ao、初の“音楽的ホラー”に挑戦。新曲「Call」に込めた「誰かを強く想う気持ち」

アーティスト

15歳でメジャーデビューを果たし、数々のタイアップやRADWIMPSとの共演で注目を集めてきたao。大学受験のための活動セーブを経て、2026年3月に約2年ぶりとなる新曲「痛い膝」で再始動した。それから7か月、映画『呪いのスマホ』の主題歌「Call」を10月21日にリリースする。大学2年生、20歳になった彼女に、新曲の制作秘話から“今のao”までをじっくり伺いました。

中庭の坂に寝そべって、話してる

――大学2年生ですね。学業と音楽活動の両立はいかがですか?

ao
1年生の頃に比べると、少し楽になりました。



――キャンパスライフはどうですか?

ao
楽しいです!新しい友達もたくさんできて、最近は大学の友達とずっと一緒にご飯を食べています。中庭に坂みたいなところがあって、天気がいい日はみんなでそこに寝そべって、ずっと話してるんです。



セーブ期間に作った30曲

――2年間、受験のために活動をセーブされていました。その間、音楽との距離感はどうでしたか?

ao
最初の1年は毎日受験勉強で、音楽もあまり聴いていなくて、制作はほとんどできませんでした。大学1年生になってからの1年間は毎日制作をしていたんですけど、最初は「あれ、どうやって作ってたっけ?」っていうところまで戻ってしまっていて。こういう感じで作ってたなって、少しずつ思い出していく作業でした。



――その1年で何曲くらい作られたんですか?

ao
30曲くらいです。



――そんなに!心境や音楽への向き合い方に変化はありましたか?

ao
以前はメロディと作詞が中心で、トラックはあまり触っていなかったんです。でもこの1年で、トラック作りももう少し細かいところまでやってみようと思うようになりました。それが大きな変化ですね。改めて、音楽を作るのってやっぱりいいなと思いました。



最初に買ったCDは家入レオさん

――音楽を作り始めたのは12歳。中学時代は吹奏楽部で、ピアノもずっと続けてこられました。子どもの頃はどんな音楽を聴いていましたか?

ao
一番最初に買ったCDは、家入レオさんです。家の近くでリリースイベントがあって、CDを買うとご本人からポストカードを手渡しでもらえたんです。ずっと大好きでした。小学4年生くらいまではJ-POPをよく聴いていて、その頃K-POPが流行り始めて。K-POPアーティストがカバーしている洋楽がすごく好きになって、小学6年生くらいからは洋楽を聴くようになりました。今も洋楽が中心です。



恐怖の裏にある切なさを書いた

――新曲「Call」について伺います。前作「あつい夏」はネオシティポップの軽やかな曲でしたが、今回は映画『呪いのスマホ』の主題歌。振り幅がすごいですね。オファーを受けた時のお気持ちは?

ao
ホラーを作るのは難しいだろうなと思いました。音はBillie Eilishみたいな、洋楽のホラーっぽい感じにしたらかっこいいだろうなと想像できたんですけど、歌詞は何を書けばいいんだろうって。映画はもうほぼ出来上がっていたので、5回くらい観ました。ホラーだから観る人を怖がらせるのがメインなんですけど、どういう意味なんだろうと繰り返し観ていくうちに、切ないストーリーだなと感じて。その切なさの部分を書きました。



――コメントでは「恐怖の理由は誰かを強く想う気持ち」と書かれていました。

ao
ネタバレにならないように言うのが難しいんですけど(笑)、人のことを想いすぎると生霊がつく、とか言うじゃないですか。いい感情も悪い感情も、気持ちが強く動きすぎると、それを超える何かになる。最初はプラスの気持ちだったものが、恨みに変わっていってしまうのかなって。そこが“呪い”と表裏一体になっているのかなと思いました。



――作品に共感した部分はありましたか?

ao
スマホって怖いなと思いました。SNSの時代、写真ひとつで人の人生が変わってしまうこともある。そういう怖さを感じましたね。



――ちなみにホラー映画はお好きですか?

ao
実はちょっと苦手で(笑)。最初はマネージャーさんと二人で観たんですけど、マネージャーさんは本当に平気な人で、まばたきもせずに観てるんですよ。私は隠れながら観てました。それ以降は一人では観られなくて、美容室とか、人がたくさんいて絶対に何も起こらない場所で観ていました。そのたびにメモをして、書く時にそれを見返して。



初めて人の前で制作した夜

――編曲は「あつい夏」と同じTAARさんです。

ao
TAARさんにはたくさんの曲をやっていただいていて、いつも私がやりたいことを形にしてくださいます。今回は音の部分を先行して作っていただいて、ホラーの解釈をすり合わせながら進めました。サビは「aoちゃんがライブで上から操っているようなイメージで」と言葉で伝えてくださるので、歌詞にどんな言葉を入れたらいいかもイメージしやすくて、楽しかったです。



