久本雅美が語る、WAHAHA本舗『最後のショービジネス』――「本当に最後かもしれない。だから全力でぶつかる」

インタビュー

1984年の旗揚げ以来、演劇でも演芸でもない唯一無二の“ワハハワールド”を届けてきたWAHAHA本舗。2年ぶりとなる特別公演のタイトルは、ずばり『最後のショービジネス』。11月から2月にかけて全国13カ所を巡り、大阪では森ノ宮ピロティホールに登場する。創立メンバーの久本雅美に、刺激的なタイトルに込めた本気の思い、主宰・喰始とのものづくり、そして年齢と向き合いながら舞台に立ち続ける覚悟を聞いた。

「最後」は本気。でも、始まりでもある

――仮タイトルは「遺作」、次に「END」、そして正式タイトルが『最後のショービジネス』。このタイトルをどう受け止めましたか。

久本
タイトルは喰(始)さんが決めるんですけど、以前一度「ラスト」という公演をやったことがあるんです。そのときは喰さんが、年齢を重ねて、ワハハに縛られずいろんなことにチャレンジしたい、自由になりたいと、本気で「ラスト」とおっしゃった。でもワハハの世界は唯一無二で、私たちにとっても大切な世界。やめてほしくないし、やめさせない。お客様の「やめないで」という熱い思いも伝わってきて、喰さんも「やっぱり続けなきゃ」と。それで「ラスト2」「ラスト3」と続いて(笑)。本人は「スター・ウォーズみたいなもんだ」なんて言い訳してましたけど。

久本
今回は、喰さんも70代後半、創立メンバーの柴田(理恵)も佐藤(正宏)も梅垣(義明)もすずまさも、私も60代後半。タイトルを聞いたとき、みんなが元気に舞台に立てていること自体がもう奇跡だなと思いました。誰がいつどうなるかわからない“お年頃”ですから。喰さんも「本気で最後と思っているわけではないけれど、最後になるかもしれないという心意気で。逆に言えば、これはまた始まりなんだ」と言っていました。だから私も、本当に最後かもしれないという思いで全力でぶつかって、ワハハのど真ん中のショービジネスを見せつけなきゃいけない、という覚悟で受け止めました。「最後のショービジネス2」「3」が続くかもしれませんけど(笑)、それぐらい本気です。

――特設サイトの動画では「集大成」とおっしゃっていましたが。

久本
あれは、ただカンペを読んだだけです(笑)。深い意味はなかったので、ちゃんと言っておきます。“最高のショービジネスを見せるエネルギーの集大成”くらいに受け取っていただければ。ただし総集編ではなく、全部新ネタです。

おもちゃ箱をひっくり返したような笑い

――改めて、ワハハ本舗ならではのショービジネスとは。

久本
根底にあるのは、お客さんが喜んでくれるなら何でもする、ということ。過激なネタも、お客さんをいじることも、シュールなネタもファンタジーなネタもある。ストーリーがあるわけではなく、おもちゃ箱をひっくり返したみたいに、次から次へとパフォーマンスが襲ってくる。どこから弾が飛んでくるかわからないんです。嫌なことを忘れて「明日も頑張ろう」と思える笑いや感動を届けたい。意外と「感動した」と言ってくださる方も多くて、それはワハハの人間としてうれしいですね。

――長く続ける中で、変わってきた部分はありますか。

久本
若い頃ほどの過激さは少し薄れてきたかもしれません。体が動かないこともあるし、年を取った人間がやっていいこと、悪いこと、見た目も含めてありますから。お客様が求める笑いも変わって、今は優しさや温かさなのかなと個人的には思います。決して迎合しているわけじゃなく、私たち自身もそっちを面白がるようになってきた。かといって、ワハハがゆるく甘くなったわけではありません。前回は『サザエさん』を寺山修司風にやったりもしましたし、テレビでは見られない舞台ならではの“毒”は、いい意味で忘れていないと思います。

喰始は「なくてはならない恩人」

――喰始さんはどんな存在ですか。

久本
もともと喰さんの世界が大好きで、「一緒に劇団をやりましょう」とお願いしたのがワハハの始まりです。私たちは本当に不器用な人間の集まりでしたが、喰さんは柴田や佐藤や私、それぞれの個性に光を当ててくださった。そして「これからの役者は作家性を持たなきゃいけない」と、自分のシーンは自分で考え、喰さんと相談しながら作り上げることを学ばせてもらいました。梅垣だけは、喰さんのアイデアを自分のものにしていくタイプですけど(笑)。ほかの劇団に出させていただくようになっても、ワハハで培った“喰イズム”は本当に生きています。なくてはならない恩人です。

――稽古場はどんな雰囲気なのでしょう。

久本
私や柴田はほとんど舞台に立たず、ノートと鉛筆を持って部屋にこもって、ずーっと考えています。よその劇団の方が見に来て「休憩時間ですか?」と言われたほど(笑)。演出家の前で台本を持って演じる稽古とは全然違う、不思議な光景だと思います。一方で、私たちの真骨頂である“コンテンポラリー”、漁村の一日やジャングルの動物たちを体で表現するようなネタは、みんなで動きながら作っていきます。

活弁、チャップリン、そして俳句!?

