50歳のKREVA、“学び”を問い直す——『KREVA CLASS』再演にかける想い

インタビュー

音と言葉の魔術師がタッグを組み、熱狂を生んだ“授業型エンターテインメント”『KREVA CLASS – 新しいラップの教室 – 』が、2026年11月に待望の再演を迎える。2024年の初演から2年の時を経て、スケールもキャパシティもパワーアップした本作。

音楽・出演を手掛けるKREVAさんと、脚本・演出・声の出演を務める小林賢太郎さんという異色のタッグが魅せる唯一無二のステージについて、そして50歳という節目を迎えたKREVAさんの真意に迫った。

日本語を愛する2人が魅せる“授業型エンターテインメント”

——『KREVA CLASS – 新しいラップの教室 – 』は、ラップを通じて言葉を届けてきたKREVAさんだからこそできる、他にはない唯一無二の公演です。2024年の初演が大好評を博し、2年の時を経てスケールアップしての再演となりますが、そもそもこの「授業」というテーマはどのようなきっかけで生まれたのでしょうか?

KREVA
一番のきっかけは、自分が所属事務所を独立したことと、母が亡くなったことでした。人生の大きな転機が重なったときに、「自分は今、本当は何がしたいんだろう」と深く問い直したんです。そのとき頭に浮かんだのが、長年仲良くさせていただいていて、心からリスペクトしている小林賢太郎さんの主戦場である“舞台”に立つことでした。それで、賢太郎さんのもとへ直接お願いに行きました。

——ご自身から直接オファーされたのですね!そこからどのように「授業」という形になっていったのでしょうか?

KREVA
相談していく中で、自分の中では「いろんな役や人を演じる」というイメージを最初は持っていたんです。でも、賢太郎さんから「KREVAはKREVAだから」という言葉をいただいて。そこから対話を重ねるうちに、かなり早い段階で「授業」というコンセプトが決まっていきました。俺から「こういう風にしたい」と提案したというよりは、賢太郎さんとの会話の中から自然と形になっていった感じですね。

——「言葉の魔術師」とも言えるお二人ですが、主戦場はエンターテインメントと演劇で異なります。実際に賢太郎さんと舞台を作る中で、どのような変化や学びがありましたか?

KREVA
始める前よりも「演技をやりたい」とは軽々しく言えなくなりましたね(笑)。演じることの大変さや難しさを心底感じました。特に勉強になったのは目線の置きどころ、視線の配り方です。視線ひとつで、観客に見える景色や物語の捉え方がまったく変わってしまう。そういった演出面や役者としての振る舞いを含め、しっかりと気を配らなければいけないという大きな学びになりました。

——小林賢太郎さんというクリエイターに対して、改めてどのような印象をお持ちですか?

KREVA
俺がよく表現するのは「頭の中までデザインされている人」ということです。アトリエに行かせていただくと、すごく整然としているんですよ。引き出しがたくさんある棚があって、ここには手品のトランプ、ここには絵を描く道具やブロック、みたいに細かく整理されている。常に何かを作り続けている方ですが、まさに脳内そのものが美しくデザインされているんだなと感じます。自分にはそういう部分が足りないので、心から惹かれますし尊敬しています。

2年の時を経て「同じではない」進化を遂げる舞台

——前回の授業では、ラップの仕組みやターンテーブルの歴史などを魅力たっぷりに見せてくださいました。今回は「再演」と打ち出されていますが、どのようなステージになりそうでしょうか?

KREVA
俺自身は純然たる再演でもいいと思っていて「そのままやりたい」と言っているんですが、賢太郎さんがそれを絶対に許してくれない(笑)。打ち合わせでお話をしに行ったら、冒頭から新しいアイデアが返ってきて「マジか……」と今から震えています(笑)。

——今(取材時)は賢太郎さんとはどのようなフェーズでお話しされているのでしょうか?

KREVA
賢太郎さんは常に何かを作り続けている方なので、今はまた別の舞台の直前で違う頭になっているタイミングだと思います。でもそれが終わった瞬間に、一気に『KREVA CLASS』の頭に切り替わって入ってきてくれるはずです。

——賢太郎さんが声を担当するバクのキャラクター「バークレー」についても教えてください。

KREVA
バークレーは、俺の相棒として大活躍してくれる本当にかわいいマスコットキャラクターです。

——パントマイムコメディデュオのGABEZさん、MPCプレイヤーの熊井吾郎さんという強力な共演陣も続投ですね。

KREVA
GABEZの二人は、この舞台の後に世界でも賞を取ったりしている素晴らしいパフォーミングアーティストです。パントマイムだけでなくダンスも交えて、舞台をすごく面白く盛り上げてくれます。熊井吾郎とはもう20年近く一緒にやっていますが、今回もいろんな機材を駆使して音の魅力を届けてくれます。

——初演を経て、ご自身の楽曲「Forever Student」などにも通じる「学び」というテーマについて、どのように捉えられていますか?

