【インタビュー】星屑スキャット・ミッツ・マングローブが語る、2026年ツアーへの覚悟と女装の美学

インタビュー

2005年の結成から21年。新宿2丁目の小さなステージで産声を上げたその物語は、今や全国のホールを熱狂させる唯一無二のエンターテインメントへと進化を遂げました。ミッツ・マングローブ、ギャランティーク和恵、メイリー・ムーの3人による音楽ユニット「星屑スキャット」。

2026年5月からスタートする全13公演の全国ツアー「HOSHIKUZU SCAT TOUR 2026 SUMMER NIGHT PATROL」を前に、リーダーのミッツ・マングローブさんが、ツアータイトルに込めた意外な裏話から、音楽への深いこだわり、そして「身内」であるあのレジェンドへの想いまで、たっぷりと語ってくれました。

靴から始まった「サマーナイト・パトロール」の偶然

―― 今回のツアータイトルである「サマーナイト・パトロール」。非常にキャッチーで夜の匂いがするタイトルですが、ここにはどんな意味が込められているのでしょうか。

ミッツ
これね、実はビジュアル撮影の時の「完全なる後付け」から始まったんです。毎年、衣装やビジュアルのコンセプトを決めるのは産みの苦しみがあるんですけど、今回はメンバーで「とりあえず、普段履いている靴を持ち寄って撮りましょうか」ってことになって。それをあろうことか頭に被って撮影したんです。メンバーが本当に普段履いている靴ですから、匂いも相当なことになってましたけど、現場のテンションで押し切っちゃって。

―― 靴を被るという斬新なビジュアルから、どうやって「パトロール」に繋がったのですか。

ミッツ
その賑やかなビジュアルが完成した時に、「さて、靴にまつわる言葉で何かないかしら?」って3人で絞り出したんです。「ウォーク」じゃ普通すぎるし、「ランウェイ」ってガラでもない。そんな時、ふと「パトロール」って言葉が出てきて。「あ、それいいじゃない」と。私たちが全国を夜な夜な巡回するような、そんな「巡回コース」としてのツアーイメージに繋がっていったんです。今回は初めて夏を跨いで開催するツアーということもあって、少し浮ついた夜の空気を含ませたくて「サマーナイト・パトロール」になりました。

「一見さん、お断りしません」――開かれたエンターテインメントへの矜持

―― 今回はオリックス劇場のような2000人規模のホール公演も控えています。ディナーショーとはまた違う、より広い層のお客さんも予想されますが、どんなステージになりそうですか。

ミッツ
私たちは「一見さん、大歓迎」です。私がステージを作る上で最も努めているのは、ファンの方だけが知っている「クローズドな村社会」を作らないこと。もちろん、ずっと応援してくださるコアな方は宝物ですけど、「あ、テレビに出てる人だ」っていう冷やかし半分の動機で来てもらっても全然構わない。いつ来ても、誰が来ても、同じように驚いて笑ってもらえる、それが私たちのステージの根幹ですから。

―― 初めて見る方でも気負わず楽しめる、ということですね。

ミッツ
そうです。最近はありがたいことに、初めて足を運んでくださるお客さんが数年前からグッと増えていて。時代が変わる中で、いい意味で「女装」というものに対する世間の意識がカジュアルになってきているのは嬉しいことですね。今年もまた、全国いろんな場所でいろんな方をびっくりさせてやろうと思っています。

21年経って驚く、3人の音楽的ポテンシャル

―― メンバーのギャランティーク和恵さん、メイリー・ムーさんとは20年以上のお付き合いになります。改めて、お二人はミッツさんから見てどのような存在ですか。

ミッツ
オカマのくせにね、二人とも面白いこと何一つ言わないんですからね。そこは私一人で喋り倒して何とかしなきゃいけないんですけど。でも、21年経って改めて驚いているのは、この3人は「結果として、めちゃくちゃ音楽的なポテンシャルが高い人たちだったんだな」ということです。

―― 当初はここまでの音楽ユニットになる予感はなかったのでしょうか。

ミッツ
最初は新宿2丁目でふざけて始めたイベントがきっかけでしたけど、こんなに音楽の細部にこだわっちゃう3人だとは、自分たちでも思っていなかった。今や音楽が「本職」になりつつあって、10代や20代の頃になんとなく思い描いていた夢の場所に、回り道をしてようやく辿り着いた感覚があります。

―― 夏のツアーは体力面でも過酷かと思います。

ミッツ
そう、今年は猛暑の夏でしょ。どのくらいメイクが溶けるのか、汗に負けるのか、そこも恐怖であり楽しみでもあります。客席からは素晴らしい照明を当てていただいて、ある程度「綺麗なシルエット」として見えているとは思うんですけど、真横で立っている本人同士は、至近距離じゃとても見られたもんじゃないですよ。富士山と同じなんです。「登ってみたらゴミだらけ」なんて言うじゃない? 遠くから見るのが一番綺麗。1列目で「被り付きで見たい!」と言ってくださるお客さんの気が知れないわ。きっと疲れちゃうと思いますよ。

テレビの世界と、ドラァグクイーンとしての「生」の現場

―― ミッツさんはテレビでのタレント活動もご多忙ですが、歌手としての活動にはどのような思いをお持ちですか?