――新作の構想を、話せる範囲で教えてください。

久本
喰さんいわく、構成は今8割方できているそうです。柴田は毎回講談をやっていますが、今回は活弁士になって、誰かの動きに合わせて笑いを作るアイデアがあります。私はチャップリンとエノケンさんを合わせたような、喋りだけに頼らないパフォーマンスができたらと。喰さんはミュージカルもやりたいそうで、曲がつながっていく中で遊べる笑いも考えています。コンテンポラリーは、なんと俳句に挑戦。俳句を体で表現したらどうなるのか(笑)。梅垣は客席に降りて、携帯電話を使ってお客様と絡むパフォーマンスを考えています。今すぐ誰かに電話をつないで、それをネタにするとか。やりながら変わっていくかもしれませんけどね。

オーディション組が吹き込む新しい風

――出演者には、初めて見るお名前も多いですね。

久本
半分は劇団員ですが、残り半分は私もまだ会っていない方たち(笑)。喰さんが数年前から「一緒に参加しませんか」と募集して、人柄や歌、ダンスを見て選んだ方々で、今回は劇団員より多いんです。10代から50代まで。オーディション組は毎回新しいエネルギーと個性を持ってきて、ワハハのパフォーマンスを幅広く広げてくれる。どんな化学反応が起きるか、とても楽しみです。

――全国13カ所。体調管理で気をつけていることは。

久本
無理、無茶をしないこと。普段から体を鍛えていますし、舞台に入ると睡眠時間の確保がめちゃめちゃ大事。お酒も毎回は飲まなくなりました……あ、嘘つきました(笑)。夜の移動のときは飲んでます。2〜3時間のバス移動は絶対飲んでます、すみません(笑)。でも、ちゃんと次の日のことを考えるようにはなりました。100%のパフォーマンスができないのは自分が嫌なので。今回は神戸がファイナルなので、神戸で打ち上げだと思って楽しみにしています。

「コンプラを気にしたら、舞台は何もできない」

――客席の年齢層も上がってきたのでは。

久本
親子3代で来てくださる方もいて、年齢層は上がっているかもしれません。だから使う言葉や人名、ギャグは「これは伝わるかな」と意識します。でもコンプラについては、考えたら舞台は何もできないので。私が喰さんに「これ、コンプラ大丈夫かな」と聞いたら、「貴様、それがお前の今一番いけないところだ」と怒られました(笑)。神経質になると小さく、狭くなって、舞台の意味がなくなってしまう。ただ、求められているものが変わってきていることは、意識していかないといけないと思っています。

――最後に、公演を楽しみにしている方へメッセージを。

久本
2年ぶりのワハハです。最後かどうかは全くわかりませんし、最後じゃないかもしれない、とも言っておきます(笑)。でも、まだワハハを見たことがない方は、早くしないと間に合わないよ! いい意味でショックを受けて、嫌なことを全部忘れて、明日への活力にしていただけたら。お客様参加型ですから、自分もワハハの劇団員だと思って、一緒に楽しい時間を過ごしましょう。私も今年68歳。だいたい2年に1回やっているので、70歳でも舞台で皆さんと飛び回りたいと思っています。劇場でお待ちしています!

【公演情報】
WAHAHA本舗PRESENTS ワハハ本舗特別公演『最後のショービジネス』

構成・演出:喰始

出演:久本雅美、柴田理恵、佐藤正宏、梅垣義明、すずまさ、大久保ノブオ ほか
※開催地区により、一部Wキャストでの出演となります。

日時:2026年11月27日(金) 開場17:00/開演18:00
   11月28日(土)・29日(日) 開場13:00/開演14:00

会場:森ノ宮ピロティホール
料金:全席指定 9,000円(税込)※未就学児入場不可
チケット:発売中(チケットぴあ Pコード:545-124)

問い合わせ:キョードーインフォメーション

公演詳細:https://kyodo-osaka.co.jp/search/detail/13783

取材・文・撮影:ごとうまき