うーん、睡眠をしっかりとることですね。夜更かしはなるべくしないように…。とはいえ、夜更かしもしたくなるし韓国ドラマをみながらラーメンも食べたくなるときもありますし。ストイックになりすぎないようにはしています。摂生はしつつ、適度に心の声に従うようにしています。

——「大切なのはロマンスよりも理性!」をモットーとするミリー、結婚はビジネスであり愛は後からついてくるという考え方で、相手に財力を求めていますね。朝夏さん自身の価値観はいかがですか?

朝夏さん
いやぁ、どうですかね(笑)。ないよりはあるに越したことはないですよね。ね?女性の皆さん、そうですよね(報道陣の女性に対して同意を求める)。結婚=ビジネス(お金)と思い込んでいる女性がどう変わっていくか…。が本作の肝なんですよね。私もそっち側ですよ(笑)。

——愛か財力かをグラフで表すと…?

朝夏さん
“愛”が全てです。愛100%にしましょう!(笑)

と、記者のちょっと踏み込んだ質問にも、笑って優しく受け答えするサービス精神旺盛な朝夏に好感度が増す。時代を超えても変わらぬ普遍的なテーマと、自分の足で果敢に人生を切り開く主人公ミリーに、勇気と元気を貰えるはず。明日の活力となるミュージカル「モダン・ミリー」は、新歌舞伎座にて10月1日(土)、2日(日)上演。チケット発売は8月28日(日)10時から。

公演概要・チケット

ミュージカル『モダン・ミリー』
出演:
朝夏まなと 中河内雅貴 実咲凜音 廣瀬友祐
保坂知寿 一路真輝 他
公演期間 2022年10月1日(土)~2日(日)
料金 (税込)
S席(1・2階) 11,500円
A席(2階左右) 9,000円
B席(3階) 5,000円

チケット:ミュージカル「モダン・ミリー」 ○一般発売 | 新歌舞伎座ネットチケット[演劇 ミュージカル・ショーのチケット購入・予約] (pia.jp)

新歌舞伎座テレホン予約センター:06-7730-2222(午前10時~午後4時)

取材・文/ごとうまき