【インタビュー】かつしかトリオ 爽快・緻密・超絶技巧! 伝説の3人が放つ4thアルバム『SO-DAYONE !』と、極上のライブ空間へ

インタビュー

かつて日本のインストゥルメンタル/フュージョン・シーンを牽引し、社会現象を巻き起こしたバンド・CASIOPEA。その黄金期を支えた櫻井哲夫(Ba)× 神保彰(Dr)× 向谷実(Key)の3名が集結し、2021年に結成された「かつしかトリオ」。結成以来、怒涛の勢いでオリジナル作品を発表し続け、全国ツアーを熱狂の渦に巻き込んできた彼らが、2026年10月14日に待望の4thアルバム『SO-DAYONE !』をリリースする。

今、世界中の若い世代を巻き込んで空前のリバイバルを見せる「J-Fusion」。その震源地に立つレジェンド3人は、なぜ今なおこれほどまでに瑞々しく、楽しげに超絶技巧のアンサンブルを響かせられるのか。新作の制作秘話から、世界的人気のリアルな体感、そして11月3日に控える大阪・森ノ宮ピロティホール公演への意気込みまで、笑いの絶えない阿吽の呼吸で語り合ってもらいました。

ステージ上の“口癖”から生まれた合言葉「SO-DAYONE !」

――4枚目のオリジナルアルバム、タイトルが非常に強烈です。『SO-DAYONE !』というフレーズは、ステージ上のMCから生まれたそうですね。

向谷実(Key)
そうなんですよ。ライブツアー中に曲名が決まっていない新曲を2曲披露したことがあってね。1曲目は仮タイトルをつけて、2曲目も「仮タイトル・パート2」みたいにやろうとしていたんです。そのステージ上のMCで「最近、海外も含めてJ-Fusionがめちゃくちゃ盛り上がってるらしいじゃない」なんて話をしていて。当事者なのにどこか他人事のように「世界でキテるらしいよ」「へぇー、そうだよねー!」なんてモニョモニョと盛り上がってしまって(笑)。

櫻井哲夫(Ba)
「じゃあ、次の曲のタイトルは『そうだよね』でいこう!」って、ステージの勢いそのままに演奏しちゃったんだよね。

向谷
お客さんも大笑いしてくれてね。そのままアルバムの本格的な制作に入った時、「あの曲のタイトル、やっぱり『SO-DAYONE !』でいいんじゃない?」「むしろアルバムタイトルもこれで行っちゃおうよ!」と。

神保彰(Dr)
でも実は、直前までアルバム全体のタイトルは『Cobalt Express(コバルト・エクスプレス)』の予定だったんですよ。ツアー告知のチラシを刷るギリギリの段階までそっちだったんです。

櫻井
 関東の人間は「そうだよね」「そうだよな」って1日に何十回も相槌で使いますけど、関西の皆さんからすると、ちょっとニュアンスが違って聴こえるかもしれないですね。

恩師・村井邦彦からの挑戦状「TGVとスーパーカーのデッドヒートを描け」

――先行生配信では制作ドキュメントも公開されていましたが、風通しがよく、全員がクリエイティブな仕事を楽しんでいる空気が印象的でした。向谷さんの新しい拠点のお話や、馬の話題まで飛び出したりして。

向谷
私事で恐縮ですが、来年の秋に向けて千葉と東京との二拠点生活用の拠点を計画していましてね。広い敷地にグランドピアノを置いて、窓の外に馬が見えるような環境を作ろうと。地鎮祭も終えて着々と進んでおります。ゆくゆくは2人にも来てもらって、「ピアノの森レコーディング」なんてできたら最高だなと妄想しているんです。

――そして今回のアルバムには、トリオにとって初となる外部アーティストからの楽曲提供、アルファレコード創業者である巨匠・村井邦彦さん作曲の「Paris-Nice(パリ・ニース)」が収録されています。これは大事件ですね。

向谷
 我々にとって村井さんは、古巣カシオペアがデビューしたアルファレコードの創業者であり、まさに大恩人です。先日、日本に一時帰国されていた村井さんとお会いする機会があって。今はお住まいがロサンゼルスなのですが、かつしかトリオの精力的な活動もすごく気にかけてくださっていたんです。ちょうど我々がアルバム制作中だったので、お酒の席の勢いもあって「村井さん、僕らに1曲書いてくれませんか!」って、大胆にも無茶振りしてみたんですよ。

櫻井
 そしたら村井さんが「いいよ、いいよ!」と二つ返事で快諾してくださってね。

向谷
 その後すぐにメッセンジャーでデモ音源が届いたんです。「新曲ではないけれど、かつしかトリオのサウンドに絶対に似合うはずだ。好きにアレンジしてやってみてよ」と。ただ……「好きにやって」と言われた割には、とんでもなくハイレベルな注文がついてきまして(笑)。

――具体的にはどのようなオーダーだったのでしょうか?

