【ディレクターインタビュー】震災を知らない学生たちを追ったドキュメンタリーが1/31(金)放送!「震災を伝え続ける意味を改めて問う」

インタビュー

2025年1月31日(金)深夜1:25~2:25関西テレビにて「ザ・ドキュメント」30年目の難問 〜震災を知らない学生たちへ〜が放送される。6434人の命を奪った阪神・淡路大震災から30年経ったいま、街は復興したが、あの悲惨な光景を知らない人が多く存在する。本作では、阪神・淡路大震災後に生まれた学生たちが、震災を経験した人々と出会い、当時のことを知っていくリアルな姿を約1年半かけて追っている。取材から見えた彼女たちの葛藤や成長、そして何を見て、何を思ったのか──。改めて震災を伝え続ける意味について問いかけている。

関西大学の齊藤ゼミで、映像制作を学ぶ学生たちに与えられた卒業課題は「阪神・淡路大震災」。震災をテーマに取材し、ドキュメンタリーを作ることだった。そこで大学1年生の時から阪神・淡路大震災を継承するボランティア活動に参加していた石田瞳さん(大学4年)は、震災に関心がなかった同級生とともに自身の活動を取材するのだが、取材を通して、自分たちが生まれる前に起きた震災を伝えるという難問を突きつけられる。

また、2024年1月1日に発生した能登半島地震を石川県の実家で経験した新谷 和さん(大学4年)は、被災した能登半島を取材。さらに彼女たちは2016年4月14日と16日に発生した熊本地震の傷跡が残る場所にも向かうのだが──。震災を経験していない人、経験した人、それぞれの立場や視点から取材をし、30年経ったいま、“震災を伝える”ことの難しさを映し出している。

 本作を手がけたのは、関西テレビに入社して4年目の入道 楓さん。入道ディレクターも阪神・淡路大震災のことを知らない世代で、入社1年目で神戸支局に配属され、1年半、阪神・淡路大震災の取材を通して震災を知ったという。そんな彼女に作品への思いや、制作秘話を伺った。

── 2023年7月から2025年1月まで学生達を取材してこられましたが、大変だったことは?

入道
まずは、普段行っている取材とは違った点です。学生たちの取材を取材する形でしたので、彼らが誰に出会ってどんな場所に行くかも分からない状態で、さらに彼らのほとんどが震災に興味がない中でのスタートだったので、興味がないまま終わってしまったらどうしよう……といった不安もありました。私自身、入社してから阪神・淡路大震災についての取材をしていく中で震災当時のことを知ったので、この仕事をしていなかったら震災のことは身内から聞くだけで終わっていたと思います。なので、彼らの“興味がない”という思いも理解できますし、彼らが取材を通して命の尊さを感じていく部分にも共感できました。

── 1年半以上にわたる取材の中で印象に残っていることを教えてください。

入道
私は仕事で“震災を伝える”ということをしていますが、“いまの20代がどこまで震災を知らないのか”ということを知りませんでした。そして、自分たちが生まれ育った地域で、30年前に6000人以上の人が亡くなるような大きな災害があったことを多くの若者が知らないということを知りましたし、知らないままではダメだと痛感しました。あれから30年経ったいまでも、まだまだ苦しい思いをしている人たちがいる。そしてそれを伝えたい人がいて、その人に寄り添い、耳を傾けることが大切なんだと思いました。そしてそれが今後、自分たちの命、周りの人の命を守ることにも繋がるのです。

入道 楓ディレクター

── 取材を通して学生たちに対する思いはどのように変化しましたか?

入道
最初は19人の学生の個性や性格が分からない中でのスタートでしたが、一緒に学びながら1年半過ごし、交流を深める中で、彼らがとても可愛く思えてきました。卒業課題なので、正直、単位を取るためだけに臨む子もいるのかと思いきや、それぞれが取材にのめり込み、関心を示していたところにも心を動かされました。彼らが社会人になった時、この経験が生かされるといいなと思います。

── 阪神・淡路大震災を知らない世代、そして震災を経験した人々、それぞれの視点から映しているからこそ、さらにこのテーマに深みが出ますよね。

入道
経験したからと言って、伝えることが簡単にできるわけではないんです。そして、いまの若者にとっても、震災を伝えてくれる人との出会い、知れる機会に恵まれることはとても貴重なことです。震災を経験していない人も、震災を経験した人達の話を聞くことで、その痛みや辛さを感じることはできるのだと、この制作を通して実感しています。

── 番組を通して伝えたいメッセージは?

入道
阪神・淡路大震災を知っている、または経験した世代には、若い世代が当時のこと、震災のことを知らないんだということを理解してほしいです。そして、もし伝えたいと思っている人がいれば、伝えて欲しいです。そして震災を知らない世代の人には、経験した人に訪ねて行けば教えてくれる人は必ずいるんだ、ということを実感してもらいたいです。この番組を通して、視聴者の皆さんのそれぞれの心に何か残れば嬉しいです。

インタビュー・文:ごとうまき