【山崎育三郎インタビュー】「オリジナルミュージカルは僕の原点!次なるステップを踏み出した」

インタビュー

落語界の愛と業を描いた日本発のオリジナルミュージカル『昭和元禄落語心中』が、2025年3月29日(土)〜4月7日(月)に大阪・フェスティバルホールで上演されます。戦前から平成に至る落語界を舞台に、人々の多彩な生き様を描いた大ヒット漫画が、2016・17年にアニメ化され、さらに2018年にはドラマ化。ドラマ版で助六役を演じた山崎育三郎さんが発案し、ミュージカル化が実現しました。今回、日本のミュージカル界を牽引する山崎育三郎さん、明日海りおさん、古川雄大さんの3人が、新作オリジナルミュージカルで待望の初共演を果たします。

上演に先立ち、山崎育三郎さんにインタビュー。12歳から29歳までミュージカルをメインに活動し、現在では数多くのメディアにも出演。ミュージカル俳優としてだけでなく、俳優、歌手、司会者としても多岐にわたり活躍されておられます。そんな彼の新たなる挑戦とは──。

落語は、音楽や歌と同じ

── 山崎さんは企画から携わっておられますが、作品にかける思いをお聞かせください。

山崎
7年前、ドラマ版『昭和元禄落語心中』に岡田将生くんと一緒に出演しました。僕はこの作品が大好きで、撮影している時から“この作品はミュージカルに向いている”と思っていました。僕は12歳から29歳までミュージカルメインでお仕事をさせてもらい『レ・ミゼラブル』をはじめとする海外の作品にも出演し、夢を一つ達成できたという思いがあります。そして次の目標は、世界で上演される日本発のオリジナル作品を作ること!そんな思いの中で出会ったのがこの作品でした。今回、企画として関わらせていただいていることもあって、演出・脚本の小池修一郎先生(宝塚歌劇団)とは沢山お話させていただき、一緒に作っているという感覚があり、とてもやり甲斐を感じています。

── 落語×ミュージカルという異なるジャンルの組み合わせ、かつてないような作品が期待されますね。

山崎
ドラマ撮影時は師匠の元に通いながら、1演目あたり20ページある噺を所作付きで勉強し、9演目の古典落語を覚えました。これまでの映像作品の中で1番辛く、苦しい作品でもありましたが、ある時、ふと気付いたんです。落語は歌だ、音楽と同じだと。落語が始まると同時に音楽が鳴る、歌っているような気持ちになるんですよ。それくらい落語と音楽は親和性がある。ここから歌に導入しても、自然にお客様に伝えられるイメージが湧きました。

── 7年前と比べて、作品や役への思いも変化しているのでしょうね。

山崎
7年ぶりなので、落語もほぼ忘れてしまっていて、これをもう一度最初から覚え直すのは大変な作業です。いま、古川雄大くんと稽古場で2人で作っている最中。ドラマ版とは全く違う物として出来上がるのではと、期待しています。そして僕自身いろんな経験をさせていただくなかで、当時は感じなかった台詞やシーンで心が動いたり、涙する瞬間があるんですよ。自分自身の成長や変化に伴い、ドラマとはまた違った助六を見ていただけると思います。

── 例えば助六のどんな部分に共感しますか?

山崎
天才落語家と言われる助六は“お客さまを喜ばせたい”という一心で落語をしています。そして僕もいろんな仕事をさせていただいている中で、助六と同じように“お客さまのために”をモットーにしているので、その部分は大変共感できます。

── 他のキャストの皆さんとの化学反応も楽しみですね!

山崎
この作品をするとなった時、真っ先に浮かんだのが古川くんです。品があってしなやかで、それでいて影のある色気がある……。まさに八雲にピッタリだと。そして明日海りおさんは、助六と八雲を夢中にさせる魅力的な芸者・みよ吉を演じます。これまでにないほどの艶っぽさを放ち、素敵な女性を演じてくださるので、また新たな明日海さんを見ていただけるのではないでしょうか。キャストそれぞれが役に感情移入できるようなキャラクターです。皆に愛してもらえるような作品になればいいな……。

落語はいろんなものを削ぎ落とした究極のエンターテイメント

── 山崎さんが感じる落語の魅力は?

山崎
僕も寄席などに行って実際に聴きましたが、言葉だけで観客を物語の中に誘うところにとても感動しました。そしてお客さまの想像力を信じて、お客さまと一緒に作っていくところは演劇とも共通しています。『下町ロケット』でも共演した立川談春さんがフェスティバルホールで独演会を開催されていましたが、1人であの2700人のキャパを埋めて、お客さまを落語の世界へ導いていくエネルギーにも幅の広さにも可能性を感じています。

── 1月で39歳のお誕生日を迎えられましたが、40代に向けての抱負や今後どのような活動や表現を目指していこうとお考えですか?

山崎
メディアのお仕事をさせてもらうようになったのが29歳の時。当時はミュージカルの俳優がテレビに出るという流れがない中、1人でスタート。僕にとって新たなチャレンジでしたが、その根底には“ミュージカル俳優たちも舞台だけでなく、メディアに出て、音楽番組などでミュージカルの曲を歌えたら……”という思いがありました。あれから10年、いつ休んだかな?と思うくらいに駆け抜けてきましたが、朝ドラや大河ドラマ、紅白歌合戦に出させていただいたりと、素晴らしい景色を見ることができました。そしていま、次のステップに向けて動いています。

── 次のステップに向けて……、その一つがこの作品なのですね。

山崎
はい。12歳の時にオリジナルミュージカルに出演し、ゼロからミュージカルを作るところを見て育ったので、昔からオリジナルミュージカルを作りたいという気持ちはありました。これが僕の原点なんです。そしていま、多くの方に関わっていただき、オリジナルミュージカルを作るという夢のスタートラインに立てました。いまはこれを形にして、成立させていく。そして、これで終わらない──。いつかは日本発のミュージカル×映画や、ミュージカル×〇〇、といったものを生み出していきたいです。大きなチャレンジとなりますが、めげずに突き進みます!

東京公演は2025年2月28日(金)〜3月22日(土)東急シアターオーブ、福岡公演は2025年4月14日(月)〜4月23日(水)福岡市民ホールにて上演!

撮影:中部里保

取材・文:ごとうまき