【工藤あやのロングインタビュー】歌手人生を変えてくれた歌に出会う「この歌は、私の宝物」

アーティスト
山形出身の歌手・工藤あやの 新曲『洗ひ髪』が2023年1月18日に発売された。今作も前作『白糸恋情話』に続く、文学的でしっとりと深みのある作品に仕上がっている。歌手を辞めようかと思い悩んだ時期を乗り越え、新たに生まれ変わった工藤あやのが届ける『洗ひ髪』。彼女はどのような思いで歌に向き合っているのか。今年でデビュー10年目を迎えた工藤に胸の内を沢山語ってもらうことができた。

新曲『洗ひ髪』について

——新曲『洗ひ髪』を初めに聴かれた時の心境は?
工藤さん
実はこの曲は、前作『白糸恋情話』と同時期にいただいた作品。『洗ひ髪』は、よりスケール感があるので、『白糸恋情話』を経てから発売しようと。2020年頃は自分にとって辛い時期でもありました。コロナに罹患したり、歌手をやめようか、続けるか…といったところまで悩んだ時期でした。“あの時もっとできることがあったのではないか″‟もしこの声が戻ってまた歌えるようになったらこんな曲を歌ってみたい!″など、この時期にいろいろと自分を見つめることができました。初めは自分に表現できるのかな、といった不安もありました。
要らないの一言によって目が覚めた
工藤さん
これまで私は、自発的に歌うというより、誰かに求められて歌ってきた気がするんです。歌手をきちんと仕事としてやっているのか?ふと疑問に思うようになったのが2〜3年前。そんな矢先にある人に“要らない”と言われてしまい、前述した通り歌手を辞めようかと思い詰めました。じゃあ、他にやりたいことはあるのかと考えた時に、何もなくて…。だったら中途半端ではなく、10年を目指して頑張っていこうと奮起しました。
これまで中途半端にしていた練習も本気で取り組むと、これまでできなかったことがすんなりとできるようになり、成長を実感することができたと回顧、『洗ひ髪』は、もう一度この世界で頑張ろうと決意した工藤にとっても大切な曲だ
工藤さん
『白糸恋情話』と『洗ひ髪』、この歌だったらもう一度頑張りたい、そして作詞をしてくださった原文彦先生についていく!と心に決めました。私は、先生の作る映像が浮かび上がるような世界観がとても好きです。原先生には、歌の世界観をしっかりと理解してくれている、表情でも歌っていると褒めていただきました。
——曲も日本的な曲調ですね
工藤さん
編曲をしてくださった、若草恵 先生が織りなす世界観でシロクロの世界が水色、ブルー、燃えたぎるような赤に色づきました。なのでMVもそんなイメージに。今作は前作よりもレッスンは少なかったのですが、弦先生の表情豊かに歌われる部分を真似するように努めると、気づけばできるようになっていたんですよね。先生の期待に応えたいと努力していたら、自分もいつの間にか成長していたのかもしれませんね。

歌うことが楽しい!やっと心から思えるように。

民謡好きの母の影響により、幼少期から民謡に慣れ親しみ、16歳の時に弦哲也「北区の演歌座2010」新人歌手発掘オーディションで大賞を受賞、2014年弦哲也プロデュース作『さくらんぼ 恋しんぼ』でデビューした。
——師匠・弦先生はどんな方ですか?
工藤さん
とても優しい先生です。弦先生に出会って13年、高校卒業後上京して間もない頃、アルバイトに明け暮れていました。そんな時に先生から“なんでもっと自分から教えてくださいって来ないんだ!″って言われたことがあって、当時は萎縮していましたが、今となっては本当にありがたいし、良い思い出です。
——今は積極的に先生に学ばれているのですね。
工藤さん
これまでは頂いた作品を歌うだけでしたが、前作『白糸恋情話』に続き、自分の希望も言えるようになり、今作も先生と一緒に作り上げた感じです。何より私も一緒に成長できる楽曲です。私自身、以前よりも先生に前のめりに教えてほしいという気持ちが出てきた事もあり、より可愛がっていただけていると感じていますね。変化の一つに、歌って楽しい!と思えるようになったこと。実は、人前に出ることは好きなのに、人前で歌うことは苦手だったんです。私にとってはこの2、3年のコロナ禍を境に、いろんなことがプラスになりました。
——デビューして10年、これまでの歩みを振り返っていかがですか?
工藤さん
よく頑張ってきたなと…。人間関係で近しい人と揉めてしまって、気持ちが荒んでしまったこともありました。だけど雑草魂や自分への信頼がきちんとあった。それが確信に変わったのが、『白糸恋情話』に出会った頃ですね。
——『白糸恋情話』が工藤さんにとって大きな転機になったのですね。
工藤さん
歌手人生だけでなく、一個人としての工藤あやのすら変えたと思っています。以前も友達が家に遊びにきた時に、私が出演させてもらったテレビを一緒に見ていたら“本当にいい歌をもらったね、宝物だね”って言ってくれて。その言葉に涙しました。

母校での講演をきっかけに新たな挑戦を

——2022年6月の母校での講演会の反響がすごかったとか。
工藤さん
当時通っていた高校から、公演会ではなくて、講演会の依頼が来たので最初は驚きました(笑)。私は学生時代、友達もいなくてずっと1人だったんです。仲間はずれにされていたから修学旅行も1人…本当に辛かったんですが、きっと私のような生徒もいるはずだと思い、綺麗事抜きで赤裸々に話そうと、幼少期から高校、そして今の仕事や進路指導室での出来事など話しました。
講演終了後、生徒からは“あやのさんに励まされた″“自分を見つめるきっかけとなった″“生きてて良かった″などという声が300件以上寄せられ、あまりの反響の凄さに工藤自身も驚いたという。
——母校での講演会、生徒が工藤さんを大きく変えたのですね。
工藤さん
自分って、人を動かせるほど何かを築き上げてこれたんだなと、自信が持てました。そしてこの事をきっかけに、自分の内面にも変化が。コロナ禍も相まって文化祭、体育祭もなくなった生徒の皆さんと何か思い出を一緒に作りたいと思い、昨年は団体を作って花笠祭りに出場(工藤は出場できなかった)。キャンペーンに行く先々で、生徒の皆さんにおそろいのTシャツや笠をプレゼントするための募金活動を行なっているうちに、何かみんなの為にできることはないだろうか?と、メンタルケアアドバイザーの資格を取得、今後は受験アドバイザーなど、もっと資格を取得していきたいですね。

10年目・工藤あやのの決断

——10年目の工藤さんの抱負は?
工藤さん
2022年の年末にある決断を下して、10年目からその決断を実行していこうと思っているんです。まだ公表できないのですが、ファンの皆さまはそんな私の決断も受け入れ、応援してくださると信じています。これからは誰かのために歌うのではない。自分のために、そして自分の人生をしっかりと生きようと思っています。今後も皆さまと沢山お会いできるのではないでしょうか。まずは、新曲『洗ひ髪』を大きく育てて行くとともに、皆さまにも育てていただきたいです♪
取材・文・撮影/ごとうまき