ミッツ
ドラァグクイーンのパフォーマンスを含め、ステージに立ってお客さんの前で表現するというのは、芸能の基本だと思っています。2016年頃から「タレント・ミッツ・マングローブ」としてテレビの仕事をいただくようになり、なかなか音楽のイメージと結びつかない時期も長かった。「タレントで有名になればなるほど、音楽はついでにやってるのね、みたいなノリで見られちゃったりね」。

―― その「タレントのイメージ」とのギャップをどう乗り越えられたのでしょうか。

ミッツ
ようやくそのバランスが取れてきて、星屑スキャットの音楽そのものを聴きたいと言ってくださるお客さんが増えた。本音を言えば、あと20年早くこの状態でやりたかったな、とは思います。体力もビジュアルも、今は日々戦いですから。でも、20代のピチピチした私たちがこれをやっても、きっと今ほどの魅力はなかった。ちょっと「くたびれた女装」がハイヒールでホールを駆け回っているからこそ、お金を払って応援したいと思ってくれる人がいるのかもしれないですね。

中森明菜さん、カイリー・ミノーグさんとの邂逅

―― ミッツさんの音楽的ルーツには、80年代の歌謡曲やスターの影響が非常に大きいですよね。

ミッツ
小学校1年生の時に中森明菜さんがデビューして、そこから44年ですか。日本のアイドルやスターには常に魅了されてきました。特に私は87年から91年までイギリスにいたので、当時の「ザ・ベストテン」や「歌のトップテン」を日本の祖父母にVHSで録画して送ってもらって、擦り切れるほど見ていました。あの頃の明菜さんの衣装や、歌詞間違いの瞬間、黒柳徹子さんの振る舞いまで、詳細に記憶しています。

―― その憧れのレジェンドたちと、最近立て続けにお会いされたと伺いました。

ミッツ
そうなんです。一昨年、カイリー・ミノーグと中森明菜さんに立て続けにお会いする機会があって。その緊張感と高揚感たるや、10キロ体重が落ちましたから。コロナ禍で少し「ダルダル」としていた気持ちが、「ちゃんとしなきゃ」って一気に引き締まった。あの2024年の秋冬は一生忘れられません。レジェンドと同じ舞台に立てる喜び、というよりは、「彼女たちがマーキングしてきた場所を、私たちも汚さないように歩かなきゃいけない」という責任感のようなものを強く感じました。

「カバー」が「オリジナル」を凌駕する錯覚

―― 昨秋には初のカバーアルバムもリリースされました。今回のライブでは、人様の曲を自分たちのものとして歌う楽しさもありますか。

ミッツ
ライブではずっと歌ってきた曲たちを、ようやく音源という「形」にしました。レコーディングで散々作り込んだ分、最近は不思議な感覚に陥っているんです。ラジオで明菜さんや少年隊、ユーミンさんのオリジナルが流れてきても、「あれ、これ自分たちのバージョンかしら?」って一瞬、身の程知らずな錯覚をしちゃう。

―― 具体的に新しい演出などは用意されているのでしょうか。

ミッツ
衣装などは毎年変えますけど、内容自体はあえて「新しいこと」を過剰にやらないようにしています。去年のNHKホールもそうでしたが、今年は渋谷公会堂。歴史ある会場で、かつてのスターたちと同じ空気を吸いながら、私たちの歌謡を届ける。土地や季節によって、同じ曲でも全く違う色に見えるのがライブの醍醐味ですから、初日の幕が開くのが今から楽しみです。

叔父・徳光和夫さんへの想い

―― 今回のツアー、親戚である徳光和夫さんは見に来られる予定はありますか。

ミッツ
「お前らしいね」と言いながら、見に来たことは一度もないんです。でも、あの人は身内でも遠慮なく褒める人なので、もし会場に来られて客席で号泣して褒められたら、ちょっと恥ずかしいな。ただ、一人の「芸能の先輩」として、彼の芸能に対する凄まじい熱量には敬意を持っています。そんな彼のような「芸能にうるさい人」に見てもらった時に、どう感じてもらえるのか。早く見てほしいような、一生見ないでほしいような、複雑なせめぎ合いの中にいます。

―― 今回のツアー、大阪は千秋楽という重要な位置づけです。大阪のお客さんの印象はいかがですか。

ミッツ
大阪のお客さんは本当に素晴らしいです。手拍子も元気がいいし、終わった後の握手も「握力強すぎ!」ってくらい情熱的。ただ、大阪の皆さんはチケットを買うまでが、もうビリビリするくらいノンビリされていますよね。「2週間前まで待ってれば安くなるんと違うか?」なんて思ってません? 安くなりませんよ!(笑)

―― 最後に、楽しみにしているファンへメッセージをお願いします。

ミッツ
売り切れないと私の胃がキリキリ痛くなるので、ぜひ早めにお求めください。9月の大阪、まだ残暑は厳しいでしょうけど、その暑さを吹き飛ばすくらい派手で毒のあるステージをお約束します。

■公演情報

「HOSHIKUZU SCAT TOUR 2026 SUMMER NIGHT PATROL」

日時:2026年9月24日(木) 開場17:00 / 開演18:00

会場:オリックス劇場

公演詳細:https://kyodo-osaka.co.jp/search/detail/11880s

取材・文・撮影:ごとうまき