【弁護士記者が挑む謎】カンテレ「ザ・ドキュメント逆転裁判官の真意」ディレクターインタビュー

インタビュー

退官直前に“逆転無罪”を連発した裁判長の真意に迫る!

 有罪率が99.8%を超える日本の刑事裁判。一審での無罪は珍しいが、二審での「逆転無罪」はもっと珍しい。
そんな中、退官直前に“逆転無罪”を連発した裁判官がいる。その名は福崎伸一郎。彼は最高裁判所の調査官を務めたこともある“エリート裁判官”で、退官前に逆転無罪を連発したことで週刊誌でも取り上げられ話題となった。しかし、あれから6年経った今もその真意は謎のまま……
そんな福崎氏の真意を追うドキュメント『ザ・ドキュメント 逆転裁判官の真意』が関西テレビで2023年11月24日(金)深夜1時25分~放送される。
今回放送に先立ち、本作品の試写と上田ディレクターにインタビューを実施した。“なぜ冤罪が起こるのか”、日本の刑事裁判の闇に切り込む上田ディレクターの思い、伝えたいメッセージとは?

大阪高裁法廷

あらすじ

 取材者は弁護士資格をもつ上田大輔ディレクター。企業内弁護士として関西テレビに入ったが、7年前に記者となった。冤罪事件を追い続けている上田ディレクターは、本作を企画する前から福崎氏に2度にわたって取材を申し込んでいるが返事をもらえなかった。
「最後の1年半で急に無罪が多くなっているには、何かしら最後だからというのが理由の一つとしてあるとしか思えない。話題になって然るべきだし、日本の刑事裁判を考えるヒントが隠されているのではないか……。そして今からでもこの謎を解き明かすことはできないか―。」
上田ディレクターはそんな思いを抱きながら、福崎氏の大阪高裁裁判長時代の判決文を集めて読み込んでいく。
すると福崎氏の様々な側面が浮かび上がる。上田ディレクターは福崎氏の真意を探るために関係者を尋ね歩くことにした。

上田大輔ディレクター

尋ね歩いた先は、”逆転無罪”の判決文の中で気になる事件を担当した弁護士たちや、退官して間もない元刑事裁判官、伝説の裁判官、そして上田ディレクターの原体験ともなった映画『それでもボクはやってない』を手がけた周防正行監督。彼らのインタビューを通して、少しずつ福崎氏の人柄や当時の仕事ぶりが浮かび上がる。同時に日本における刑事裁判の現状や問題も炙り出されるのだが……。
さらに福崎氏が東京高裁にいた時の裁判長で、「ロス疑惑銃撃事件」の逆転無罪を書いた秋山規雄氏の初のテレビ取材にも成功!このインタビューも見どころの一つである。
三度目の正直として、果たして上田ディレクターは福崎氏に会って真意を聞くことができるのか──。

木谷元裁判官

後藤弁護士

周防監督

上田ディレクターインタビュー

── 今作は弁護士資格を持つ上田さんだからできた取材だと思います。上田さんが企業内弁護士から記者になった経緯を教えてください。
上田
元々刑事裁判をしようと弁護士を目指しましたが、受かった時には、映画『それでもボクはやってない』に象徴されるような日本の刑事裁判に絶望を感じていました。それにこのような世界で僕はやっていけないと……、つまり逃げたのです。そこで興味があったテレビ業界で法務やコンプライアンス、著作権などを担当する弁護士として働いていましたが、どこかで刑事裁判のことが気になっている自分がいました。何か大きな事件が起こる度に、自分なりにもっと出来るのではないかと。そこで一度逃げた自分でも、記者としてなら一度は遠ざかった刑事裁判にまた関わることができるのではないかと、7年前に記者になりました。
上田
法曹として刑事裁判に取り組むことはしませんが、そのような場所に身を置いて、メディアを通して一般の方々に伝える役割なら私にも果たせるかもしれない、という思いが(記者になる前に)積もっていきました。 
── 今回の取材期間はどれ位でしたか?また取材を進める中で一番苦労した点を教えてください。
上田
番組制作の取材期間は2ヶ月弱ほどでしたが、福崎さんのことが気になった6年前から情報は収集していました。一番大変だったのは、膨大な数の判決文、資料を読み込んだことで、下準備に力を入れました。いろんな法律家に会ってお話する上で、一人一人の出した判決や過去の書籍を読んでいない質問をするとすぐに見抜かれてしまいます。こちらが対等に、前提知識を持った上で質問をしないと相手の本音も引き出せませんから。久々に学生の頃のように勉強しました(笑)。
──そもそも、なぜ日本の刑事裁判における有罪率はこれほどまでに高いのでしょうか。
上田
日本の高い有罪率の理由の一つは、検察が事前にしっかり絞って、確実に勝てないものは不起訴にしています。もう一つは裁判所などの制度に問題があるのだと。有罪と主張する中に無罪を見抜いていくのが根本的に難しいのです。裁判官の姿勢、取り組み方に問題があるのではないかと考えていましたので、今回このテーマに取り組みました。
── この作品を通して伝えたいメッセージとは?
上田
多くの一般の方は、日本の刑事裁判は真面目に、公平に行われていると思っていて、そういった信頼の下で成り立っていると思います。だけど本当は都合の悪いことは隠して、あるいは都合の悪いことは見えないように回っているのではないかと……、そういった気持ちがずっと拭えずにいます。それを詳らかに分かりやすい形で世の中に出されたものが、映画『それでもボクはやってない』です。私もこの映画を観た時に衝撃を受けて、これが私の原体験になっています。福崎裁判官という一人の人間を通して、福崎さんの逆転無罪が目立ってしまうような日本の刑事裁判は信頼できますか?そして日本の刑事裁判がどのようにして動いているのかを少しでも考えるきっかけにしてもらえたら嬉しいです。
上田
また今回、逆転無罪7件を福崎さんは書いていらっしゃいますが、関西テレビや他のメディアでもテレビニュースでは報じられていません。有名な事件でない限り、逆転無罪という判決が出ただけでは映像が撮れませんし、取材も難しいという課題があります。こういった日の当たらない重要な事件を報じていくのがマスメディアの役割として大切なのではないか、と感じています。
取材・文:ごとうまき