石川さゆり、今夏の大阪フェスティバルホールは昭和色に染まる!「歌とトークで昭和の暮らしを伝えられたら」

インタビュー

日本の演歌界を代表する歌姫、石川さゆりさん。2025年8月24日(日)、大阪フェスティバルホールで開催される「石川さゆりコンサート2025」は、彼女の名曲の数々がフルバンド編成で響き合う豪華なステージとなる。また、3月5日に発売された新曲『弥栄ヤッサイ/棉の花』も披露予定だ。『津軽海峡・冬景色』や『天城越え』、そして『能登半島』など、時代を超えて愛される楽曲とともに、昭和の懐かしさと現代の息吹を感じるコンサートへの思いを、石川さんに伺った。彼女の温かみのある語り口から、音楽への情熱とファンへの深い愛が伝わってくる。

──今回のコンサートについて、どんな思いで臨まれていますか?

石川

フェスティバルホールでは、毎年歌わせていただいていますが、今回は特に昭和の魅力と私の音楽を融合させた、ダイナミックで心温まるステージにしたいと思っているんです。フルバンド編成で『津軽海峡・冬景色』や『天城越え』、『能登半島』といった曲をお届けするので、迫力のある演奏とともに、皆さんにじっくり聴いていただける時間を作りたいですね。それに加えて、夏らしいエネルギッシュな雰囲気も大切にしたい。暑い夏ですから、パーンとスカッとする、元気が出るステージを目指しています!

── 今回のコンサートでは、昭和の世相や文化をテーマにしたコーナーも予定されているそうですね。

石川

そうなんです。2025年は「昭和100年」と言われる年で、昭和の懐かしい雰囲気や暮らしを振り返りながら、皆さんと一緒に楽しめるコーナーを考えています。例えば、バナナの叩き売り。昔は熟したバナナを早く売るために、独特のリズムで呼び込みをする「叩き売り」がお祭りや街角でありましたよね。あの賑やかな雰囲気や、人の温もりが感じられるエピソードを、音楽やトークで再現したいんです。私のコンサートでは普段、自分の楽曲を中心に構成していますが、今回は昭和のヒット曲や伝承の歌もアコースティックなアレンジで歌ってみようと思っています。

石川

そして今回のコンサートでは、吉岡治先生に書いていただき、一度だけテレビで披露したことがある『さゆりの啖呵売』も15,16年ぶりに披露します。きっかけは、最近のニュースを見ていて、現代の便利な生活も素晴らしいけど、昭和の人の温もりや賑わいがちょっと薄れている気がして。もう一度、皆さんにそんな時代を思い出してほしいなと思ったんです。エンターテインメントとして、歌とトークで昭和の暮らしを伝えられたらいいなと。

── 新曲『弥栄ヤッサイ/棉の花』も披露されるとのことですが、この曲に込めた思いを教えてください。

石川

『弥栄ヤッサイ』は、7月6日に石川県の和倉温泉で行われる「暴れまつり」の掛け声「イヤサカ、イヤサカ」をモチーフにした曲です。この掛け声には、みんなが幸せになりますように、良いことがありますようにという願いが込められているんです。作詞のもず唱平さん、作曲の浜圭介さん、編曲の矢野立美さんが心を込めて作ってくださったこの曲は、日本中が元気になるようなエネルギーに溢れています。一方、『棉の花』は、明治から続く大阪の河内木綿という伝統的な綿作りの物語を歌った曲です。かつては多くの人が綿を紡いで生計を立てていましたが、時代とともにその文化が薄れつつあります。この曲を通して、過去の暮らしや努力を忘れず、未来に繋げたいという思いを込めました。

── 特に『能登半島』は、最近の能登地方への思いとも繋がっているように感じます。能登には何度も足を運ばれているそうですね。

石川

はい、能登には何度も行っています。能登半島地震の影響で、今も多くの方が大変な状況で暮らしていらっしゃいます。観光地として賑わっていた場所も、以前のようには戻れていないのが現実です。でも、そこで暮らす方々の力強さや、日常を懸命に取り戻そうとする姿に心を動かされます。特に印象的だったのは、ある子どもが「同級生が3人しかいない」と言っていたこと。多くの人が引っ越してしまったけど、お年寄りはそこに残るしかない。そんな中で、歌うことで少しでも元気や希望を届けたいんです。『能登半島』を歌うとき、涙が出る方もいらっしゃるんですが、声を出して一緒に歌うことで心が繋がる瞬間を感じます。

── 紅白歌合戦で『能登半島』を歌われたときも、大きな話題になりました。あの選曲にはどのような背景があったのでしょうか?

石川

紅白では、いつもスタッフやNHKの方々と「今年は何を歌うか」を話し合います。『能登半島』は私の代表曲の一つですが、能登の現状を少しでも伝えたいという思いが強かったんです。皆さんの心に残る歌を届けたいという気持ちで選びました。結果的に、多くの方に共感していただけて、歌い手として本当に嬉しかったです。

── コンサートではアコースティックなスタイルも取り入れられているそうですが、どんな魅力がありますか?

石川

アコースティックコンサートは、コロナ禍で大きなツアーが難しくなったときに始まったんです。それまでは50人以上のスタッフやバンドで全国を回っていましたが、移動や規模を縮小せざるを得ませんでした。そこで、少人数の編成で、楽器と歌がまるで会話をするようなステージを作り始めたんです。音圧の迫力も素晴らしいけど、アコースティックは音を削ぎ落とすことで、歌の細やかな感情や息遣いが伝わる。フェスティバルホールではフルバンドのダイナミックな演奏がメインですが、アコースティックのエッセンスも取り入れて、メリハリのあるステージにしたいですね。

── 8月のコンサートでは、どんな衣装や演出を考えていらっしゃいますか?

石川

夏らしい、明るくて元気な雰囲気を出したいなと思っています。例えば、バナナの叩き売りのコーナーでは、たすき掛けのような昭和っぽい衣装で登場するのも楽しいかなと(笑)。会場全体が一体になって、声を出したり、歌ったり、楽しめる時間にしたいんです。暑い夏だからこそ、みんなでスッキリ、元気になれるステージを目指しています。

── 暑い夏を乗り切るための石川さんの健康の秘訣はありますか?

石川

特別なことはないんですけど、やっぱり睡眠が大事ですね! 暑さで疲れやすい時期だから、しっかり寝て、スタミナをつけるためにバランスの良い食事を心がけています。皆さんも、ちゃんと寝てくださいね(笑)。それと、歌うこと自体が私の元気の源。ステージで皆さんと一緒に歌うと、疲れなんて吹き飛びます。

 

取材・文・撮影:ごとうまき