落語と音楽が響き合う“一瞬”を求めて——立川談春、還暦の覚悟と「玉響」に込めた誓い(ゲスト:さだまさし)

舞台
今年6月に還暦を迎え、NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』での存在感も話題の落語家・立川談春。卓越した描写力と熱量で「最もチケットが取れない落語家」と称される彼が、ライフワークとして開催してきた主催イベント『玉響(たまゆら)』。2026年12月27日、大阪・フェスティバルホールにて開催される『第4回 玉響 還暦記念公演』を前に、談春と、長年“兄貴分”として彼を支え続けるさだまさしが、公演にかける想いを語り合った。

「落語は楽譜に起こせる」——『玉響』の原点

——今回で4回目となる『玉響』ですが、「落語と音楽の融合」を始めた経緯を教えてください。

談春
入門してすぐ、師匠(立川談志)から「落語はリズムとメロディだ」と教わりました。だから落語は楽譜に起こせるんじゃないか、とずっと思っているんです。自分の落語をいろんなアーティストの曲と合わせて聴いたとき、どんな化学反応が起きるのか。その一瞬を客席と共有したくて始めました。35周年は渋谷で7日間、40周年はさださんに無理を言って全国7都市を回っていただいた。そして還暦を迎える今年、どうしてもやりたかったのがこの公演です。

さだ
面倒くさい奴に頼まれたなと思いつつも、談春のためならと引き受けました。今回はグレープ(さだまさし・吉田政美)として出演します。大ホールでアコースティックギター2本と歌だけで勝負する機会は、なかなかありませんから。

笑福亭鶴瓶との出会い

——今回はグレープに加え、笑福亭鶴瓶師匠もゲスト出演されます。お二人を招いた理由は。

談春
話は2002年に遡ります。当時二つ目だった僕を鶴瓶師匠に引き合わせてくれたのがさださんでした。師匠は常々「俺は落語がでけへん」とおっしゃっていたのですが、国立劇場でご自身の落語会をされると聞き、生意気にも「どれほどできないのか見てやろう」と足を運びました。結果は衝撃でした。これだけできて「できない」と言えるのは相当な覚悟がある人だと思い知らされ、「今のやり方では絶対に勝てない」と打ちのめされました。僕の転機を作ってくれたのが鶴瓶師匠、その縁を繋いでくれたのがさださんです。

さだ
談春が二つ目の頃からの付き合いです。飯を食ったりゴルフをしたりしていると、たまに僕を「兄さん」と呼ぶんですよ。「お前が兄さんじゃねえか」って返すんですけどね。師匠の談志さんに厳しく叱られて落ち込んでいた頃から見てきましたが、ジャンルの違う者同士、良い縁に恵まれたと思います。

聖地・フェスティバルホールと伝説の拍手

——大阪公演の会場は、談春師匠にとって特別な思い入れのある場所ですね。

談春
落語に適したキャパシティは300〜500人と言われます。2,700人規模のフェスティバルホールで落語をやるなんて、2008年に初めて挑戦した時は周囲から猛反対されました。「3階最後列まで落語が届くわけがない」と。それでも背中を押してくれたのが鶴瓶師匠でした。「できる、心配いらん」と言われて開催し、終演後の万雷の拍手にやってよかったと思いました。

さだ
僕は今日でフェスティバルホールのステージに立つのが263回目になります。(この日さだまさしのコンサートがあった)。あのホールの拍手は日本一です。センターで歌うと、拍手の音がまるでフライパンに蓋をされたように体に響いてくる。あの拍手を浴びたら人生観が変わる、というくらいのものです。談春にもその拍手を浴びさせてやりたかった

還暦の挑戦——大ネタ「居残り佐平次」で挑む真剣勝負

——今回の演目は。

談春
年末の開催なので「芝浜をやるのか」とよく聞かれますが、今回は芝浜ではなく、あえて古典の大ネタ「居残り佐平次」に挑もうと思っています。

談春
60歳は落語家にとってスタートラインです。70代になれば芸が枯れて味が出ますが、50代・60代は一番難しい年代。守りに入ったら終わりです。鶴瓶師匠の落語、グレープの音楽という最高のゲストを迎えた上で、トリを務める。生半可な気持ちでは務まりません。さださんに教わった言葉があります。「迷ったら苦しい方を選べ。苦しい方が楽しいぞ」と。

さだ
言ったね。落語も歌も、人間の弱さや苦しさを全部引っくるめて笑い飛ばす包容力がある。この歳になっても守りに入らず、攻める姿をお客さんに見せなきゃいけないんです。

唯一無二の“一瞬”を、客席とともに

——ファンへの方へメッセージをお願いします。

さだ
『玉響』の名の通り、二度と再現できない一瞬の響き合いを楽しんでほしいですね。

談春
大阪のお客さんは目が肥えていて、芸に対して温かくも厳しい。鶴瓶師匠、グレープの力を借りて、最高に贅沢な時間を作りたいと思います。落語と音楽が交差する瞬間を、ぜひ劇場で体感してください。

【公演概要】第4回 玉響 還暦記念公演(大阪公演)日時:2026年12月27日(日) 15:00開場/16:00開演会場:フェスティバルホール(大阪)料金:全席指定 ¥12,000(税込)出演:立川談春 ゲスト:笑福亭鶴瓶、グレープ(さだまさし・吉田政美)チケット先行:8/15(土)・16(日)『立川談春 独演会』(森ノ宮ピロティホール)にて来場者特別先行実施(一般発売は後日発表)お問い合わせ:キョードーインフォメーション 0570-200-888(平日12:00〜17:00)※東京公演:2027年2月16日(火) LINE CUBE SHIBUYA(ゲスト:さだまさし)

取材・文・撮影:ごとうまき
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