【医師とピアニストの二刀流へ】双子ピアノユニット・兄ーズが明かす、メジャーデビューアルバム『Circle』への想いと絆

アーティスト

2026年7月22日に待望の初メジャーCDアルバム『Circle』をリリースした、双子ピアノユニット「兄ーズ(annies)」の山下順一朗さん(兄)と山下宗一郎さん(弟)。2歳から絶対音感トレーニングを積み、国際コンクールで優勝を果たす圧倒的な演奏技術を持ちながら、現在は2人揃って医学部に通う「現役医大生ピアニスト」としても大きな注目を集めています。

クラシックから映画音楽、ポピュラー音楽までジャンルを超えたピアノ1台で届ける至高のエンターテインメント——。今回は、アルバム『Circle』の制作裏話や、医学部受験とピアニスト活動の両立、そして双子ならではの息の合った連弾の秘密について、たっぷりとお話を伺いました。

似ているようで違う2人の個性

——お二人のお互いの性格や、リスペクトしている部分について“他己紹介”のような形で教えてください。

順一朗
宗一郎はすごく明るくて元気ですね。何事にも積極的に手を伸ばそうとする、挑戦心が旺盛で熱い男なんです。連弾ペアとしてのリスペクトで言うと、抑揚の付け方が本当に上手いなと感じています。

宗一郎
僕は好奇心が旺盛な反面、いろいろ取り組もうとしすぎて過去に消化不良を起こすこともあって(笑)。その点、順一朗は「今の自分にこれが必要か」「後回しでも大丈夫か」という判断をすごく客観的にできるんです。その冷静な判断力は、僕も見習いたいなと思いますね。

——ご兄弟での喧嘩などはよくされるのでしょうか?

宗一郎
すっごくしますよ!日常茶飯事です(笑)。

順一朗
ただ、数自体は多いんですけど、スケールはすごく小さいんですよ(笑)。だいたいピアノの練習中の意見のぶつかり合いで。

宗一郎
数時間経つと何事もなかったかのように自然と仲直りしていて。「ごめんなさい」と言い合うわけでもなく、2時間後には普通に喋っていますね。何日も口をきかないなんてことは全くありません。

父のハプニングから始まったピアノ人生

——お二人は2歳から絶対音感トレーニングを始められたそうですが、ご家庭の音楽環境はどうだったのでしょうか?

順一朗
2歳の頃の記憶はさすがになくて、覚えているのは6歳くらいからですね。実は、両親が特別音楽家だったというわけではないんです。母はピアノにほぼ触れたことがなくて、父も昔少し習っていた程度でした。

宗一郎
ピアノを始めたきっかけもちょっと変わっていて。ある日、父が酔っ払って電子ピアノを買ってきたんです(笑)。母が「これどうするの!?」となったときに、僕たち二人に焦点が当たって「じゃあ二人でピアノを習わせてみようか」と。あの酔っ払いのハプニングがなかったら、今の僕らはここにいないかもしれません。

——ちなみに絶対音感があるとのことですが、日常の音もドレミで聞こえてきたりするのでしょうか?

順一朗
救急車のサイレンの音もドップラー効果で綺麗に音が下がっていくのが分かりますし、コンビニの入店音なんかも全部ドレミで聞こえます。

難病の弟のために

——クラシックを中心に歩んでこられたお二人ですが、学業面では難関の医学部へ現役合格されています。医師を目指したきっかけは何だったのでしょうか?

順一朗
僕たちには11歳になる弟がいるのですが、生まれた時に産声を上げず、そのまま人工呼吸器つけての寝たきりの生活が始まりました。当時僕らは小学3年生でしたが、「絶対に弟を治したい」という強い想いが芽生えたんです。

宗一郎
成長するにつれて、「病気を治すには医師になる必要がある」「そのためには医学部へ行く必要がある」と現実的なルートが分かり、高校1年生の時から二人で医学部を目指して本格的に受験勉強をスタートしました。

——受験期とピアニストとしての活動は、どのように両立されていたのですか?

順一朗
高校3年生の夏まではコンサート活動を並行して続けていました。直前までは勉強8割・ピアノ2割くらいで、7月下旬のコンサート直前だけはピアノに集中する生活でしたね。

宗一郎
でも、夏のコンサートが終わった翌日に受けた模試の成績が本当にずたぼろで……。「このままだと間に合わない、やばい!」と焦り、そこからは一切ピアノの部屋に入らず、半年間完全に封印しました。

順一朗
朝9時に予備校に行って夜9時まで勉強し、家に帰ってお風呂とご飯を30分で済ませて、また深夜まで勉強する。本当に「寝る・食べる・勉強する」だけの極限のストイックさで乗り切りました。中学受験の際も小6の夏までコンクールに出ていたので、半年間ピアノを離れること自体には迷いがなかったですね。

——大学はお二人で別の大学を進学先に選ばれたそうですが、何か発見はありましたか?