KREVA
誰かに教えるというプロセスを通すことで、自分自身が改めて見つめ直したり、学ぶことが本当に多いんですよね。この舞台はラップのやり方を一から教えるというよりは、「仕組みがわかる」授業になっています。単にラップの解説にとどまらず、何か夢を持ってそこに向かって突き進んでいるすべての人たちの力になるような舞台になっているんじゃないかなと思います。

変化する時代と、50歳を迎えた現在地

——初演からの2年間は、世の中にとってもKREVAさんにとっても激動の期間だったかと思います。この2年を振り返っていかがですか?

KREVA
やっぱり一番大きかったのは、この舞台のきっかけにもなった独立や母との別れですね。あとは、AIの進化のスピードには驚かされます。2年前はまだそこまで身近ではなかったものが、今では普通に存在するようになりましたから。

——音楽制作においてもAIを活用されているとのことですね。

KREVA
音楽制作の世界では、世間で言われる生成AIとは少し違う形で、結構早い段階からプラグインなどにAI技術が入ってきていたんです。だから壁を作ることなく自然と触れ合えていましたね。例えるなら洗濯機のようなものだと思っていて。今更手洗いに戻れないのと同じで、便利に受け入れながら進化に合わせて考え方を変えていかないと、置いていかれてしまうかなという気はしています。ちなみに、今回のアルバムの帯に書いてある文章は、俺とAIで一緒に考えたんですよ。

——2026年6月18日には50歳という節目を迎えられました。同日に『BEST OF MIXCD NO. 3』や過去のオリジナルアルバム5作のインスト盤を一挙配信リリースされましたが、このタイミングでの意図は?

KREVA
「KREVA」という表に立つ存在の印象が強すぎて、「じゃあ、この曲のトラックを作っているのは誰なの?」というところまでなかなか届かない歯痒さがどこかにあったんです。作詞・作曲・トラックメイク・プロデュースまで一貫して自分自身で手掛けている「音の世界」を、改めて知ってほしかったというのが一番の理由です。インストならお店のBGMなど、日常生活のいろんな場面でずっと流しておけますしね。

——お誕生日の当日には、8年ぶりとなるサイン会も開催され、3時間で650人ものファンと交流されたそうですね。

KREVA
すごく感慨深い時間でしたね。ご家族で応援してくださっている方が本当に多くて、「次に来るのは息子です」みたいなやりとりが何度もありました。長年一緒に歳を重ねて応援してくれているファンのみなさんの存在は、本当にありがたいです。

——50歳を迎えられて、普段のルーティーンや体調管理で意識されていることはありますか?

KREVA
週3回のトレーニングは継続しているんですが、50歳になって筋肉が落ちるスピードが早くなった気がして、もうちょっと増やそうかなと思っています(笑)。昔サッカーをやっていたので足の筋肉には自信があったんですが、気づいたら落ちていて。ちゃんと鍛えないとダメだなと実感しています。

常に自分を磨き、未知のステージへ

—— 約30年前にキャリアをスタートされ、常に第一線でシーンを牽引されてきましたが、今でもラップの可能性を感じますか?

KREVA
まだまだありますね!「やり尽くした」なんて感覚は一切ないです。昔では信じられないくらいラッパーの数も増えましたし、自分がデビューした頃にはまだ子どもだったような若い世代と一緒に音楽ができるのも面白い。だからこそ、常に自分を磨き続けていかなきゃいけないなと思っています。自分の中の制作のハードルがどんどん上がっていて、生半可なものは出せないという気持ちが強いんですが、もっとシンプルに、純粋にラップを楽しんでいきたいですね。

——最後に、今回の舞台を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。

KREVA
初めて来られる方は、あらかじめ楽曲を予習しておいていただくと「あ、この曲にはこんな仕掛けがあったんだ!」という発見があって、より授業を楽しめると思います。そして1回見たことがある方は、授業の構造や隠された韻(いん)がより深く見えてきて、さらに楽しめるはずです。ガチガチに構えず、純粋に笑って感心して感動できる“授業型エンターテインメント”になっていますので、ぜひ劇場へ足を運んでみてください!

 



ライター・後藤
インタビュー後記:ソロアーティストとしてトップを走り続けながらも、決して現状に満足せず「学ぶこと」を楽しみ続けるKREVA氏。小林賢太郎氏との化学反応によって生まれる舞台『KREVA CLASS』は、単なるライブやコントの枠を超えた、大人の知的好奇心を刺激するエンターテインメント。50歳を迎え、より深みを増した彼の「音」と「言葉」の授業を、ぜひ劇場で体感してほしい。

インタビュー・文・撮影:ごとうまき