【音楽×ミステリー×ユダヤ迫害】マイナーキーで奏でる悲しい物語『天才ヴァイオリニストと消えた旋律」

(C)2019 SPF (Songs) Productions Inc., LF (Songs) Productions Inc., and Proton Cinema Kft
映画

新たな視点で描かれるユダヤ迫害

本作を一つの曲に例えるならば短調の曲。不協和音が絶え間なく鳴り響く感じだ。35年前デビューコンサートの直前にこつ然と姿を消したポーランド系ユダヤ人の天才ヴァイオリニストドヴィドル(クライブ・オーウェン)の行方を探す旅に出たマーティン(ティム・ロス)、あの日なぜドヴィドルは消えたのか、ドヴィドルに何が起こったのか?!戦時下での音楽家の混迷や運命を翻弄された二人の男達の音楽ミステリー。「海の上のピアニスト」のティム・ロスと「トゥモロー・ワールド」のクライブ・オーウェンが共演し、監督には「レッド・バイオリン」「シルク」のフランソワ・ジラールが。「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのハワード・ショアが音楽を手がけ、21世紀を代表するバイオリニストのレイ・チェンがバイオリン演奏を担当、バイオリンの奏はクラシックコンサートのようだ。

あらすじ

1938年、ロンドンに住む9歳のマーティンの家に、類まれなバイオリンの才能を持つポーランド系ユダヤ人の少年ドヴィドルがやって来る。二人は兄弟のように育ってきた。またマーティンの父はドヴィドルの才能に人生を捧げてきた。そんなドヴィドルがデビューコンサート直前に失踪、マーティンの父親は大きな借金をして無念にも死んでしまう、、、。それから35年、マーティンはある審査会をきっかけにドヴィドルを探す旅が始まる。

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本作は1938年と35年後の1973年のシーンが交互に切り替えながら、物語は進んでいく。
ホロコーストやユダヤ人の悲劇の真実を音楽という切り口で伝えている本作。収容所で息絶えた人の名前を口伝で忘れないようにしていたという事実も衝撃的だ。ラスト30分の美しいヴァイオリンの旋律とラビの歌声が重なり合う時、息が止まるほどの感動に包まれる。奏者は一流のヴァイオリニストであるレイ・チェン。ヴァイオリンの最高峰である「ストラディバリウス」を弾きこなひ美しい旋律を奏でているが、それもそのはず、音楽に造詣の深い監督のフランソワ・ジラールが手がけているから。だから楽器の弾き方や演奏家の表現方法など細部に表現が行き渡っていて、まるでクラシックコンサートに来ているように錯覚する。終始重ための作品ではあるが、美しく、“ホロコースト”や“ユダヤ教のあり方”など違った角度での描写によって歴史の一部を学べる作品となっている。

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天才ヴァイオリニストと消えた旋律

監督:フランソワ・ジラール
製作:ロバート・ラントス リズ・ラフォンティーヌ ニック・ハーシュコーン
脚本:ジェフリー・ケイン
キャスト:ティム・ロス、クライブ・オーウェン、キャサリン・マコーマック
製作:2019年製作/113分/G/イギリス・カナダ・ハンガリー・ドイツ合作
配給:キノフィルムズ
原題:The Song of Names

文/ごとうまき