――「あつい夏」は歌詞の冒頭に電話が出てきますが、今回の「Call」も電話つながり。意識されました?

ao
あ、していないです。今気づきました(笑)。「あつい夏」には怖い電話はかかってきませんけど。



――手応えはいかがでしたか?

ao
実は2〜3日で仕上げなきゃいけなくて、それが大変でした。でも楽しかったです。夜中まで作業した日があって、一人だと怖いので、マネージャーさんにずっと後ろにいてもらいました。いつもは制作途中を見られるのが恥ずかしくて人に見せられないんですけど、初めて人の前で作りました(笑)。ずっと好きだったBilly Eilishの世界観にかなり近い曲になったのがすごく嬉しくて。ダークな曲は、自分の曲として出すにはちょっと勇気がいるんです。でも映画のテーマがあったからこそ、思い切ってやれました。



画像から曲を作る

――ミュージックビデオはどんな内容ですか?

ao
二人の私が出てきます。ホラー的な要素の私と、歌詞の切ない部分にも通じる「このホラーを終わらせたい」という気持ちの私。その二人で展開していくんです。映画からもインスピレーションを受けています。



――16歳の頃「いつか自分でMVを作りたい」と話されていました。

ao
「痛い膝」の頃から、曲を作る時に画像検索をするようになったんです。前は「こういう色がいいな」くらいのぼんやりしたイメージだったんですけど、今は「痛い膝」なら芝生、緑の葉っぱ、絆創膏、砂利……というところまで決めていて。「あつい夏」も、海が見えたらいいなとか、男の子が二人歩いているといいなとか、かなり具体的に伝えました。



――歌詞ができてから画像を探すのではなく?

ao
画像を探しながら作ります。言いたいことは決まっていても、それをどんな状況に当てはめるか。たとえばスマホを落として壊れた怒りを曲にするとしても、それだけだとスマホの曲で終わってしまう。それを別の状況に置き換えるために画像を使うんです。いつか全部、自分でMVを作りたいです。



見逃さないことを大事にしたい

――最近は本も読まれていますか?

ao
日記は続いていないんですけど、本はまた読み始めました。最近は村上春樹さんの『風の歌を聴け』のシリーズを読んでいます。気になった言い回しや単語はメモするようにしていて、そういうメモがたくさん溜まっています。道を歩いていて、風が吹いて気持ちいいなと思ったことも書き留めます。



――タイアップを重ねて、変化はありましたか?

ao
テーマが決まっていると、意外と「こう組み合わせたら面白いかも」と発想が広がるんです。それがだんだん自由にできるようになってきました。



――以前のインタビューで「アーティストとしての核をつかみたい」と話されていました。20歳の今は?

ao
正直、まだ模索中です。でも何をするにも「好き」が最初に来る。歌うと本当に体調が悪いのが治るくらい、セラピーになっているんです。何かを作って伝えることは技術とは違って、経験を積み重ねて得ていくものだと思っています。最近は、他の人なら見逃してしまうような些細なことを書き留めるのが本当に大事だなと。みんな同じように暮らしているからこそ、それを見逃さないこと。それを自分なりの表現で言えるようになったら、いつか胸を張って「つかめた」と言える日が来るのかもしれません。



――ご自身はどんな性格だと思いますか?

ao
適当なところがあります(笑)。没頭できるものがあると、他のことがおろそかになっちゃう。でもそのぶん、感じたことを逃さずにいたいです。



たこ焼きが大好き

――関西のお客さんの印象は?

ao
RADWIMPSさんのツアーにゲストで参加した時、Zepp Nambaで感じました。東京の熱気もすごかったんですけど、大阪は人の肩に乗っている人もいて(笑)、すごく盛り上がるんだなって。食べ物もおいしくて、たこ焼きが大好きです。甲賀流が大好き!銀だこしか知らなかったので、あんなに小さくて柔らかいたこ焼きがあるんだって驚きました。



――5月18日に20歳を迎えて、最初にしたことは?

ao
YouTubeライブをして、その後、ビクターのみなさんと乾杯して初めてお酒を飲みました。



――学生のうちにやっておきたいことは?

ao
今はTOEICの勉強を頑張っています。目標は800点です!



――最後に、今後の展望を聞かせてください。

ao
もっとライブに出たいです。



ホラーという新境地に挑みながら、その奥に「誰かを想う気持ち」を見つけ出したao。日々の小さな気づきを拾い集めて言葉にする彼女の歌は、これからも聴く人の心にそっと寄り添い続けるだろう。

インタビュー・文・撮影:ごとうまき