【杜このみ インタビュー】こぶしを封印して挑む大人の恋、そして原点への回帰

インタビュー

2013年のデビュー以来、圧倒的な歌唱力と瑞々しいキャラクターで演歌・民謡界を牽引してきた杜このみさん。2026年7月22日(水)、新境地を開くニューシングル『告白』がリリースされます。

作詞・麻こよみ、作曲・杉本眞人という黄金タッグを迎え、「こぶしを使わない歌唱法」に初挑戦した今作。2児の母、そして力士の妻として“二足のわらじ”を履きこなす彼女に、新曲への想いから師匠・細川たかし氏とのエピソード、私生活との両立までお話を伺いました。

杉本眞人が直感した「杜このみに『告白』を」

――今回の新曲『告白』を聴かせていただきました。大人の女性のしっとりとした魅力が溢れる作品ですね。

ありがとうございます。今回は久しぶりの2パターン発売で、ジャケットもカップリング曲も全く異なる仕様になっています。表題曲『告白』は演歌の枠を超え、フォーク世代の方や演歌に馴染みのなかった若い世代にもスッと届く、大人のラブソングに仕上がりました。

――今作も杉本眞人先生が作曲を手掛けておられます。一度聴いたら忘れられないサビの部分が印象的です。

実はこの曲、杉本先生が「杜このみに『告白』という曲を作りたい」とタイトルを先に考え、そこからメロディーが生まれ、最後に麻こよみ先生の詞がついたという、少し特殊な順番で作られたんです。

――杉本先生から絶大な信頼を寄せられている証拠ですね。

いえ、実は前作で初めてお会いしたとき、先生の中で私のイメージはあまり良くなかったようで(笑)。「定番の演歌しか歌えないんだろう」と思われていたそうです。私は幼少期から民謡をやってきましたが、演歌歌手一本を目指してきたわけではなく、ジャンルを問わず音楽そのものが好きでした。それをお伝えした上で、レコーディング前のキー合わせで先生が初めて私の生の歌声を聴いてくださったとき、「魂の叫びのようなものを感じる」と驚いてくださって。「こぶしが回るとかそういうことじゃない、お前の歌には魂がある」と言ってくださり、そこから応援してくださるようになりました。「次も俺が作る」という言葉から生まれたのが、この『告白』です。

「こぶし封印」で引き出された素直な自分

――「こぶしを使わない歌唱法」への挑戦、歌ってみていかがでしたか。

私自身、子どもの頃から演歌をステレオタイプに聴いてこなかったので、こぶしを使わない方がむしろ自然体で、作品の世界に入り込みやすかったんです。「私はこういう歌を歌いたかったんだ」と、新しい扉が開いた感覚がありました。上手く歌おうとするのではなく、一人の等身大の女性のピュアさ、想いを伝えられないもどかしさ、それでも伝えようとする強さ――そうした矛盾した人間らしさをシンプルに表現したく、今回はキャラクターを作り込まず自然体でレコーディングに臨みました。

――結婚し、2人の子を持つ母親として歌うラブソング。独身時代との心境の変化はありますか。

もともと結婚願望は無かったのですが、心から尊敬出来る夫(髙安関)と出逢って、たった一度の人生を支え合いながら謳歌したい。と思うようになりました。仕事とプライベートの両立は本当に目の回るような忙しさですが、歌わせていただける有り難さを以前より強く感じています。だからこそ、大人の葛藤を描いた『告白』の切なさが、より深く胸に沁みるのかもしれません。

自身の記憶と重なるカップリング『望郷夜風』

――Aタイプ収録のカップリング曲『望郷夜風』も味わい深い演歌ですね。

歌詞が私の人生とドンピシャで驚きました(笑)。北海道・札幌出身の私にとって、2番の「泣きながら泣きながら母親と別れたあの日」「この頃電話もしないまま」「 小さな身体で無理をしてないか」という歌詞は、上京当時の記憶と完全に重なります。

細川たかし師匠に出会ったのは17歳、デビューして上京したのは23歳の終わり頃でした。「修行期間中は進学するな!就職もするな!」と言われ、アルバイトをしながら過ごした約6年間の下積み時代は長く、「このまま歌手になれないのかも」と不安になった時期もありました。

――そうした苦境を乗り越えたからこそ、この曲の重みが増すのですね。

はい。20代前半の新人だった頃には、まだこの深さは歌えなかったと思います。結婚してから、相撲の厳しい世界で15歳から頑張る若い力士の姿を間近で見る機会も増え、親元を離れて夢を追う彼らの人生とも重なり、歌いながら胸が熱くなります。メロディーには杉本先生らしいロックテイストもあり、そのアンバランスさが格好良い一曲です。

