怒髪天、結成41年目の新たな一歩「ライブで感じる一体感は、人生を変える魔法だ」

アーティスト

日本のロックシーンを牽引し続ける怒髪天が、結成40周年を迎えた2024年を通過し、2025年に新たなアルバム『残心』をリリース。4月23日の発売に合わせ、バンドは全国ツアー「エリア1020 TOUR」をスタートさせた。ボーカルの増子直純さんに、3人体制となったバンドの覚悟、新アルバムのコンセプト、そして41年目の現在地について話を伺った。インタビューでは、増子さんのユーモアと深い人間性が織り交ぜられ、バンドの新たな挑戦と変わらぬ情熱が浮かび上がる。

アルバムについて

── 新アルバム『残心』、タイトルが非常に印象的です。この言葉に込めた思いを教えてください。

増子

『残心』は日本の武道の言葉で、技を決めた後の心構えや姿勢を指すんですよ。次の動きに備えて油断しない、みたいな。昨年3人体制になって一つの節目を迎えたけど、ここで立ち止まらずに進むぞ、という覚悟を込めました。あと、ちょっと自虐的に「人を斬った後の姿勢」って意味もね(笑)。

── 3人体制への移行は大きな変化だったと思いますが、その影響はアルバムにどう反映されましたか?

増子

最初、アルバムを作るのにちょっと躊躇したんです。3人になったことで、ファンの皆さんがそのことに引っ張られすぎて、歌詞の意図が100%伝わらないんじゃないかって。だから少し時間を置こうと思ったんだけど、ギターの上原子が「今やりたい!」って燃えてて(笑)。それで動き出したんです。今回は、いつもよりパーソナルな部分を控えめに、特定のイメージに縛られない歌詞を意識しました。今までの怒髪天の曲は、俺の個人的な思いを強く出してたけど、今回はもっと広い視点で、みんなで共有できる曲にしたかったんです。

── なるほど。アルバムは6曲というコンパクトな構成も新鮮ですね。

増子

そう、6曲って世代的に46分のテープの裏表に収まるくらいの長さで、ちょうどいいかなって(笑)。12曲とかだと聴く側も大変でしょ?テーマの重複を避けて、6曲でスパッとまとめた。曲数が少ない分、1曲1曲に魂を込めた感じです。

── 歌詞を読んで、いつもより「怒り」の要素が控えめで、前向きな印象を受けました。その背景は?

増子

確かに、今回は「怒り」のエッセンスを少し抑えたかもしれない。最近、バンド仲間や親しい友人の死、親の死を経験して、別れや喪失について考えることが多かったんです。そういう中で、人間はどうやって前に進むのか?って。大きな力じゃなくて、仲間や家族の小さな思いやりや温かさを持ち寄って、1日ずつ乗り越えていく。それを歌詞に込めたかった。『決意の朝に』みたいな曲は、まさにそういう気持ちから生まれたんです。

── 『エリア1020』はツアータイトルにもなっていて、ライブでの「ただいま!」「おかえり!」の掛け合いが印象的です。この曲の誕生秘話を教えてください。

増子

これは3人体制になって最初に作った曲で、ライブを意識して作りました。ファンのみんなに感謝と愛情を伝えたい、って思ったんです。ライブの空間って、俺たちにとって理想郷みたいなもの。その場で「ただいま!」「おかえり!」って掛け合うことで、心の住所が繋がる感覚がある。ライブでやるとすごいよ(笑)。この曲は、3人になったタイミングで、まずファンのみんなに届けたいって気持ちで作ったんです。

バンドの絆が強まった

── アルバム制作では、メンバーやスタッフとの連携がこれまで以上に強かったそうですね

増子

うん、今回はみんなの意向を今までで一番取り入れた。俺が「これやりたい!」って押し通すことも多かったけど、今回は上原子やスタッフの「こうしたい」を尊重して、みんなで作った感が強い。曲を作っていく中で、自分の気持ちも整理できたし、音楽の力ってすごいなって改めて思いましたよ。メンバーそれぞれの心の動きも見えて、バンドとしての絆も深まった気がする。

── 3人体制への移行は、大きな出来事でした。

増子

正直、40周年を迎えるタイミングで予想外の出来事だった。最初の半年は足踏み状態で、どうやって進むか模索してた。でも、3人じゃないとできないこともあるって気づいて、そこから一歩踏み出せた感じかな。今はサポートベーシストとして「アナーキー」の寺岡(信芳)さんも加わって、バンドの調子はめっちゃいいよ。寺岡さんは150曲くらい覚えてくれて、昔の曲も新鮮に鳴らせるようになった。グルーヴが段違いに良くなって、昔の曲がまるで新曲みたいになっているんですよ。

