【インタビュー】「アンジェリーナ1/3を作っているのがGacharic Spin、恩返しをしながら成長したい」

アーティスト

   海外からも注目を集める超絶技巧6人組ガールズバンド「Gacharic Spin(ガチャリックスピン)」のNewアルバム『W』が7月5日に発売された。これまでにメンバー編成の変更を幾度となく繰り返してきたGacharic Spinが最終形態宣言をし、日本クラウンに移籍してからの初のアルバム。そして前作のアルバム『Gacharic Spin』 に続くセルフプロデュース2作目となっている。今作もGacharic Spinらしい楽曲から挑戦曲まで、幅広いジャンルの楽曲が詰まっていて、いろんな人の人生や生活に寄り添ってくれるような1枚になっている。今回はマイクパフォーマーのアンジェリーナ1/3(愛称:アンジー)にインタビュー取材を実施。アルバム『W』にかける思いや、制作秘話を聞かせてもらった。アンジェリーナ1/3は、ソロとしてもラジオやテレビで活躍中だが、根底にあるのは強い“バンド愛”。メンバーやバンドへの思いも語ってもらった。

アルバム制作を通して見えた意外な一面

──アルバム『W』は、人間の持つ二面性を意味してつけられたとのこと。このタイトルを付けた理由は?

アンジェリーナ1/3
日本クラウンへ移籍して初のアルバムで、セルフプロデュースをするのは前作『Gacharic Spin』 に続く2枚目。どんな楽曲が揃ったら私達らしいのかを考え、この10曲を並べました。楽曲や歌詞を通して、メンバーの芯の部分や、初めて見る顔や感情を知りました。結局私たち、人間誰もが“顔”を使い分けているんだと実感して……。でも、それってネガティブな意味ではなく、お互いを守るために、いろんな顔を使い分けているという話になりました。そしてこういった意味合いをタイトルの『W』に込めることで、いろんな人たちの人生や生活に寄り添えるようなアルバムになるのではないかと。前作7thアルバム『Gacharic Spin』を超えるようなものに仕上がったのではないでしょうか。
 

 ── 楽曲のジャンルも幅広いですよね。

アンジェリーナ1/3
 リード曲として出している『レプリカ』と『カチカチ山』は対照的な曲となっていて、『カチカチ山』は、日本の昔話を交えながらユニークに現代社会に訴える風刺的な楽曲。現代社会を描くとどうしてもシリアスになりがちだけど、敢えてユーモアを交えることで、より伝われば嬉しいです。『レプリカ』は、自問自答する楽曲、どう自分と向き合うかを歌った曲です。こちらはシリアスかつダークに振り切っているので、この二曲からも二面性が感じられるのではないでしょうか。
 

──このアルバムを通して見えた、アンジェリーナ1/3さんの新たな一面は?

アンジェリーナ1/3
 今回のレコーディングでは、自分の声を大切にして、いろんな声色で歌いました。これまでは力で押していくような歌い方が多かったのですが、『ロンリーマート』『Voice』など、今回は寄り添えるように意識して歌いました。これまでとは全く異なるアプローチ、ここでも二面性が表れています。
 

素直な気持ちを表現することの大切さを知った

──『ロンリーマート』はバラード調の美しい曲ですよね。

アンジェリーナ1/3
 『ロンリーマート』は、今年の2月に行ったワンマンライブのアンコールで初披露しました。小手先で歌おうとしていた為か、ゲネの日まで自分が思うように歌えなくて苦戦しました。ライブの前日に歌詞を読み込んで、当日のリハでは綺麗に歌おうという感情を取り払って、感情だけでシンプルに歌うことを実践。するとそれが案外ハマって、メンバーにも“これなら大丈夫!自信もって歌っておいで”と言ってもらえました。そういう意味でも、今回のレコーディングやライブを通して、自分の素直な気持ちを表現して歌うことが大切だと再認識しましたね。
 

 ── 感情を出して歌っているといえば、『カチカチ山』もとてもリアリティーがありますよね。歌詞のワードにも共感しまくりで。

アンジェリーナ1/3
 この曲もしっかり歌詞を読んで、体に入れ込んでレコーディングに臨みました。はじめに歌詞を書いたのは私だと思われるんですが、書いたのはベースのF チョッパー KOGAです。歌詞を読んで、現代的な表現だと思ったのが、桃太郎の部分。彼は果たして本当にヒーローなのか!?視点を変えたら悪にもなるのではないかと。
 

 

──『Live Every Moment〜ヒトヨバナ〜』はギタリスト・大村孝佳さんが作曲とアレンジを手掛けられていますが、これもロックテイストでかっこよく、イントロから痺れます。

アンジェリーナ1/3
 大村さんにはガチャピンがずっとお世話になっていて。この曲は大村さんだからこそ作れる曲で、ガチャピンへの愛が感じられます。ギターのTOMO-ZOとボーカルのはなのツインギターがより洗練されたものになるように、バランス良く作っていただきました。
 

 父から昔もらった手紙へのアンサーソング。

 ── 『Voice』はアンジェリーナ1/3さんが作詞をされたのですね。この歌が生まれた背景を教えてください。

アンジェリーナ1/3
 私が中1の時に亡くなった父に向けて書きました。父が亡くなってから、特に高校生の頃や20歳になるタイミングでは常に答えを求めていて。だけど、正解を聞きたかった人が目の前にいない、という寂しい思いも経験しましたが、きっと父ちゃんならこう言うだろうと想像しながら書きました。いま21歳、Gacharic Spinも新たな層の人、いろんな人に届くようになってきている中で、自分は何ができているのだろうかと葛藤する日々も多くて……。それでも頑張って私は立っているよ、等身大の自分で歩んでいくね、という気持ちを込めています。
 

 ── 他に印象に残っている曲、苦戦した曲はありますか?

