【歌の伝道師】葵かを里インタビュー“奇跡の曲”ができました。

インタビュー

舞いながら歌う艶歌歌手・葵かを里のデビュー20周年記念シングル「城端 曳山祭」が2024年3月6日に発売された。国の重要無形民俗文化財やユネスコ無形文化遺産に登録されている「曳山祭」を舞台に、富山県南砺市(なんとし)城端(じょうはな)地区の特産物「玉繭」をイメージし、愛する人からそっと身を引いた女性の切ない恋心を描いている。哀愁あふれるドラマティックな今作は、葵の20周年記念シングルに相応しい曲となっている。

当メディアでは3度目のロングインタビューとなる葵さんに「城端 曳山祭」の誕生秘話や制作エピソード、デビュー20周年への想いを語っていただきました。

奇跡が交わりできた曲

── 城端の曳山祭を題材にされた背景は?

応援してくださっているご夫妻が富山・城端の方で、以前から富山に良いお祭りがあるから是非見て歌にしてほしいと言われていました。そして昨年の5月5日にご招待いただき、作詞の麻こよみ先生と伺いました。その時は「吉野千本桜」を歌って頑張っている最中でしたし、まだ、どのような歌になるのかわからない状態でしたが、急遽カメラを回していただき、そこで、撮影したものが、今回のMVの所々に取り入れてありますので、臨場感を感じていたただけるのではないでしょうか。

── まっさらな状態のものから出来上がったのですね。

普通は曲が出来てからMVを作りますが、今回は全く逆。なにせ詞ができていないのでどこを撮ったらいいか分からない状態での撮影でした。見に行った後に、麻先生が上品なお祭りが葵かを里の世界にピッタリだと言ってくださり、すぐに作品に取り掛かりました。出来上がった詞と映像を照らし合わせると不思議なことに、ピッタリと重なって……。

── 奇跡の歌、奇跡のMVですね。

驚きました。出来上がったMVを見ると、応援してくださっているご夫婦のご主人が映っているんです。さらに最後のシーンではお祭りに携わっているご主人の息子さんも映っている。ここにも奇跡が散りばめられていて、不思議です。そしてメロディーや編曲で曳山祭りの雰囲気や音を再現していただきました。MVの舞踊を撮影した場所はじょうはな座になります。

── “玉繭”というワードも歌詞にありますが、どのような意味が込められていますか?

2頭の蚕が共同で1個の繭にしたものを「玉繭」。玉繭のように2人で生活していく夢を見たけど、残念ながら叶わなかった、という物語がこの歌にあります。2つの蚕が糸を紡ぐので、繭玉のかたちもいびつで綺麗な生糸を引くことができませんが、それゆえに味のある玉糸ができる。玉繭からできた“しけ絹”の着物をポスターなどでも着ているのですが、この着物もご夫婦の奥さまのもの。プレゼントしていただきました。

カップリングは自身が作曲

── カップリング「夫婦滝」では今回も茶野 香 名義で葵さんが作曲をされましたね。イントロでは滝が流れるイメージが浮かびます。

富山県南砺市の林道を流れる二つの滝が一つに交わる滝。実際に麻こよみ先生と見に行って、詞を書いていただきました。川中美幸さんの“しあわせ演歌”をイメージして、明るく軽やかな曲を、昭和の懐かしいメロディーに仕上げました。やっと夫婦になったので、“2人で1人”の部分は強調したく、2回繰り返しています。

── 桜ヶ池で桜の植樹も行ったり、「南砺観光特使」を委嘱されたりと、デビュー20周年に相応しいイベントが盛り沢山ですね。

偶然にも植えた桜の木の前に常設のベンチとテーブルがあるので、お花見もできる。いい記念になりました。こんな良い形で出来上がるなんて夢にも思っていませんでした。

── 20年を振り返って、これまで印象的な出来事や思い出はありますか?

まずは、デビューできたことが大きなポイント。名取をいただいてから、“舞いながら歌う艶歌歌手”というキャッチコピーで今もブレることなく続けていますが、ここも大きな転機となりました。そして2年前に独立したことも大きな出来事でした。演歌歌手・葵かを里の前にマネージャーであり事務員として、葵かを里をやっていますので……。事務所にいた時も同じことをしてきて軽々とこなしていたはずなのですが、独立して1人でやるようになってからは大変。きっと責任感も生まれたのでしょうね。

── 今年でデビュー20周年になりますが、今後挑戦したいことは?

今後も、全国に歌の舞台の歴史、文化等を発信していく“伝道師”として活動していくことが私の課題だと思っています。日本に良いものが沢山ありますから、皆さまに伝えていく歌手としてとことんやっていきたい。ただ、“舞いながら歌う”こともブレずにやっていきたいので、コンセプトに合うような場所や伝統を選びながら伝えていきたいです。作曲活動ではカップリングなどで続けていけたなら……。来年で本当の20周年。原点に戻った気持ちで頑張っていきますので、これからもよろしくお願い致します。

インタビュー・文・撮影:ごとうまき