宗一郎
お腹の中にいる時から高校までずっと同じ環境で、高校2年の時なんて同じクラスで昼休みのサッカーグループまで一緒だったんです(笑)。

順一朗
だから大学で初めて離れて、エンジョイフル!お互いに羽を伸ばせています!ただ、試験の時期が僕は9月上旬、宗一郎は7月中旬とバラバラになったので、夏の練習スケジュールを合わせるのが難しくなったのは別々の大学に通う唯一のデメリットですね。

初のオリジナル曲「Circle」

——今回発売された初のメジャーCDアルバム『Circle』について伺います。タイトル曲でもある「Circle」は、初めて作曲されたのですね。

順一朗
ゼロからの楽曲制作だったので、本当に時間がかかりました。試行錯誤を繰り返し、トータルで4〜5ヶ月ほどかかっています。

宗一郎
最初は「どんな曲にするか」というテーマ決めから入り、フレーズを持ち寄って音を足していきました。クラシックの専攻で作曲法を専門的に学んできたわけではないので、普段聴いている大好きな楽曲に無意識に似てしまって「これだと著作権的に危ないかも!」と焦って作り直す場面もありました(笑)。

——アルバム全体を通して、選曲や曲順のこだわりを教えてください。

順一朗
僕たちのコンサートは「音の遊園地」をコンセプトに、ジャンルを問わず子どもから大人まで誰もが楽しめる構成にしています。今回のアルバムもそのコンセプトをぎゅっと凝縮したベスト盤のような内容です。

宗一郎
曲順もすごく意識しました。全体の波(ストーリー性)を感じてもらえるよう、軽快なナンバーから始まり、しんみり聴かせるセクションを経て、最後に向かって再びドラマチックに盛り上がっていく流れを組み立てています。そしてラストを締めくくるのが、僕たちの決意を込めたオリジナル曲「Circle」です。

あえて合図を決めない——双子だからこそ生まれる「一心同体」の連弾

——1台のピアノを二人で演奏する「連弾」において、双子ならではのシンクロ感や難しさは感じますか?

順一朗
連弾の難しさは、片方のミスが即座に「連帯責任」になるところですね(笑)。ダブルスと同じで、一人失敗すると二人の演奏として崩れてしまう。

宗一郎
先日のコンサート後の打ち上げでも、焼肉を食べながら会話の半分くらいはミスについての反省会でした(笑)。でも、双子だからこそ息を合わせるための大掛かりなサインや合図を決めなくても、「あ、そろそろ入るな」というのが感覚的に分かります。

順一朗
友達同士の連弾だと「1、2、3、4」としっかりテンポを取ったり視線を合わせたりして入ることが多いと思うのですが、僕らは言葉にしづらい波のような感覚でシンクロできる。そこは僕たちならではの強みですね。

——プライベートでもシンクロすることはありますか?

宗一郎
トイレに行くタイミングが全く同じです(笑)。体格も生活リズムも同じなので、人体の容器が同時に満タンになるみたいで。家ではトイレの優先権を賭けた勝負が日常茶飯時です。

順一朗
あと、会話で言おうとする内容とタイミングが完全に被るのも、周りの人からよく指摘されますね。

「心身を治す医師」と「心を癒やすピアニスト」の両立を目指して

——今後のピアニストとしての活動目標と、将来の展望をお聞かせください。

宗一郎
ピアニストとしては、全国すべての都道府県を巡るツアーを開催することが目標です!今年は東京・大阪・愛知・千葉・北海道などを回りますが、まだ行けていない九州や四国、中国地方、沖縄のファンの方々にも生演奏を届けに行きたいです。

順一朗
そして直近の目標としては、とにかく医大生として目の前にある一つひとつの進級試験や単位を確実にクリアしていくこと。医学部は一科目でも落とすと全部やり直しになってしまう厳しい世界なので、学業を第一に足元を固めていきます。

宗一郎
最終的には、「心身ともに患者さんを治せる医師」であり、「音楽で人の心を温かく癒やせるピアニスト」という二刀流を確立させていきたいと思っています。自分たちの音楽を通じて、これからも多くの皆さんに笑顔と感動を届けていきたいです。


ライター・後藤
【取材後記】取材中、終始笑顔を絶やさず、お互いに軽快なツッコミを入れ合いながら語ってくれた山下順一朗さんと宗一郎さん。幼少期からの絆と、弟への深い愛情、そして医学と音楽の双方に対する並々ならぬ情熱がひしひしと伝わってくる時間でした。二人の手によって生み出される奇跡の連弾ハーモニーと、進化を続ける「兄ーズ」。今後の更なる活躍が楽しみです!

インタビュー・文・撮影:ごとうまき