【goetheインタビュー】初のフルアルバム 「circle」——6年間の軌跡が描いた、美しき均衡

J-pop

札幌発の4人組バンド、goethe(ゲーテ)。Vo.樋口太一の温もりのある歌声と、R&B、ソウル、ジャズ、ファンク、ロックといった多彩なエッセンスを日本語の響きで昇華させたサウンドは、今、感度の高いリスナーの間で急速に支持を広げている。2025年に発表した2枚のEPで注目を集め、2026年5月には恵比寿LIQUIDROOMでの単独公演を控える彼らが、ついに待望の1stフルアルバム『circle』をリリースした。樋口太一(Vo&Gt)と加藤拓人(Ba)に、本作に込めた想いと、結成から6年の歩みについてじっくりと語っていただきました。

北海道の地から、日常をPOPSへと昇華させる“円”の軌跡。

——現在は札幌と東京の二拠点で活動されていると伺いました。東京に多く足を運ぶことになり、改めて自分たちの「北海道出身であること」の良さを感じることはありますか?

樋口
そうですね。東京のスピード感の中にいると、札幌のあの独特の時間の流れや、空気の澄んだ感覚を客観的に捉えられるようになった気がします。それが今回のアルバムの楽曲にも、無意識に反映されているかもしれません。

——お二人は1998年生まれの同級生なんですよね。高校時代からの長いお付き合いだとか。せっかくの機会ですので、お互いの「他者紹介」というか、良いところを語り合っていただけますか。

樋口
(笑)。拓人(加藤)は、僕にはない視点を持っている人ですね。機材についての知識がすごく豊富で、僕が感覚で言ったことを形にしてくれる。本当に助かってます。

加藤
太一(樋口)は、高校の頃からずっと「ふざけてる」感じなんですけど(笑)、人とは違う視点を持ち歩いている。そこは昔から変わらず尊敬しています。

——そんなお二人の原体験となる音楽についても伺いたいです。樋口さんはサッカー少年だったそうですが、音楽の道へ進むきっかけは?

樋口
高校で拓人や同級生とバンドを組んだのが最初です。当時はMr.Childrenが好きでしたが、一番の衝撃はエレファントカシマシのライブでした。サッカー部の先生がファンで連れて行ってくれたんですけど、プロの熱量、圧倒的な「現場」の凄みに撃ち抜かれました。

加藤
僕は中学生の時にテレビで見た斉藤和義さんが入り口です。初めて買ったCDも最初に行ったライブも和義さん。一人で音楽をやっていましたが、高校で樋口と出会って、自分が知らなかった新しい音楽にどんどん出会っていきました。あの出会いがなければ、僕は今も古いロックばかり聴いていたと思います。

『circle』に込めた6年間の確信

——ついに完成した1stフルアルバム、タイトルは『circle』。この言葉にはどんな意味が込められているのでしょうか。

樋口
一つの区切りになる作品を作りたいと考えていました。テーマを探す中で「circle(円)」という言葉が最も自分たちらしいと感じたんです。一人一人の生活や孤独を、それぞれの「円」になぞらえ、それが重なり合っていく様子。あるいは人とのご縁。

加藤
あとは「全体美」というか。僕らは楽曲を作る時に全体のバランスをすごく大切にするんです。円って、どこから見ても均衡が取れている形ですよね。僕らの音楽の在り方に近いなと。

樋口
それに、僕らの曲は季節を感じさせるものが多いんです。季節が巡る、循環していくイメージもこのタイトルに繋がっています。

——全14曲。この曲順も非常にドラマチックですね。

樋口
ライブのセットリストを意識しました。映画を一本観るような感覚で楽しんでほしくて。最初は明るく幕を開け、中盤でチルな空気感に浸り、少しカオスな展開を経て、最後は「Town」という曲で着地する。自分たちが納得できるのはもちろん、聴いてくれる人の目線に立って、何度も並び替えました。

——アルバムのリード曲「LIFE」は、まさに今のgoetheを体現するような1曲です。どのような背景で生まれたのでしょうか。

樋口
「LIFE」はアルバム全体を象徴する曲として、自分たちの歩みを振り返りながら作りました。バンドを始めて6年。思い返せば、楽しい瞬間は一瞬で過ぎ去ってしまう。「あぁ、これは永遠には続かないんだ」という切なさと、だからこそ愛おしいという感覚。そんな人生の移ろいを、普遍的なPOPSとして昇華させたいと思いました。

加藤
ミュージックビデオの世界観も、歌詞の持つ空気感を大事にしています。今回もすごくお洒落で、どこか不思議な映像になりました。何度も観返してもらえたら嬉しいです。

——本作にはShingo SuzukiさんやShin Sakiuraさん、 小西遼さんといったプロデューサー陣が参加されていますが、その制作過程で印象に残っていることは?

