現実的なマーメイド?愛の都パリで奏でられるファンタジーラブストーリー
恋を知らない人魚と恋する心を失くした男が物語をどう紡いでゆくか。
あらすじ
セーヌ川に浮かぶ老舗のバー“フラワーバーガー”のオーナーの息子でウクレレを持って歌うパフォーマー ガスパールは、ある夜、傷を負い倒れていた人魚を見つけ、病院に連れて行くが病院で働いていた医師は彼女の美しい歌声を聴くと昏睡状態に陥りやがて死亡、人魚 ルラは美しい歌声で出会う男性を虜にし、恋に落ちた男性の心臓を破裂させ命を奪っていた。歌により自らの身を守っていたルラはガスパールの命も歌によって奪おうとしたがガスパールには全く効かない。彼は過去の辛い恋によって恋する感情を捨てていたのだった。
人魚であるルラは2日目の朝日が昇る前に海に帰らねば、命を落としてしまうため、その日までにはルラを海に帰すという約束でガスパールはルラの怪我を介抱する。恋を知らないルラはこの気持ちが恋だとは気づかず献身的なガスパールに惹かれていく。やがて一緒に時を過ごして行くうちにガスパールの体にも異変がおきる。
監督・キャスト
独創的な世界観で音楽、小説、映像とマルチな活躍を見せ、フランスのティム・バートンと言われるフランスのカリスマアーティスト、マチアス・マルジウ監督が本作をドラマティックに描いた。本作は監督自身の小説を映像化、『ジャック&クロックハート 鳩時計の心臓をもつ少年』でも自身の小説をアニメーション映画化し監督を務めている。また、マチアス監督が率いるバンド、ディオニソスがサウンドトラックを手掛ける。
キャストにはヒューゴ・ボスのモデルや『パリ警視庁:未成年保護部隊』 (11)、『ダリダ〜あまい囁き〜』(17)などに出演しているフランスを代表する人気俳優ニコラ・デュヴォシェルがガスパールを。新進女優マリリン・リマが美しく可愛らしいルラを演じる。他にもフランスを代表する俳優陣が脇を固めている。
見どころ
フランス的なフランス映画を楽しめる。
1950年代を思わせる美術と色鮮やかな色彩とその場で立ち上がり踊りだしたくなるような陽気な音楽が印象的であり、“いかにもフランスらしい”。本作はパリではコロナ禍の影響により公開後わずか3日で上映が打ち切りとなったそうだ。
ファンタジー映画が最も似合うパリを舞台に繰り広げられる恋愛ストーリーをファンタジー作品として、いかに楽しめるかがポイントである。
おとぎばなしの「人魚姫」を軸にしているが、人魚のルラは現実的な女の子である。海に戻らないと命を落としてしまうという理由が大きいが、”人間界に憧れ”などはなく、人間は敵、私は私と、自分のホームグランドをしっかりと理解していて現実的。”一人の女性”としての描かれ方も好感度が高い。本作からはいかにもフランスらしい『個人主義』的なものも見え隠れし、自立した大人の人魚の物語のように思われる。
パリの街×トゥクトゥク
パリの街を走るトゥクトゥクが新鮮、パリの街の魔法にかかるとあっという間にエレガントなトゥクトゥクに。
レビュー(ネタバレあり)
恋を知らない人魚と恋はもう懲り懲りな男が奏でる恋の行方は?!
海洋生物と人間の恋愛、近年であれば『シェイプ・オブ・ウォーター2017)』を彷彿させるが、やはり人魚と人間の恋といえば『リトル・マーメイド』
魔女と取引をしてまで人間界に憧れるアリエルとは違い、本作のルラは自分の帰る場所、アイデンティティをしっかりと持っている。“王子様と結婚して幸せになる”なんていうお花畑なお話は遠い昔のお伽噺。“あなたはあなた”“私は私”としっかりと自立した女性像が“近年のいい女”の象徴であり、ストーリーもフランスらしい。
彼氏をルラに殺され、結局ガスパールまで助けてしまう女医には少し同情をしてしまうが・・・・。(女医視点のストーリーにすると全く話は変わって、面白そう)
ファンタジーラブストーリーだとわかったうえで鑑賞するには十分楽しめる作品、重いテーマの作品の後に”お口直し”的な目的で観るのも悪くないかも!?
マーメイド・イン・パリ