── 寺岡さんとの出会いは、増子さんにとって特別なものだったそうですね。

増子

寺岡さんは俺が中学生の頃に影響を受けたバンドの人で、まさか一緒にやれるなんて夢にも思わなかったなぁ。ベースの音が、ギターやボーカルと重ならない帯域でしっかり鳴っていて、歌いやすくなったし、歌い方自体も変わってきた。アンサンブルを見直すことで、曲がブラッシュアップされて、まるで違う曲みたいになることもあるよ。

ツアーの魅力

── ツアーは5月14日から始まっていますが、今回のツアーの見どころや、ファンへのメッセージを教えてください。

増子

今回のツアーは、新アルバムを中心に、過去の曲も新鮮に鳴らすセットリストになっています。曲の並びで感じ方も変わるから、昔からのファンも新しいファンも、いろんな発見があると思う。俺たちの今思ってることは全部詰まってる。困難を乗り越えて進む人間の姿を感じてほしいし、ライブで一緒に同じ方向を見て、歌って、心を共有できたら最高だね。

── 昨年は結成40周年、今年は41年目。振り返って一番大変だったことは?

増子

やっぱり去年のことかな売れないとか食えないとかは後からついてくるけど、メンバーがいなきゃ演奏できない。コロナや震災もあったけど、メンバーが揃ってれば何とかなると思ってたから、一人欠けるってのは最大のピンチだった。でも、情熱と愛情があれば乗り越えられるんだなって、今回改めて感じましたよ。

41年目のこれから

── 41年目の今年、どんな年にしたいですか?

増子

昨年は足場を固める一年だったけど、今年は『残心』でやっと一歩踏み出せた感覚がある。新たな気持ちで進む年になるかな。寺岡さんも加わって、バンドは新しいフェーズに入ってる。もう60歳も近いけど、年齢は関係ないよね。経験を重ねるほどいい歌詞が書けるし、楽器も上手くなる。バンドにとってデメリットはないよ。

── 最後に、ライブの魅力について教えてください。

増子

一緒に歌ったり、同じ瞬間を共有することで心が支えられる。コロナでライブに来ない生活に慣れた人もいるけど、それでも来てくれる人を大事にしたいと思ってる。ライブで感じる一体感は、“人生を変える魔法”みたいなものだと思っています。

リリース・ライブ情報

【リリース情報】
怒髪天
ニューアルバム「残心」
2025年4月23日(水)発売
初回限定盤(CD+DVD) 価格:¥5,500(税込) / TECI-1840
通常盤(CD) 価格:¥2,750(税込) / TECI-1841<収録曲>
01.決意の朝に
02.エリア1020
03.銃刀法違反
04.ロックスターロック
05.先細りのブルーズ
06.yallow magic orchestra(野郎魔術楽団)

<初回限定盤DVD収録曲>
2025年2月6日 新代田FEVER「第一種接近SO-GOOD!TOUR "season如月"」ライブ映像
1. 愛の嵐~風速2004メートル~
2. 夕暮れ男道
3. 酒燃料爆進曲
4. 俺 VS 俺
5. 俺流
6. 北風に吠えろ!
7. 杉並浮浪雲
8. 己DANCE
9. 人生○×絵かきうた
10. 押忍讃歌
11. オトナノススメ
12. 俺達は明日を撃つ!
13. 楽勝
14. どっこいサバイバー
15. 孤独のエール
16. 孤独くらぶ
17. エリア1020
18. ザ・リローデッド
19. 美学【ライブ情報】
「エリア1020 TOUR」
5/14(水)荻窪TOP BEAT CLUB
5/29(木)和歌山GATE
5/31(土)小倉FUSE
6/1(日)熊本NAVARO
6/3(火)神戸VARIT
6/14(土)郡山HIP SHOT JAPAN
6/15(日)石巻BLUE RESISTANCE
6/21(土)松本LIVEHOUSE ALECX.
6/26(木)京都MUSE
6/28(土)広島セカンドクラッチ
6/29(日)岡山ペパーランド
7/5(土)金沢AZ
7/6(日)岐阜ants
7/12(土)水戸LIGHT HOUSE
10/29(水)千葉LOOK
11/1(土)高松DIME
11/3(月/祝)福岡CB
11/5(水)四日市CLUB CHAOS
11/8(土)新潟GOLDEN PIGS BLACK STAGE
11/9(日)高崎Club JAMMERS
11/23(日)仙台RENSA
11月28日(金)札幌cube garden
11月29日(土)札幌cube garden
2026年
1月24日(土)名古屋CLUB QUATTRO
1月25日(日)名古屋CLUB QUATTRO
1月31日(土)梅田CLUB QUATTRO
2月01日(日)梅田CLUB QUATTRO
2月10日(火)渋谷Spotify O-EAST
2月11日(水/祝)渋谷Spotify O-EAST

<怒髪天 information>
オフィシャルサイト  http://dohatsuten.jp/
Youtube  https://m.youtube.com/user/DoTube102010
X https://x.com/dohatsuten_crew
Instagram https://www.instagram.com/dohatsuten1020/

 

インタビュー・文・撮影:ごとうまき