神保
村井さんご自身が昔、フランスのパリからニースへ車を走らせていた時に着想した曲なんですね。燦々と輝く太陽が待つ南仏のリゾートへ向かっていくドライブ感。村井さんは私が鉄道の仕事をしていることもよくご存知なので、「実、フランスの高速列車TGVと、フェラーリやポルシェが並走してデッドヒートを繰り広げているようなアレンジにしてくれ」と。

向谷
  まずデモを作ってお送りしたら、「この部分は好きだけど、ここはちょっと違うな」と丁寧なラリーが何度かありまして。中間部でレールをガタゴトと刻むようなTGVのジョイント音を再現しつつ、横からスーパーカーが「ブワァーン!」と激しくアクセルを吹かして抜き去っていくような、音のパノラマを構築しました。

櫻井
 出来上がったトラックを聴いた時、すごく新鮮でしたね。自分たちの手癖にはないメロディラインと展開で、ベースのグルーヴも普段とは違うアプローチを求められた。僕たちの演奏の幅をぐっと押し広げてくれる、素晴らしいアクセントになりました。

「信号機」が出揃ったエクスプレスシリーズの完結

――アルバム3曲目の「Cobalt Express」も、イントロから思わず拳を握りしめたくなる王道の格好良さです。

櫻井
 1stアルバム『M.R.I_ミライ』の「Red Express」、2nd『ウチュウノアバレンボー』の「Banana Express」に続いて、今回の「Cobalt Express」。赤、黄、そして青が出揃いました。

向谷
 交通信号機、あるいは鉄道のシグナルがこれで完結したわけです(笑)。この曲はまさに、ファンの方々が期待してくださっている「これぞJ-Fusion!」という疾走感と緻密なキメを、少しひねりを効かせて現代にアップデートしたナンバーですね。

神保
イントロの頭からガツンとトリオのアンサンブルが炸裂します。ドラムのビート感も含めて、ライブで演奏するのが今から本当に楽しみな楽曲ですね。

[/voice]海を越えて広がる熱狂――なぜ今、世界中の若者が「J-Fusion」に熱狂するのか?

――先ほどお話に出た「J-Fusionの世界的盛り上がり」ですが、肌で実感される機会は多いですか?

神保
ロサンゼルスに行った時、本当に驚くような出来事がありました。現地でドジャースの試合を観戦していたんです。スタンドで僕らが日本語で話していたら、前に座っていた現地の若い男の子2人組が振り返ってきて、「お前ら日本人か? これを知ってるか?」って、スマートフォンで高中正義さんのアルバムを見せてきたんですよ。

向谷
 ちょうどその少し前に、高中さんがLAでライブをやって大成功を収めていたんですよね。

神保
そうなんです。だから僕らが「知ってるよ、大先輩だよ」と答えたら、「じゃあ、お前らは一体何者なんだ?」と聞かれて。「昔、カシオペアっていうバンドをやっていてね」と言ったら、彼らが目を見開いて「WHAT!? CASIOPEA!?」って叫び出して(笑)。

櫻井
 すぐにYouTubeで当時の映像を引っ張り出してきて「画面に映ってるこのベースとドラムとキーボード、本当にお前らか!?」って。僕らは当時ヒゲを生やしていたり髪型も違ったから、信じられない様子で大騒ぎになってね(笑)。

向谷
  たまたまドジャー・スタジアムの前の席に座っていたアメリカの若者が、僕らの40年前のレコードを愛聴してくれていた。あれは鳥肌が立つほど感動しましたね。

――韓国・ソウルでの公演も大盛況でしたね。

向谷
  ソウルの客席を見渡して驚いたのは、観客のほとんどが20代だったことです。僕らがカシオペアでデビューした頃の時代なんて、彼らは影も形も生まれていないわけですよ。それなのに、当時の名盤だけでなく、今のかつしかトリオの新曲を完璧に予習して、スタンディングで熱狂してくれる。

――この世代と国境を超えた現象を、ご自身たちではどう分析されていますか?

神保
ひとつ思うのは、近年のシティポップの世界的な再評価の流れから、さらに深掘りして「そのバックで凄まじい演奏をしているミュージシャンは誰なんだ?」という文脈でインストやフュージョンに行き着いた若いリスナーが非常に多いということですね。

向谷
 あとは「人力のエネルギー」だと思います。80年代の僕らの音楽は、まだコンピューターによる打ち込みが主流になる前の、肉体と感性を極限まで酷使して作ったアンサンブルでした。90年代以降、完璧にグリッドに揃ったデジタルのサウンドに慣れ親しんだ現代の若い世代にとって、人間が生でせめぎ合い、グルーヴを生み出すスリルが、一周回って圧倒的に新しく聴こえているんじゃないでしょうか。

櫻井
  日本のフュージョンの特徴として、「メロディがキャッチーで美しい」という点も大きいと思います。海外のフュージョンは各プレイヤーのインプロヴィゼーション(即興ソロ)が前面に出ることが多いですが、僕らの音楽は、緻密なコード進行とドラマチックなキメ、そして何より歌える主旋律がど真ん中にある。海外でどんなに洋楽的なアプローチを試みても「実に日本的で美しいね」と評された理由が、今になってよく分かります。

