【谷 龍介インタビュー】憧れの大先輩・吉 幾三ワールドに初挑戦!「僕の代表作にしたいです!」

インタビュー

演歌歌手・谷 龍介の新曲「杖」が2023年10月4日に発売された。今作は徳間ジャパンの大先輩である吉幾三が作詞作曲を手がけ、カップリングには「吉 幾三トリビュートアルバム」にも参加した曲「父子じゃないか…」が収録され、谷の新境地ともいえる一枚に仕上がっている。

関西プレスには初登場となる谷さんに新曲のこと、家族についてやこれからのことなどを語っていただきました。吉 幾三さんとの心温まるエピソードも必読です!

母の死を乗り越えて届ける親子ソング

──吉 幾三さんが作詞作曲された「杖」、吉さんが手がけられたきっかけは?

吉さんは徳間ジャパンコミュニケーションズの大先輩。昨年、吉先輩の芸歴50周年記念として発売された吉幾三トリビュートアルバム「幾三フェスティバル」に僕も参加し、「父子じゃないか…」を収録させていただきました。

昨年12月に広島の呉で自宅療養していた母が亡くなりました。コロナ禍ということもあり家族葬を行ったのですが、そんな中、吉先輩からお花が届いたんです。家族みんなでいつかお礼を言わないと、と思っていたところ、仙台でトリビュートアルバム発売記念コンサートが行われ、吉さんとご一緒することになりました。楽屋で吉先輩にお礼を言おうと緊張しながら待っていたところ、吉先輩が楽屋に入ってきてすぐに僕に駆け寄り、抱きしめてくださいました。「谷、かあちゃん亡くなって寂しかったなぁ、俺も気持ちわかるよ。とにかく、これから俺たちが頑張っていこうな。」と言って一緒に泣いてくださったんです。

──吉さんのお人柄がよく分かるエピソードですね。

それからしばらくして新曲の話があって、ディレクターさんに吉さんの作品がいただけたら……とお願いをしたところ、この「杖」をいただきました。吉先輩の書く詞は心揺さぶられますね。「杖」の詞を読んだ時も、感動しました。

両親やファンの皆さんの顔が浮かぶ

──“支え”を「杖」と表現するのがいいですよね。

人間、いろんな方たちに支えられて生きています。それを杖に見立てて表現するところに吉さんの凄さを感じますよね。一番の歌詞は母との思い出、二番の歌詞は父との思い出、三番の歌詞は親からの教訓をもとに、これから連れ添っていくパートナーやファンの方たちのことだと思って歌っています。

── 一番の歌詞は母への思いが書かれていますが、谷さん自身と重なるのでは?

僕が上京する時に、母が広島駅の新幹線のホームまで見送りにきてくれて……。その時の光景や母の顔が歌詞と重なります。

僕は三人きょうだいの末っ子で、ワガママに育ちました。兄たちは優等生でしたが、僕は小さい頃から野球しかやってこなかったので、落ちこぼれ(笑)。当時は、広島東洋カープの選手になるのが夢で、テストを受けて最終選考まで残るも、壊した左肩の後遺症でプロ野球の道を断念しました。その後、呉の企業に入社して初めて人前でカラオケで歌う機会があったんです。そこで優勝して、地元のカラオケ大会などに出るようになり、歌手になろうと上京を決意するも、親父は猛反対。そんな中、母が父を説得してくれ、上京しました。

── 当時は上京することに反対していたお父様、二番の歌詞も谷さん自身と重なりますね。

はい。父は気丈な人です。上京してから、ちょこちょこ広島に帰るたびに、僕が立派になってきてると親父も感じたみたいで。“東京の生活はどうだ?人に迷惑かけるんじゃねえぞ。”って言ってくれたことを覚えています。

── 曲についてはいかがですか?

最初にいただいたデモテープはまだアレンジされていなかったので、演歌になるとは思っていませんでした。伊戸のりお先生のアレンジによって仕上がった曲を聴いてびっくり。こんなにもスケール感のある演歌は初めてだったので、正直歌い方に悩みました。ですが、レコーディングまでに何度も詞を読んで、両親との思い出を振り返りながら臨むと、自然と優しく歌うことができました。特にサビの部分“俺のこの手を 握り返して”などは一番印象に残る部分なので意識して歌っています。特に吉先輩の作品は語りも大切にされているので出だしも大切にして歌っています。

「父子じゃないか…」は“谷節”を意識

── カップリング曲「父子じゃないか…」は杉山ユカリさんのアレンジによって大きく変化していますね。

イントロ部分からしんみりと入ってきます。この曲は親から子どもに向けての歌なので、強く歌わず優しく歌うように、僕らしさも出しながら歌っています。カバーだからこそ難しい部分もあって、吉先輩の曲だとどうしても吉さん節が出てしまうんです。なので吉先輩の「父子じゃないか…」も敢えて1、2回しか聴かずに、谷節を意識して歌うようにしました。

── レコーディングでの印象的なエピソードはありますか?

1回目のレコーディングでは吉先輩もご一緒してくださいました。終わった後、焼き鳥屋に連れて行ってくださったんですが、“来年は黒川(真一朗)と谷とでアメリカに行くぞ!”とか、“頑張れよ、谷!”って涙しながら言ってくださって。そんな感情豊かで涙もろい、熱い吉先輩が大好きです。エンターテイナーな吉先輩を尊敬していますし、目指したいです。

── どちらも親子をテーマにした曲、谷さんの代表作になりそうですね。

代表作にしたいですね。親子は普遍的で永遠のテーマです。MVには途中で僕の家族写真が出てきます。兄は仕事でいなかったので写っていませんが、親父も母も写っているので、これが残っていくことが本当に嬉しいです。カラオケDAMでも本人映像で出てくるので是非、歌ってください。

── 「杖」はまさに谷さんの人生そのものですね。

1人じゃ何もできなかったし、昔は今と性格も違っていたんですよ。全然しゃべらなくて、いつも母の背中に隠れているような子でした(笑)。上京して鍛えられましたね。

── デビュー18年、今後の目標や2024年の抱負をお願いします。

デビュー19年目に入りました。デビュー前は三船和子音楽事務所に所属して、4年間付き人として修行をしていましたので、トータル23年間事務所にお世話になっています。僕は両親にも愛情いっぱいに育ててもらいましたし、沢山の良いご縁をいただき、支えてもらいながらここまで歩んでくることができました。これからも健康一番で、2024年も人の心に刺さるような歌を歌っていきます!賞をとりたい、などといった欲もありますが、それは良い歌を歌った後に付いてくるものですよね。“一曲入魂!”そんな気持ちでこれからも歩んでいきます。

インタビュー・文・撮影:ごとうまき