【海宝直人インタビュー】モーツァルトの影に隠れたもう一人の天才が魅せる人間賛歌「最高の相棒には折々に出会っている。」

インタビュー

世界的に有名な音楽家・モーツァルトの名作オペラ『フィガロの結婚』『ドン・ジョバンニ』『コジ・ファン・トゥッテ』が誕生した背景には、もう一人の天才の存在があったことを知っていますか?その天才の名はダ・ポンテ。台本作家であり、モーツァルトとの出会いによってその才能を開花させた人物です。そんなダ・ポンテの人生とモーツァルトとの出会いや、制作に没頭した若き天才たちの軌跡を描いた音楽劇『ダ・ポンテ』が大阪・新歌舞伎座にて2023年7月20日(木)〜24日(月)まで上演されます。今回ダ・ポンテ役を務める海宝直人さんにインタビュー。女好きで詐欺師のダ・ポンテへの役作りについて、公演への意気込みやプライベートについて、お話を伺いました。※取材時は4月中旬、稽古が開始する前。

不器用で人間臭いダ・ポンテに魅了される

——今分かる範囲で音楽劇『ダ・ポンテ』は、どのような作品ですか?

海宝
基本的には楽しいテイストの作品です。その中にダ・ポンテの生い立ちやモーツァルトとの関係性、彼との出会いから決別に至るまでのことが描かれています。1829年ニューヨーク、年老いたダ・ポンテが若い頃を回想するシーンから始まります。今回はオリジナル新作なので自由度も高いし、稽古をしながら作品がどのように変化していくのか、胸が膨らみます。演出家の青木豪さんと役者の皆でディスカッションしながら創り上げていくのも楽しみです。登場人物の内面に寄り添った作品に仕上がるのではないでしょうか。

——台本を読まれた時の率直な気持ちと、ダ・ポンテのキャラクターについて教えてください。

海宝
モーツァルトは有名な一方で、ダ・ポンテはあまり知られていません。僕も今回初めてダ・ポンテを知り、彼のことを調べていくうちに、“なんて濃い人生なんだろう”と、驚きました。ダ・ポンテは、とにかく名声を手に入れたい、評価してもらいたいという一心で、自分に正直に生きてきた人。ちょっとしたタイミングが合わなかったり、人の良さにつけ込まれて、不遇な運命を辿ってしまった。それでも80歳過ぎて、当時はイタリア文学など知られていなかったアメリカの地に学校を作ったりと、諦めずに貪欲にやり続けた人です。彼の生き方、パワーが魅力的ですね。

——ダ・ポンテに共感するところはありますか?

海宝
彼が好きなことを一途に追い続ける部分には共感します。自分の才能に自信を持っているのに、不器用で世渡り下手。このアンバランスさが人間臭くて良いんですよね。それに、僕も思い通りにいかなかったり、自分が理想とする表現を掴めなかったりと悩むことも。共感する部分もある一方で、自分とは遠いキャラクターだと思っています。だけどそのほうがアプローチしやすいんです。

モーツァルト役・平間壮一との掛け合いも見どころの一つ

——ダ・ポンテについては今作で初めて知られたとのことですが、モーツァルトについてはどのような印象をお持ちですか?

海宝
とても破天荒だという印象があります。映画『アマデウス』が好きなんですが、彼のエピソードを聞いてもかなりぶっ飛んでいる。それでいて、あの整理された美しい音楽を生み出しているんだから、凄い人ですよね。

——モーツァルトを演じる平間壮一さんについて教えてください。

海宝
以前『ミュージカル バイオハザード』でご一緒しましたが、情熱に溢れた素敵な俳優さんで、皆から愛される人。その時はあまり絡むことはできなかったのですが、今回は親友役として、がっつりご一緒できるのでワクワクしています。

——音楽劇とのことで、今作はどのような楽曲が用いられていますか?またモーツァルトのオペラに対するイメージは?