デジタルを駆使した「超絶人力アンサンブル」の極致

――かつしかトリオのステージを観ていて圧倒されるのは、3人編成とは思えない分厚い音圧と、シーケンサーを使わない完全生演奏の緊張感です。

向谷
 そこは我々の大きなこだわりですね。コンピューターでオケを走らせてしまうと、その日の会場の空気感やお客さんの熱気、あるいは私の脱線しまくるMC(笑)に合わせたテンポの揺らぎやアドリブが一切できなくなってしまう。だからうちは全部手弾きです。

神保
その分、向谷さんのキーボード要塞のオペレーションは凄まじいことになっていますけれどね(笑)。

向谷
  大変なんですよ、本当に! 足元のフットスイッチを何個も踏み分けながら、右手でピアノを弾き、左手でシンセベースを支え、音色パッチを瞬時に切り替えて……。「1の次は2、その次は3」って頭の中でプログラミングのシーケンスを叩き込んでおかないと、激しい曲の途中で突然厳かなストリングスが鳴り響いて大事故になってしまう(笑)。

櫻井
 かつてはギターもいた4人編成の楽曲を、今は3人の肉体だけで構築し直しているわけですからね。僕のベースも、低音を支えるだけでなく、メロディを歌い、オブリガートを入れ、コード感を補う。60代半ばを過ぎて、3人ともバンドの中で一番忙しく指を動かしていますよ。

神保
ドラムも生音のダイナミクスを極限まで研ぎ澄ましながら、トリオのグルーヴを牽引する。3人それぞれが主役であり、逃げ場のない真剣勝負。だからこそ生まれるスパークが、かつしかトリオの真骨頂なんです。

――そして、ライブといえば前作ツアーで大好評だった「かつしかでチャチャチャ」に続く、客席参加型のダンスコーナーが今回もあるそうですね。

向谷
 今回のターゲットは、アルバム4曲目の「Marmalade Island(マーマレード・アイランド)」です。

神保
最高にハッピーでトロピカルなナンバーですからね。今回も客席の皆さんと一緒に手振りを合わせて踊れるような、とびきりの振付を考えています。会場全体で心を躍らせ、体も揺らして、日頃のストレスを綺麗さっぱり吹き飛ばしてほしいですね。

人生100年時代、目指すは「健康第一」とさらなる音の冒険

――結成5年目を迎え、ますます円熟味と攻めの姿勢が増しているかつしかトリオですが、今、皆さんが一番大切にされていることは何でしょうか。

櫻井
 それはもう、圧倒的に「健康」です!

神保
 間違いなく健康ですね。これに尽きます。

向谷
 誰か一人が倒れたり骨折したりしたら、このトリオは即座にストップしてしまいますからね。以前、私がステージの階段で足を滑らせそうになった時なんて、2人とも本気で青ざめていましたから(笑)。美味しいものを食べて、適度に体を鍛えて、とにかく3人揃ってステージに立ち続けること。これが最大の目標です。

――最後に、11月3日の大阪・森ノ宮ピロティホール公演を楽しみに待つ関西のファンの皆様へ、メッセージをお願いします。

神保
 往年カシオペア時代からずっと応援してくださっている熱いファンの皆さんはもちろん、最近YouTubeやSNSをきっかけに僕たちを知ってくれた若い方々も、ぜひ気軽に劇場へ足を運んでみてください。生ドラムの地響きのようなビートと、3人が織りなす音の会話を全身で浴びていただければと思います。

向谷
 インストゥルメンタル音楽の素晴らしいところは、聴き手がそれぞれの想い出や情景を自由に重ね合わせられる自由さにあります。ドライブの風景を思い浮かべるもよし、青春時代を振り返るもよし、客席でリズムに合わせて体を揺らすもよし。難しい理屈は一切抜きにして、笑顔でスカッと爽快になれるステージをお届けします。

櫻井
 アルバムを聴き込んで予習してきていただくのも大歓迎ですし、何なら手ぶらでふらっと来ていただいても絶対に楽しませる自信があります。大阪のファンの皆さんの温かさとノリの良さは僕らも大好きですからね。11月3日は森ノ宮ピロティホールで、みんなで一緒に「せやな!」と叫びながら、心も体も熱く踊りましょう。

公演情報:かつしかトリオ COBALT EXPRESS TOUR 2026

  • 日時: 2026年11月3日(火・祝)
  • 会場: 大阪・森ノ宮ピロティホール
  • 詳細: キョードー大阪 公演詳細ページ

 

リリース情報:4th Album『SO-DAYONE !』

  • 発売日: 2026年10月14日(水)
  • 品番: YCCS-10126
  • 価格: ¥3,500(税抜¥3,182)
  • 収録曲:
  1. Twilight Run
  2. SO-DAYONE !
  3. Cobalt Express
  4. Marmalade Island
  5. Paris-Nice
  6. Journey To Aurora
  7. Last Train To Summer
  8. Black Ice
  9. TANBI(耽美)
  10. TanTan

インタビュー・文・撮影:ごとうまき