湖畔に響くローズ・ピアノと「青」の衝動。お風呂と街灯、1st EP『Dawning/Window』で拓く新時代のポップス。

J-pop

2月18日、一筋の光が差し込むような待望の1st EP『Dawning/Window』をリリースした「お風呂と街灯」。京都大学工学部在籍という異色の経歴を持ち、3歳から培ったピアノの素養と、自ら発見したコード理論を武器に、唯一無二のポップスを紡ぎ出す。プロデューサーにRomantic氏(ex.爆弾ジョニー、betcover!!サポート)を迎えた今作は、まさに彼の音楽人生の「夜明け」を告げる作品となった。

切なさとワクワクが同居するピアノサウンドの裏側に隠された、緻密な思考と哲学。そして5月に開催される初の単独公演への想いまで、じっくりとお話を聞きました。

独学で辿り着いた「コード理論」と、耳コピの記憶

ーー3歳からクラシックピアノを始められたそうですが、今のスタイルに繋がるルーツはどこにあるのでしょうか。

お風呂と街灯
最初は親に習わされていたんですけど、次第にポップスやボカロを耳コピすることに夢中になりました。楽譜通りに弾く課題よりも、自分が弾きたい曲を再現する方が楽しかったです。

ーー絶対音感もあるのですね。

お風呂と街灯
当時は「コード理論」なんて言葉も知りませんでしたが、何曲もコピーしていくうちに、「この音の次は、大体この和音になるな」という法則性が自分の中で見えてきたんです。経験値で積み上げた自分なりのコード理論ですね。パズルが解けるような成長感が楽しくて、それが今の作曲の土台になっています。

ーー影響を受けたアーティストを挙げるとすれば?

お風呂と街灯
最近だと藤井 風さんやチャーリー・プース。あとはインストゥルメンタルのFKJなどは、聴いていると「自分もこんな世界を作りたい」と強く刺激を受けます。

1st EP『Dawning/Window』:窓から差し込む「夜明け」のグラデーション

ーー待望の1st EP『Dawning/Window』がリリースされました。このタイトルにはどのような意味が込められているのでしょうか。

お風呂と街灯
僕にとってこのEPは、音楽への向き合い方が変わった「新しい夜明け」なんです。これまでは感覚で作っていた部分もありましたが、今作からは一音一音、一言一言に「なぜこの音なのか、なぜこの言葉なのか」という意図を徹底的に詰め込みました。

ーー「夜明け」といっても、今作に収録されている4曲(「BLUE」「カラスの鐘」「大喧嘩」「ランドスケープ」)は、それぞれ表情が違いますね。

お風呂と街灯
そうなんです。昨日を引きずったまま迎える朝もあれば、今日という日に期待する朝もある。あるいは悩み続けて夜を徹した先の朝もある。窓(Window)の外を眺めるのか、それとも窓から差し込む光を拒むのか。その受動性と能動性が入り混じった「朝」の情景を、4つの視点で切り取りました。

ーーリード曲の「BLUE」は、もともと「夜明け」というタイトルだったとか。

お風呂と街灯
はい。夜明けの青さを表現したくて「BLUE」にしました。実は今回のジャケット写真、山梨県の西湖で午前2時から撮影したんです。12月の湖畔で、死ぬほど寒かった(笑)。でも、その極限の状態だからこそ撮れた「青」が、この曲の妖艶さと誠実さを象徴してくれていると思います。

歌詞に込めた「バイバイ人生」の哲学

ーー歌詞についても伺いたいのですが、非常に哲学的ですよね。特に「ある日の哲学」や今作の「カラスの鐘」など、孤独や死生観に真っ向から向き合っている印象です。

お風呂と街灯
「ある日の哲学」は、言葉にこだわった曲です。「もし明日死ぬとわかっていたら、人は今日をどう生きるか」という問いから書き始めました。結局、明日死ぬなんて実感できないから、なんとなく過ごしてしまう。でも、いつか来る終わりのために、今日という日に「バイバイ」と挨拶しておく。それが後悔を一つ減らす方法なんじゃないかと考えました。

ーーサビの「バイバイ人生」というフレーズは、突き放しているようでいて、実は今日を肯定するための言葉なんですね。

お風呂と街灯
そうですね。今作の「カラスの鐘」もそうです。眠れない夜を過ごして、ふと気づくとカラスが鳴いている。カラスは夕方に鳴くものだと思っていたけど、実は朝を告げる存在でもあった。言葉が通じ合わない寂しさを全員が抱えているけれど、その「寂しさを共有している」と知るだけで、少しだけ救われる気がするんです。

ーー「君のは球体で僕のは立方体だ」という歌詞も、コミュニケーション不全を見事に言い表しています。

お風呂と街灯
本はあまり読まないんですけど、数式や図形を見てきたからこそ出てくる表現かもしれません(笑)。歌詞を書くのは本当に難産で、2時間ずっと考え込むこともザラですが、その「しっくりくる言葉」を探す作業自体が、今の僕には必要なプロセスなんです。

命の宿った響き、Lakeside Liveと初の単独公演へ

ーーYouTubeで公開された「Lakeside Live」。大自然の中でローズ・ピアノ(Rhodes Piano)を弾き語る姿は圧巻です。

お風呂と街灯
電源の確保すら難しい場所でしたが、あえて外に持ち出しました。スタジオの完璧な環境では得られない、ペダルの軋みや風の音、その場の空気ごと記録したかったんです。

ーーそして5月には、いよいよ東京・大阪での初単独公演が控えています。

お風呂と街灯
ワンマンライブは、僕にとって一つの「作品」だと思っています。会場の雰囲気から構成まで全てを自分の世界観で染め上げることができる。ヘッドフォンで聴くのとは違う、全身で音を浴びる体験。音楽で心が動く瞬間を、提供できる場所にしたいです。

ーー最後に、この一年をどう過ごしていきたいか、展望を教えてください。

お風呂と街灯
今年は「一音も一言も、なんとなくで世の中に出さない」ということを自分に課しています。短期的なバズや数字を追うのではなく、一生音楽を作り続けるために、自分が納得できる世界を丁寧に構築していきたい。たとえ遠回りでも、人生をかけて「お風呂と街灯」という物語を紡いでいこうと思っています。

<リリース情報>

1st Digital EP『Dawning/Window』

配信中

* カラスのカネ

* 大喧嘩

* ランドスケープ

* BLUE

<ライブ情報>

お風呂と街灯 初単独公演『Dawning/Window』

* 5月22日(金) 大阪・心斎橋Pangea

* 5月25日(月) 東京・下北沢BASEMENT BAR

インタビュー・文・撮影:ごとうまき