海宝
アレンジの中にクラシックの要素が取り入れられたり、キャラクターの内面を描き出すような楽曲など、30曲以上を楽しんでいただける内容となっています。当時、オペラはセンセーショナルなものだったと思うんです。そんな中で、モーツァルトとダ・ポンテはそこの感覚が合致した。新しい価値観を表現すると言う点でも、2人ともアーティストなんですね。天才の2人が出会い、鼓舞し合いながら、あの有名なオペラを作り上げた。ダ・ポンテは不幸でもあり、とても幸運なんだと思います。劇中ではオペラを2人で作る過程も描かれています。

子役時代を知っている人との再会や共演は特別なものがある

——ダ・ポンテとモーツァルト、最高の相棒が出会って才能を開花させましたが、海宝さんも最高の相棒と言えるような方と出会ったことはありますか?

海宝
折々に出会っていますが、子役時代にご一緒した方達と大人になってから共演するのは新しい発見や刺激もあって、感慨深いですね。今回ご一緒させていただく鈴木結加里さんには、僕が劇団四季『ライオンキング』でヤングシンバ役をさせていただいた時に指導していただきました。厳しくて怖かった(笑)。だけど愛情を持って、いろんなことを教えてくださったので感謝していますし、今でも頭が上がりません。

——プライベートについても教えてください。忙しい海宝さんのリフレッシュ方法は?

海宝
やっぱりお風呂ですね!僕、長風呂なんですよ。『太平洋序曲』の大阪公演中にも一度、温泉に行きました。以前からサウナが流行っていますが、僕は水風呂がどうも苦手で。「水風呂上がった後の外気浴で気持ち良くなるから!」って、周りに言われるけどずっと寒いまま(笑)。いつかは“整いたい”と思っています(笑)。あとは煮詰まると、よくドライブをします。コロナ禍になって自動車の免許を取ったんですが、車の運転って楽しいですよね。この間は、車内で音楽を爆音でかけて、新東名高速道路を120キロで走りましたよ。(一部区間は、最高速度120キロが可能になっている)

20代の頃と変化した役者の心意気

——子役から活動されている海宝さん、20代の頃と現在、仕事に向き合う姿勢はどのように変化していますか?

海宝
20代前半の頃は、今よりも肩肘張っていたように思います。台本も隅から隅までしっかり読み込んで役作りをして、用意周到で臨んでいましたが、いろんな先輩、役者さんと関わっていく中で、そこまで気負う必要もないし、自分1人で創るものではないんだと改めて知りました。何より大切なのは、カンパニーの皆でセッションしながら一緒に創り上げていくこと。今回もどんな作品に仕上がるか、期待に胸が弾みます。

——ご覧になる方に作品を通して伝えたいことや、関西のお客さまへメッセージをお願いします。

海宝
ダ・ポンテは、破天荒で不遇な人生を送った人です。“長い人生の一瞬を照らす花火——”とあるように、人生の中では素晴らしい瞬間がある。それがダ・ポンテとモーツァルトが過ごした4年6ヶ月。人生いろいろ、でも悪いことばかりじゃないよね、生きるっていいよね!という人間賛歌です。関西のお客さまは熱い方が多いですね。東京では起こらなかった笑いが関西では起こったりと、反応も違うから楽しいし、毎回新鮮な気持ちで舞台に立たせてもらっています。これからお稽古を重ねて、カンパニーの皆で素晴らしい作品に仕上げていきます。劇場でお待ちしています!

公演概要

音楽劇『ダ・ポンテ~モーツァルトの影に隠れたもう一人の天才~』
公演期間 2023年7月20日(木)~24日(月)
料金 (税込)
S席(1・2階) 12,500円
A席(3階) 6,500円
特別席 13,500円

チケット:音楽劇『ダ・ポンテ ~モーツァルトの影に隠れたもう一人の天才~』 ○一般発売 | 新歌舞伎座ネットチケット[演劇 ミュージカル・ショーのチケット購入・予約] (pia.jp)(2023/5/21(日) 10:00より発売)

新歌舞伎座テレホン予約センター06-7730-2222(午前10時~午後4時)

取材・文・撮影/ごとうまき