原点・民謡への想いと即興のジャズセッション

――Bタイプには北海道民謡『江差追分-前唄-』と、富山県民謡をアレンジした『こきりこ節(ジャズVer.)』が収録されています。この選曲の理由は。

『告白』をきっかけに初めて私を知ってくださる方にも、原点である民謡を届けたいという想いがありました。民謡は「敷居が高い」と思われがちですが、実は日本人のDNAに深く組み込まれた、素朴で格好良い音楽なんです。

『こきりこ節(ジャズVer.)』は、札幌時代に一緒にバンドを組んでいたジャズピアニストの工藤拓人さんとセッションしました。楽譜はなく、その場の空気感だけで作り上げた即興です。民謡の解釈を工藤さんに委ね、ジャズと和が融合した斬新な仕上がりになりました。レコーディング風景をそのまま切り取ったようなミュージックビデオも見ていただきたいです。

 夫・髙安関とのリスペクト関係、「開拓者」としての決意

――夫・髙安関のフランス公演にも同行されたそうですね。

はい。事務所にお願いして1週間だけフランスへ渡り、現地で合流しました。日本の文化や民謡・民舞がフランスの方々に熱く受け入れられているのを肌で感じ、大きな刺激を受けました。いつか演歌や民謡のコンサートを世界でやりたいという夢が生まれました。

――髙安関も杜さんの挑戦を応援してくださっているのですね。

夫は15歳から厳しい大相撲の世界で稽古を積んできた人で、人として心から尊敬しています。そんな夫が「ステージの上で一人で歌っているこのみの方が何倍も凄いよ」と言ってくれるんです。異なる厳しい世界に身を置いてきたからこそ、リスペクトし合える関係だと思います。

――育児と仕事の両立、前進し続ける秘訣は。

最初は完璧を求めすぎて、深夜3時に起きて料理を作るなど自滅しかけていました(笑)。やはり一番の悩みは
子どもたちと触れ合う時間が減った事でしたが、でも母が「会える限られた時間の中で抱きしめて『大好きだよ』と伝えれば大丈夫」と言ってくれて、肩の荷が下りました。それから、周りに甘える開き直りも大事だと学びました。

「女性は結婚したら夢を追いかけてはいけない」という風潮は、日本ではいまも根強く残っているように思います。妻、母になっても夢は追いかけて良いんだと。私が歌で結果を残して証明していきたいです。

師匠・細川たかしからの教え「人生は回転寿司」

――今回の挑戦について師匠は何と。

新曲はまだ聴いてもらえていませんが、方向性をお話ししたときは「いいじゃないか」と背中を押してくださいました。師匠も「日本人の原点は民謡だ」という信念をお持ちで、今回の挑戦も温かく見守ってくださっています。師匠の教えで忘れられない言葉があります。「人生は回転寿司なんだよ」と(笑)。

――回転寿司、ですか。

「大トロという最大のチャンスが流れてきたとき、お腹がいっぱいだからと見送ったり、掴み損ねたら、もう二度と回ってこない。だから常にアンテナを張って、これだという大トロを瞬時に見極めて掴み取らなきゃいけないんだ」と。鋭くて素敵な教えだと感動しました。最近の師匠は髪型やファッションばかり注目されがちですが(笑)、歌の実力は本当にモンスター級。若い世代にも演歌や民謡の格好良さ、そして師匠の凄さをもっと伝えていける存在になりたいです。

――最後に、ファンの皆さまへメッセージを。

デビューして13年、いつも支えてくださる皆様に今一番伝えたい“告白”は、心からの「大好き」と「感謝」です。今回の『告白』は、誰もが胸に抱く切ない恋心を美しく描いた大人のラブソングです。皆様の心に届くよう一生懸命歌っていきますので、応援よろしくお願いいたします!

【リリース&イベント情報】

■ ニューシングル『告白』 2026年7月22日(水)発売/定価:¥1,700(税抜¥1,545)

  • Aタイプ(TECA-26035):告白/望郷夜風
  • Bタイプ(TECA-26036):告白/江差追分-前唄-/こきりこ節(ジャズVer.)

■ 杜このみ“推し会”イベントスケジュール

  • 2026年8月21日(金)in札幌@ムジカホールカフェ 18:00開演
  • 2026年8月27日(木)in東京vol.3@歌舞伎町劇場 13:30開演

お問い合わせ:このみ倶楽部 03-6435-2195(平日11:00〜18:00)

【SNS】

インタビュー・文・撮影:ごとうまき