樋口
プロデューサーによって、大切にしているポイントが全く違うのが面白かったです。自分たちだけでは辿り着けなかった音作りや、言葉の選び方を学びました。

樋口
逆に、セルフプロデュースの曲もあって。外部の視点を取り入れた曲と、4人だけで突き詰めた曲。その両方が入ることで、より立体的なアルバムになったと思います。制作中に「自分たちがカッコいいと思う感覚」がブレていないか不安になることもありましたが、完成した14曲を聴いた時、一本の太い線で繋がっているのを実感できました。

—— 樋口さんは映画がお好きで、加藤さんはコーヒーにお詳しいとか。

加藤
はい。コーヒーは好きですし、深いですよ。今は自分で豆も売っています。5月30日 (土) 東京:恵比寿LIQUIDROOM公演でも、皆さんに楽しんでいただけるように準備しています。

——コーヒーを淹れる時間も、一つのリチュアル(儀式)というか、日常の心地よいリズムになりますよね。

加藤
まさにそうです。音楽も、そんな風に日常の一部として鳴っていてほしい。リフレッシュしたい時や、一人の時間に寄り添えるものでありたいですね。

さらなる「円」を広げていく

——結成から6年。メンバー間の関係性も、単なる「友達」から、より強固なものへと変わってきたのではないでしょうか。

樋口
以前はどこか気を遣い合っていた部分もありましたが、今は音楽を通して、より深い部分で対話できている感覚があります。Drumsの相蘇勇作はすごく穏やかで、Keyboardの永江碧斗は誰よりも音楽に誠実。この4人だからこそ、goetheの音が鳴らせるんだと、今回のアルバム制作を通じて改めて感じました。

加藤
樋口が持ってくるデモテープを聴いた瞬間、「あ、これはいい曲になる」と確信できる。その初期衝動を、4人の演奏でどう増幅させるか。そこが今のバンドの面白さです。

——5月30日の恵比寿LIQUIDROOM単独公演も節目になりそうですね。

樋口
前回のツアーで得た自信と、このアルバムに込めた想いを全てぶつけたいです。自分たちのためだけじゃなく、待ってくれている皆さんのために。

加藤
僕らの音楽がもっと多くの人に届いて、誰かの日常の「円」の一部になれたら。そのために、これからも真摯に音を紡いでいきたいです。

【公演情報】

goethe One Man Live 『goethe Live at LIQUIDROOM』

2026年5月30日(土) 東京:恵比寿LIQUIDROOM

【ツアー情報】

goethe Live Tour 2026

2026年11月1日(日) 福岡graf 

2026年11月8日(日) 北海道 PENNY LANE24

2026年11月14日(土) 宮城 enn 3rd

2026年11月21日(土) 大阪梅田Shangri-La

2026年11月29日(日) 愛知 ell.FITS ALL

【リリース情報】

1st Full Album 『circle』

インタビュー後記:取材中、終始穏やかで落ち着いた語り口調が印象的だった樋口さんと加藤さん。どうやら他のメンバーお二人も静かなタイプのようで、「4人で居酒屋に行くと、自分たちの声が周囲の雑音にかき消されてしまうんです(笑)」と、樋口さんが楽しそうに明かしてくれたエピソードに、バンドの持つ独特の柔らかな空気感の正体を見た気がしました。 6年という歳月をかけて丁寧に磨き上げられた楽曲たちは、まさに「日常」という名の宝石。ふとした瞬間に視界がパッと開けるような、静かな魔法がそこには宿っています。 お気に入りの映画を観終えて、映画館を出た後に広がるあの心地よい余韻のように……。

インタビュー・文・撮影:ごとうまき