【渾身のミステリー小説が映画化】『コリーニ事件』

ドイツ史上最大の司法スキャンダル、ラストは衝撃と慟哭に包まれる

2001年ドイツ、弁護士になって3か月の新米弁護士カスパー・ライネンは、ある殺人事件の国選弁護人に任命される。事件は、30年以上にわたりドイツで模範的な市民として暮らしてきたイタリア人、ファブリツィオ・コリーニが、経済界の大物実業家ハンス・マイヤーをベルリンのホテルで殺害したというもので、しかし被害者の実業家ハンス・マイヤーは、ライネンを少年時代から支える祖父代わりのような人であったことを事件を引き受けたのちに知ることに。大切な人を殺した男を、弁護しなければならない複雑な思いを胸に、ライネンは黙秘を決め込み動機も語らないコリーニと向き合っていくのだが、少しずつ事件を深く調べるうちに見えてくるコリーニの生い立ちと壮絶な過去、ひいてはドイツ史上最大のスキャンダルと、衝撃的な真実に直面する。本当の正義とは何かを問う作品。

ミステリーとヒューマンドラマが融合

この作品のおもしろいところはただのミステリーではなく、ヒューマンドラマが交錯しているところだ。そしてそれによって衝撃的な真実と感動が沸く。キーワードは、「正義」「ナチス」「武装親衛隊」そして複雑に絡み合う人間模様、そしてエンドロールはしっかり観てほしい。

原作は現役の刑事事件弁護士である作家フェルディナント・フォン・シーラッハの同名小説。「コリーニ事件」は、日本でも「このミステリーがすごい！」「ミステリーが読みたい！」などのランキングで上位を獲得。シーラッハはドイツの法律の”「法の重大な落とし穴」を暴露、これによりナチスの戦争犯罪を再審議する動きがあり、90歳になる元ナチス出身者が裁かれたりする事例があったそうだ。そのくらいドイツ内で大きな話題となり、ドイツ連邦法務省までも動かした衝撃作である。

上映館

シネリーブル梅田

シネリーブル神戸

京都シネマ

監督：マルコ・クロイツパイントナー

キャスト：エリアス・ムバレク、フランコ・ネロ

原作：フェルディナント・フォン・シーラッハ

製作：2019年製作／123分／G／ドイツ

原題：Der Fall Collini

配給：クロックワークス

公式サイト： https://collini-movie.com/

あまりドイツ映画は観たことがないのですが、新たなドイツの歴史を知ることができとても勉強になりました。ラストに近くなるほど声を上げて泣きたくなるほどの展開。そして何といっても演出がいちいちお洒落。インテリア、景色、ファッション、イタリアのトスカーナの美しい街並み。ミステリー映画でありながらも優雅さがほんのり漂うのはこういった演出があって邦画では出せないなと。個人的に2020年上半期ベスト1の作品、「パラサイト」を余裕で超える、自信を持っておススメする傑作です。

文／ごとうまき