「戦場のピアニスト」「ゴーストライター」のロマン・ポランスキー監督がフランスで起きた冤罪事件を映画化
現代にも、日本にもはびこる巨大勢力の闇と隠蔽、文書改竄…。本作から学べる!
作家ロバート・ハリスの同名小説を原作に、フランスで実際にあった歴史的冤罪事件“ドレフュス事件”を映画化。本作の見どころは、歴史的背景を感じる細部にまでこだわった衣装や重厚な美術もちろんのこと、腐った巨大権力に果敢に戦う男の生き様、“正義”が描かれている。
2019年・第76回ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(審査員グランプリ)を受賞した。
あらすじ
1894年フランス、ユダヤ系のフランス陸軍大尉ドレフュス(ルイ・ガレル)はドイツに軍事機密を漏らしたスパイ容疑で逮捕されが、その背景には、権力にしがみつく軍人や、反ユダヤ勢力の影響が。対敵情報活動を率いるピカール中佐(ジャン・デュジャルダン)は、ドレファスの無罪の証拠を発見し上官に報告するも、隠蔽を図ろうとする上層部から左遷を命じられてしまう。少しずつ明らかになる文書改竄、証拠隠蔽…。その非人道的な対応や不条理さに強い憤りを感じずにはいられない。
(C)2019-LEGENDAIRE-R.P.PRODUCTIONS-GAUMONT-FRANCE2CINEMA-FRANCE3CINEMA-ELISEO CINEMA-RAICINEMA
解説
この事件をきっかけに、フランスでは政教分離政策が進んだ。さらに欧州のユダヤ人差別の酷さが露呈し、ユダヤ人国家建設を目的とするシオニズムが提唱、イスラエル建国に繋がっていった(本作ではここは触れられていない)。
本作のメガホンをとったロマン・ポランスキー監督は自身がフランスで生まれた後に3歳の時にポーランドに移住。第二次世界大戦中にナチのユダヤ人狩りで両親を収容所に送られ、自身も逃亡生活を送るなど壮絶な経験をしている。そんな彼だからこその作品、本作にも彼の強い憎しみ、悲しみ、トラウマといった感情が沸きたっている。力強いメッセージ性が感じられる。
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レビュー(ネタバレ含む)
あの手この手で証拠を隠蔽しようとする哀れな上層部とその下僕たち。最後の大逆転には嬉しいものの、イマイチすっきりしない描き方。アンリ少佐は自死だったのか?ラストのラボリ弁護士を射殺した男は何者?雑木林で追いかけてどうなった?などなど、筆者には謎がたくさん残る。
とはいえ、サスペンスとして見応えのある作品。ドレフュス演じたルイ・ガレルの普段のイケメンっぷりが見られないことにも驚きと、彼の役者魂に感服!あの頭は特殊メイクなのかしら?
現代に通底するこの事件、昔も今も人間は変わらない、人間の醜さを痛感する作品だ。
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オフィサー・アンド・スパイ
監督:ロマン・ポランスキー
脚本:ロバート・ハリス ロマン・ポランスキー
製作:アラン・ゴールドマン
キャスト:ジャン・デュジャルダン、ルイ・ガレル、エマニュエル・セニエ
製作:2019年製作/131分/G/フランス・イタリア合作
配給:ロングライド