【大阪三部作イッキ見】大阪12/18~29 ,東京12/29.30「リム・カーワイ監督特集上映開催」

「マジック&ロス」(C) cinema drifters
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現在公開中の映画『COME&GOカムアンドゴー』のリム・カーワイ監督の特集上映が12月18から29日まで大阪 シネ・ヌーヴォX(九条)で、12月29日.30日には東京 ユーロライブ(渋谷)にて上映される。監督デビュー作の「アフター・オール・ディーズ・イヤーズ」「マジック&ロス」バルカン半島二部作の「どこでもない、ここしかない」、「いつか、どこかで」そして大阪三部作の「新世界の夜明け」「恋するミナミ」「カム・アンド・ゴー」一挙公開される貴重な機会だ。

2010年から2019年、約10年の大阪の軌跡が刻まれた大阪三部作

11月19日から公開された「カムアンドゴー」は東京、大阪、京都、神戸、横浜、北陸、福岡‥と全国拡大公開されていく。本作は大阪三部作の最終作に位置づけられ、一作目が「新世界の夜明け」二作目が「Fly to me 恋するミナミ」となる。「新世界の夜明け」は2011年に製作された日本中国の合作、北京に暮らすお金持ちのお嬢様のココは、日本の華やかで洗練された都会的なクリスマスにあこがれ友人のいる大阪へ遊びに来る。しかし、ココを迎えた世界は想像していた大阪とは別世界、魑魅魍魎な新世界という場所だった。ココは言葉も通じないこの土地でトラブルに巻き込まれていく…。新世界とは大阪のカオスな街を代表する西成エリアだ。リーマンショック後の景気も低迷し殺伐とした大阪・新世界の街で懸命に生きる大阪の人々や中国人との交流をユーモアを織り交ぜながら描いている。

「新世界の夜明け」(C) cinema drifters

二作目の『Fly to me 恋するミナミ』は日本人のカメラマンと香港の雑誌編集者の女性、ソウルのキャビンアテンダントと在日コリアン男性との恋の行方を描いた作品だ。大阪ミナミを舞台に国境を超えた二つの恋が重なり連なる。香港、韓国、日本と三つの国の人々が交差する冬にぴったりのラブストーリー。主題歌の心地よいジャズの旋律が大人の恋の胸の高鳴りをより盛り上げてくれる。

「恋するミナミ」(C) cinema drifters

「恋するミナミ」(C) cinema drifters

この三部作に大阪の街と人々(日本人やそこに住む、または往来する外国人)の10年の変化と歴史が刻まれている。上記の大阪二部作と『カムアンドゴー』を併せてみることでより楽しめ理解が深まるのではないかと。

作品に溢れるリム監督の魅力

中華系マレーシア出身のリム監督は19歳で来日し大阪大学で電気工学を学び、卒業後は通信会社でエンジニアとして就職し6年間東京でサラリーマンをしていた。2004年に超難関校の北京電影学院の監督コースに入学し映画を一から学んだ後、2009年北京で撮影した『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』で長編デビューした。その後も香港やバルカン半島や日本などを舞台に“シネマドリフター”として旅をしながら世に作品を送り出している。カメラ一つ担いで世界に飛び出す彼のフットワークの軽さと自由と潔さがカッコいい。

「いつか、どこかで」(C)Cinema Drifters

筆者はリム監督の作品はまだ4作品しか観ていない(年末のリム・カーワイ特集上映で一気見する予定だが)から、断定はできないがこの4作品から感じたことは、リム監督が撮る映画には国境を超えた人々の繋がり(恋や友情)、“自由”と人生の“儚さ”が描かれているところだ。島国日本で生まれ育った私がこれまで気付きもしなかった視点や感性を彼の作品から知り、私の知らない“世界”を魅せられた。また社会的なテーマも所々に織り込みながらも全体的に暗くならず、ユーモアと優しさに溢れたリム監督の人柄が作品から感じられる。筆者もまだ観ていない残りの作品たちをこの年末に観るのが楽しみ。そういえば、「シネヌーヴォX」がある大阪九条には「チング」という絶品お好み焼き屋さんがあるらしい。映画からのお好み焼きコースで心もお腹も満たしてみるのも良いかもね。

概要

シネヌーヴォX:2021年 12月スケジュール (cinenouveau.com)

ユーロライブ:ユーロライブ (eurolive.jp)

カムアンドゴー:カム・アンド・ゴー | Come & Go | reallylikefilms

文/ごとうまき