アンジェリーナ1/3
全部苦戦しまくっているんですが(笑)、特に『rabbithole』は、メロディーラインもこれまで歌っていた曲とは違って、今までにない大人っぽい曲で。自分の人生観にはないチャンネルの曲だったので、どのようにアプローチをしようかと悩みました。今回は、はなとのツインボーカルなので、どの様にして はなと差別化をして歌うかということを意識しました。
 

 遅いロケットで、47都道府県を巡回中

 ── コロナ禍で中止になった47都道府県TOUR『ROCKET SPIRITS』が再開中!そして、11月18日(土)は日比谷公園大音楽堂にてLIVE2023『Limit Breaker〜結成15周年に向けて〜』が開催されます。ライブへの意気込みや思いを教えてください。

アンジェリーナ1/3
 6thアルバム『Gold Dash』を引っ提げて47都道府県一気に回ろう!というツアーが、コロナ前に始まったんですが、コロナに直面してツアーが一時期ストップしてしまいました。止めようか悩んで、皆で話し合って出した答えは“ツアーを続けよう”と。ツアーを開始して3年経ちましたが、まだ23ヶ所ぐらいしか回れておらず、すごくゆっくりなロケットになって日本を横断しています(笑)。一気に回るから『ROCKET SPIRITS』というタイトルをつけたのに(笑)。基本は『Gold Dash』の楽曲が多いですが、『Gacharic Spin』 『W』など、過去の曲なども織り交ぜた盛り沢山な内容となっています。
 

 ── LIVE2023『Limit Breaker〜結成15周年に向けて〜』の“Limit Breaker”には、どのような思いが込められていますか?

アンジェリーナ1/3
 Limit Breakerの意味は限界突破。Gacharic Spinは今年で14周年なんですが、これまでにメンバーチェンジがあったりと、紆余曲折ありました。そして今の6人が最終形態と打ち出していて。誰かが欠けたらGacharic Spinとは言えない。この最終形態でしっかりやっていこうと、そして、さらに向こうの限界を超えていこう!という思いが込められています。
 

 ── アンジェリーナ1/3さんが加入されたのは2019年で当時まだ高校生だったんですよね。そしてすぐにコロナ禍に直面……。

アンジェリーナ1/3
コロナ禍でライブができなくなった時はショックでしたが、いつか状況が良くなった時にはもっと良いパフォーマンスを届けたい!というポジティブな思考でいました。それはきっと、2019年にいろんな経験をさせてもらったからだと思うんです。“100回の練習より一回の本番”をモットーにしているチームなので、2019年はかなり濃い経験をさせてもらいました。加入後2ヶ月で30何箇所のライブを回らせてもらったり、アメリカに行ったりと、夢だったことが一気に実現し、これがバンド!ということをやらせてもらえた年でした。そしてその経験が今の私の糧となっています。
 

 静かに背中を押して見守ってくれるメンバーに感謝

 ── 今回の取材でも改めて感じるのが、アンジェリーナ1/3さんの語彙力の多さとトーク力の凄さ。21歳でここまで喋れるって天性のものだと思うのですが、普段から意識されていることはありますか?

アンジェリーナ1/3
自分は全く思っていないのですが、自分の番組を持ち始めてからいろんなラジオを聴くようになりましたね。出会う人皆に、“いろんな本を読みなさい”と言われるので、なるべくいろんなジャンルの本を読むようにしています。中でもエッセイや岡本太郎さんの著書が気に入っています。あとは、子どもの頃から美術展が大好きです。親に美術展やお芝居に連れて行ってもらいました。いろんな表現のものと触れ合う機会が多かったので、そういった経験も今の自分を作っているのかもしれません。
 

 ── 巧みなトーク力を活かしてバラエティー番組にも沢山出演されていますが、“多くの人にGacharic Spinを知ってもらいたい”という思いがあるからなんですよね。

アンジェリーナ1/3
そうですね。ソロの仕事をしているとどうしても、“あの子ソロでやりたいのかな”などと、いろいろ言われたりもしますが、全くそうじゃなくて、Gacharic Spinに恩返しをしたくて、Gacharic Spinの名前を広めたいという気持ちで、今やらせてもらえることをやっているだけなんです。
 

 ── アンジェリーナ1/3さんの活躍を見て、メンバーから何か言われたりしますか?また、歌以外で今後やってみたいことはありますか?

アンジェリーナ1/3
姉さんたちは私を見て、“もっとこうした方が良い”とか、褒めたい部分もきっとあると思うんです。でも声をかけることによって、アンジェリーナ1/3らしさが失われるのは嫌だからと、敢えて何も言わないんだと言ってくださっています。個人的にラジオはずっと続けていきたいですね。Gacharic Spinの為になる活動には挑戦していきたいと思っています。
 

 ── アンジェリーナ1/3さんにとって、Gacharic Spinはどんな存在ですか?

アンジェリーナ1/3
Gacharic Spinは夢を見られる場所、夢を叶えられる場所だと思っています。長く活動していると自分の経験値の中でストッパーをかけてしまって、夢ってだんだんと失ってしまうじゃないですか。だけど、そこをぶっ壊していく役割が私だと思っています。アンジェリーナ1/3を作ってくれているのがGacharic Spinだから、そこに恩返しをして、私自身成長していきたいと思っています。
 

Gacharic Spin Official Web Site

インタビュー・文・撮影/ごとうまき