【インタビュー】再デビュー55周年の境地、目標は94歳まで現役。五木ひろしができる限り

インタビュー

昭和、平成、令和。三つの時代をトップランナーとして走り続けてきた五木ひろしさんが、再デビュー55周年という大きな節目を迎えました。4月8日にリリースされた渾身の新曲「千年の懸想文(せんねんのけそうぶみ)」を携え、さらに「『よこはま・たそがれ』から55年 五木ひろしアニバーサリーコンサート」(9月9日=兵庫・アクリエひめじ)に向け、2年ぶりとなる関西でのマスコミキャンペーンに臨んだ五木さん。昨年の体調不良を乗り越え、いま改めて感じる命の尊さ、仲間への感謝、そして次世代へつなぐバトンについて、その本音に迫ります。

猛ダッシュで駆け抜けた55年と、今見つめる景色

――55周年、おめでとうございます。いま改めて、この長きにわたる歩みを振り返ってどのようなお気持ちですか?

五木
ありがとうございます。五木ひろしとして再デビューした頃は、まさに「やっと掴んだチャンス」という思いで必死でした。1曲ヒットしただけではダメだ、2曲、3曲と続けていかなければ……と、とにかく休まず、猛ダッシュでスタートを切ったんです。
ただ、その頃から55年先の自分をどこかでイメージはしていました。いざその時を迎えてみると、とうとうここまで来たかという感慨と同時に、その間ずっと支えてくださったファンの皆様への感謝が、言葉では言い表せないほど込み上げてきます。

――昨年は慢性閉塞(へいそく)性肺疾患、気管支炎と診断され緊急入院。現在、大病を乗り越え全国を回るコンサートツアーの真っ最中ですね。

五木
ご心配をおかけしました。これまで健康には自信があり、60歳の還暦の年には1年間キックボクシングに通って体を鍛えたりもしていたのですが、やはり近年の暑さや環境の変化もあったのでしょう。でも、この経験が「一日一日を今まで以上に大事に生きよう」という、より強い決意に繋がりました。

愛犬ムームが身代わりになってくれた

――健康保持のために、いま心掛けていらっしゃることはありますか?

五木
実は、僕が体調を崩したのと同じ時期に、愛犬のムームーも体調を壊してしまったんです。トイプードルの14歳で、もうすぐ15歳という時でした。僕が入院している最中に、ムームーが先に旅立ってしまった。僕の身代わりになってくれたんだな、という思いがあって……。犬好きの方なら分かっていただけると思いますが、本当につらいお別れでした。
でも、だからこそ僕は頑張らなきゃいけない、ムームーの分まで生きなきゃいけないと、退院してステージに戻る力をもらったんです。今は娘が飼っているワンちゃんを預かって世話をしていますが、早朝や夜中、地面の温度を確認しながら散歩に行く時間が、僕にとっても一番の癒やしであり、健康の秘訣かもしれませんね。

55年歌ってきたご褒美。仲間たちの支え

――舞台をお休みされた際、多くの仲間たちが代役を務めるなど、演歌界の絆の深さを感じました。

五木
それが本当に嬉しかったですね。僕が不在の間、吉幾三さんをはじめとする多くの仲間が僕のステージを支えてくれた。
僕はこれまで、あまり他人に甘えることなく、自分に厳しくやってきました。でも、自分が苦しい時にみんながスッと手を差し伸べてくれた。それを見た時に、50年以上一生懸命歌ってきたご褒美を、神様がくださったのかなと感じたんです。真心で接してくれた仲間たちには、感謝してもしきれません。

――若手歌手の方々へ、衣装をプレゼントしたりアドバイスを送ったりと、バトンを渡す役割も意識されているように感じます。

五木
僕は自分の弟子を持って育てるということはしてきませんでしたが、背中を見せることは意識してきました。山内惠介くんや三山ひろしくん、福田こうへいくん……彼らが僕の公演に出ることで、何かを掴んでくれたら嬉しい。着物を持っていない子がいれば僕のものをあげたりもします。日本の歌という文化は、メイド・イン・ジャパンの宝物です。その火を消したくない。僕らが先輩から受け取ったバトンを、次の世代へしっかり繋いでいくことが、今の僕の使命だと思っています。

――五木さんにとって大阪はどのような場所ですか?

五木
大阪は僕の原点です。初めてのリサイタルも、劇場公演の1500回達成も、すべて大阪。1970年の大阪万博の時、東京から新幹線で駆けつけ、太陽の塔を眺めてエネルギーをもらいました。人生は爆発だというあの情熱に触れたからこそ、その後の僕の挑戦があった。
だから、新曲を出したら何が何でも大阪へ来て、皆様に恩返しをしたい。大阪の空気を吸うと、さあ、またここからスタートだという気持ちになれるんです。

新曲「千年の懸想文」に込めた永遠の愛

――新曲「千年の懸想文」は、ご自身で作曲も手がけられた大作ですね。

五木
作詞の田久保真見さんが、100年先、1000年先でも思いは変わらないという壮大な詩を書いてくださいました。人生には悲しい別れや辛いこともありますが、それでも根底にある愛や情熱は永遠に変わらない。
自分で曲をつけたのですが、思いを伝えようとなると、ものすごく難しい歌になってしまいました(笑)。1曲歌うだけで3曲分くらいのエネルギーを使う大作ですが、今の僕だからこそ歌える、命の歌だと思っています。

――今後の目標、そして五木ひろしとしていつまで歌い続けるのか、聞かせてください。

五木
先日、渡辺貞夫さんが94歳で現役で活躍されている記事を読みましてね。驚きましたし、勇気をもらいました。サックスも歌と同じで息が命。94歳で吹けるのなら、78歳の僕はまだまだですよ。
五木ひろしができる間は、五木ひろしを全うする。それが僕の哲学です。自分が作り上げてきた五木ひろしという積み木を、自分自身で壊したくない。最高の形で見せ続けられる限り、僕は歌い続けます。
そしてプライベートでは、最近ゴルフの調子もいいので、70代のうちにエージシュートを達成したい。それが今の密かな目標です。

取材・文:ごとうまき