【大津雄一独占インタビュー】反骨の「二刀流」が目指す、その先の三刀流へ。【後編】

インタビュー
「常識」というハードを、「アイデア」というソフトで撃破せよ。

—— 全編では、大津さんのルーツと「二天一流」の哲学について伺いました。【独占インタビュー】反骨の二刀流経営者、大津雄一が描く「ダンボール ×サウナ」の西日本戦略(前編)

現在は大阪でのダンボール製造と熊本でのサウナ運営、この1080度違うとも言える二つの拠点を行き来されています。この全く異なる事業を繋ぐ「共通項」は何でしょうか?

大津
実を言うと、私の中ではダンボールとサウナは、その本質が驚くほど似ていると感じているんです。共通しているのは、どちらも「一度作ってしまったら、ハード(建物や設備)をすぐには変えられない」という点です。巨大な製造ラインを持つ工場も、何トンものお湯を湛えるサウナ施設も、一度投資してしまえば、そう簡単には作り直せません。この「動かせないハード」を抱えながら、いかに競合と差別化し、鮮度を保ち続けるか。そこで必要になるのが、私が最も大切にしている「アイデア」という名のソフトによる勝負です。そしてハード面は必ず内部から苦情が来ます。機械が悪い、どこそこが悪い、もちろん仰る通りですが、経営者である以上、全部その通りと受け止めると経営は出来ません。かつ、大企業のマネーゲームの戦いには挑まないですし挑めないです。

—— 「ハードで勝てないなら、ソフトで勝負する」。それが大津さんの戦い方なのですね。

大津
 そうです。SNS戦略や異業種とのコラボレーションも、すべてはこのソフトの力を最大化させるための戦術です。工場という柔軟に動きにくい場所だからこそ、そこに柔軟なアイデアを注ぎ込む。今、大陽紙業で計画しているのは、ECサイトを立ち上げ、熊本の「城の湯」のグッズを自社製のダンボールで発送することです。一見、小さなことに思えるかもしれませんが、これこそが「ダンボール ×サウナ」の掛け算であり、両方の事業を同時にPRできる強力な武器になります。こういう発想をしている同業他社は、まず他にいない。そこに私の勝算があります。

—— 大陽紙業という伝統的なメーカーにおいて、大津さんのSNS発信は異色です。当初は反発もあったとお伺いしましたが、具体的にはどのような状況だったのでしょうか?

大津
最初の頃は、軽い気持ちで始めました。本当に誰も見てくれませんでした(笑)。YouTubeで好き勝手喋ったり、不満を漏らしたり。それを見た社員からは「社長がまたふざけている」という目で見られていたし、戸惑いや反発もありました。でも、私が何よりも大切にしているのは「継続性」です。かつ今の時代、SNSはなんだかんだ皆見ていますから。

 

大津
SNSにはバズりや流行りがありますが、波があるからこそ「継続性を残す」ことを信念に置いています。発信を続けるうちに、まず社員の家族が「あなたの会社の社長、面白いこと言ってるね」と見てくれるようになり、そこから徐々に社内の空気が変わり、気づけば社外へと影響が広がっていきました。どんな時でも必ず最初は、反発を喰らいます。だから私は最初社内で自分のファンを1人でも作る事からスタートしました。

—— その「継続」の結果、採用面でも劇的な変化が起きたそうですね。

大津
これは本当に真面目に良かったと思える成果です。現在、大陽紙業も城の湯も、アルバイトやパート、中途や新卒の採用に至るまで、応募してくる全員が事前に私のSNSやYouTubeをチェックしてくれています。採用側が説明する前に、私の理念や熱量を理解した人が来てくれるようになった。「一人もいなかった」採用難の時代を考えれば、これは革命的な変化です。さらに副産物として、YouTubeで喋り続けたことで、自分だけでなく社員のプレゼン能力や社外への説明能力も飛躍的に上がりました。製造工程を収めた動画が、2.5万回再生を超えたときは、社内に「自分たちの仕事にはこれだけの価値があるんだ」という強烈な自信が生まれました。私がきっかけを作り、今は従業員が自発的に発信を楽しんでくれている。思わぬ才能が見つかったり、新しいことができるようになったり。この変化こそが、SNSをやっていて最も良かったと思える瞬間です。

—— 一方で、大津さんは「ダンボールが世間に軽んじられている」ことへの強い憤りもあるとか。

大津
そこは声を大にして言いたい。皆さんは毎日Amazonや楽天を利用し、引っ越しの際には当たり前のようにダンボールを使います。それなのに、誰一人として、ダンボール自体の価値や価格について意識していない。それが納得いかないのです。「1枚いくら」という計算すらされず、ただのゴミとして扱われる。この現状に対し、同業種さえも何も思っていないことに私は憤りを感じています。ダンボールは中身を保護し、最高の状態で「送り届ける」ための究極の空間です。その価値を正しく世に問いたい。この行き場のない憤りが、私を突き動かすエネルギーの一つであることは間違いありません。

 

—— 「送り届ける」という点では、サウナも共通していますね。

大津
はい。ダンボールが物を届けるように、サウナはお客様の心と体を最適な状態へと送り届ける空間。だからこそ、サウナブームという一過性の波に乗っかるだけでは意味がない。ブームが終わった後に何が残るか。私はリアルビジネスとしての継続性を追求したいんです。正直に言えば、私自身も、そして私の事業も、まだ全然「整って」いません(笑)。ずっと高温のサウナ室に入ってる状態です(笑)。でも、整っていないからこそ、自分自身も事業も整えていきたい。そのプロセスをユーモアを持って楽しむ余裕も、経営には必要だと思っています。

—— 最後になりますが、大津さんのこれからの目標をお聞かせください。

大津
私は「二刀流」と言っていますが、心の中にはもう一振りの刀があります。ワンピースのゾロのように、「三刀流」を目指したいんです。宮本武蔵も大谷翔平も成し遂げていない領域。私には経営以外にも、自分の趣味である「おもちゃ」や「服」という世界があります。自分の「好き」を極めた三本目の刀を振るって、さらなる大きな仕事を成し遂げたい。20代の会社員時代に経験した“会社が2回合併したこと”も糧になっています。社内政治や大人のありさまを見せつけられた経験から、「自分自身が強くならなければならない」と痛感しました。あの時の決意を胸に、これからも大陽紙業と「城の湯」、そしてその先にある夢へと邁進し続けます。私の挑戦に、終わりはありません。

大津雄一(おおつ・ゆういち)

1989年生まれ。大阪府寝屋川市出身。同志社大学卒業後、上場企業での6年間の勤務を経て、大陽紙業株式会社 常務取締役、熊本「城の湯」を運営するゴールドアゲイン株式会社 代表取締役社長に就任。「ハードは変えられなくても、ソフトで世界を変える」を信条に、SNSを活用した独自のブランディングを展開。現在は「三刀流」の経営者を目指し、西日本を股にかけて活動中。

インタビュー・文・撮影:ごとうまき