【インタビュー】ミステリアス歌謡の新星・桐生華名「若い世代や外国人にも歌謡曲の魅力を届けたい」

インタビュー

2024年11月27日、日本コロムビアから「静寂」でメジャーデビューを果たした桐生華名。彼女の音楽は「ミステリアス歌謡」をテーマに掲げ、ドラマティックなメロディーと独特の世界観で聴く者を惹きつける。1983年生まれという遅咲きのデビューながら、その背景には音楽への深い愛とユニークなキャリアがある。今回は桐生さんに、音楽のルーツやデビュー曲への思い、そして今後の展望について語ってもらいました。

── まずは「ミステリアス歌謡」というテーマについてお伺いします。このコンセプトはどのように生まれたのでしょうか?

桐生
私、もともとミステリアスなものやサスペンスが大好きなんです。ドラマチックな世界観に惹かれるタイプで、音楽も昔からそういうテイストが好みでした。自分が歌うなら、ぜひそんな雰囲気でやりたいと思ったのがきっかけですね。実は、親世代が聴いていた歌謡曲の影響もあるのか、私たちの世代でも意外と知っている曲が多いんです。歌うかは別として、遠い存在じゃないなって感じていました。

── メジャーデビューまでの経緯を可能な範囲で教えてください。

桐生
元々美容業界で働いていて、20代の頃に一度芸能界に挑戦したことがあったんです。音楽や歌はずっと好きで、いつか何かしたいという気持ちはありました。転機は作詞家の日野浦かなで先生との出会いです。先生とは昔から仲が良くて、音楽の話でよく盛り上がっていました。最初は「YouTubeでカバーを上げてみようか」と妄想していただけだったんですけど、先生と話すうちに「一緒にやれたら楽しそう」って気持ちが膨らんで。そこからカラオケで歌謡曲を沢山歌ったり、インディーズCDを作ったり、少しずつ音楽の道に進んでいきました。


── デビュー曲「静寂」(作詩:日野浦かなで、作曲・編曲:新屋豊)はドラマティックで美しい歌謡曲ですが、初めて聴いた時の印象はどうでしたか?

桐生
先生たちが私の理想以上の世界観を形にしてくれて、ただただ驚きました。「やりたかったことが本当にできるんだ」とワクワクしましたね。メロディーを聴いた瞬間、夜の海や船が頭に浮かんだんですが、ミュージックビデオ撮影前に台本を見たらまさにそのロケーションで、びっくりしました。歌詞も、メロディーにどんな言葉が乗るのか楽しみにしていたら、完成形を見てまた感動して。「眩しいくらいすごいな」って思いました。実はデモを初めて聴いた時、あまりの美しさに涙が出そうになって、慌てて気持ちを抑えたんです。それくらい心に響きました。


── 「静寂」のミュージックビデオ撮影でのエピソードを教えてください。

桐生
千葉の海辺で撮ったんですけど、10月半ばで肌寒くて、波と風がすごかったです。ヘアメイクさんが丁寧にセットした髪も風でほどけて、高いヒールを履いて砂浜を歩くシーンではズボッと埋まりながら、表情を変えずに優雅に歩くのが大変でした(笑)。後半は雨まで降ってきたんですけど、それが逆にいい雰囲気になって、上手く仕上げてくれて感動しました。撮影の合間にスタッフさんと温かいお茶を飲んで温まった時、波の音を聴きながら「これが私のデビューなんだな」ってしみじみ感じた瞬間が忘れられません。


── レコーディングでのエピソードや印象に残ったことがあれば教えてください。

桐生
レコーディングは本当にすごかったです。私はあまり経験がないんですけど、6時間かけて3曲録りました。1日目で2曲録り終えて、「いろんなパターンで歌って」と言われたので、最後は魂を絞り出すような感じでした(笑)。ダメ出しされるわけじゃなく、先生に求められるまま曲の世界に没入できたので、貴重な体験になりました。一度、集中しすぎてマイクに頭をぶつけちゃって、スタッフさんと笑いながら「これも思い出だね」って言ったのもいい記憶です。大変でしたけれど、楽しかったですね。


── カップリング曲「星屑セニョリータ」(作詩:日野浦かなで、作曲・編曲:新屋豊)は「静寂」とはまた違った魅力がありますよね。

桐生
 そうなんです。「星屑セニョリータ」は可愛らしい雰囲気で、まるで人格を変えるように歌いました。可愛く歌ったり、ちょっと拗ねた感じを出したり、いろんな女の子を演じるのが難しかったけど、同じ日に録ったとは思えないくらい別人みたいになりました。自分の中のギャップを活かして、役者みたいに楽しめたんです。実は最初、この曲が可愛すぎて「私に歌えるかな?」って不安だったんです。でも先生が「華名ちゃんの隠れた一面を引き出したい」と言ってくれて、挑戦したら意外とハマって、自分でも新しい発見がありました。


── もう一つのカップリング「悲しいうそ(New ver.)」(作詩:日野浦かなで、作曲:本宮綾七、編曲:新屋豊)はインディーズ時代からの再録ですが、新しく録り直して何か変化はありましたか?

桐生
今回は日野浦先生と2人で録ったんですが、「インディーズの時より情緒が増したね」と盛り上がりました。ただ、ファンの方には「違いがわからない」と言われて、まだまだだなって(笑)。でも、物語調の歌詞と盛り上がる展開が魅力的な曲なので、私自身すごく気に入っています。実は再録の時、昔の自分を思い出しながら歌ったら自然と感情が溢れてきて、先生に「その感じ、最高だよ」って褒められたんです。それが嬉しくて、成長を実感できました。


── 今後、若い世代や海外の方にも歌謡曲を届けたいとのことですが、どんな歌手像を目指していますか?

桐生
演歌層はもちろん若い方や海外の方にも何かきっかけがあれば届けたいですし、日本の文化に触れてもらう機会になればいいなと思っています。英語も勉強したいと思いつつ、まだ模索中です。SNSで発信するのもいいかなと考えています。最近、インスタライブで海外のファンからコメントをもらったことがあって、それがすごく嬉しくて。「もっと届けたい」という気持ちが強くなりました。


── 最後に、ファンへのメッセージをお願いします。

桐生
 これからいろんな場所で初めてお会いする方と出会えるのが楽しみです。一人でも多くの方に応援していただけるよう、自分でも企画を考えながら頑張りたいと思います。CDにはオリジナル・カラオケも入っているので、ぜひ聴いて歌ってみてくださいね。あ、そうそう、ファンの皆さんと一緒に歌えるイベントとかもやってみたいと思っているので、楽しみにしていてください!


インタビュー・文・撮影:ごとうまき